2009年3月31日火曜日

今後、生産の底打ちの可能性を示した鉱工業生産指数

3月30日、公表された鉱工業生産指数は、68.7と前月比マイナス9.4%となりました。


これは、今回の景気後退のピークから37.6%の下落となっています。

1970年以降、最大の落ち込みとなった第一次石油ショック当時で18.8%の下落であり、今回の生産の落ち込みはこの2倍に達したと言えます。


在庫指数は103.7と前月比マイナス4.2%となりました。

しかし、在庫率は158.2と前月比プラス4.6%と増加を示しました。


2月の実現率はマイナス3.7%、3月の予測修正率はマイナス3.6%となりました。


製造工業生産予測調査によると、3月は前月比プラス2.9%、4月は同プラス3.1%となりました。


3月のプラスは、輸送機械工業、化学工業、電気機械工業等によるものです。


4月のプラスは、化学工業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等によるものです。


在庫率からみて在庫は未だ十分に改善しておらず、予測修正率のマイナスからすると、生産の底打ちは未だのようです。


しかし、製造工業生産予測調査によると、3月、4月はプラスとなったことからすると、生産は2月-4月に底打ちする可能性があるように見えます。


今後の推移が見守られるところかと思います。



米国自動車メーカーへの支援に関するオバマ大統領の声明

3/30(現地時間)の米国自動車メーカーへの支援に関するオバマ大統領の声明をTV放送を見ました。


オバマ大統領の声明で印象に残ったコメントは、


・自動車産業は、アメリカの精神の象徴、米国の誇り、米国経済の柱である。

・自動車産業が過ちをおかしたままで米国政府が支援を続けるわけにはいかない。

・GMとクライスラーから提出されたリストラ案は十分ではないとして、さらなるリストラを求めた。

・クライスラーはGMより厳しい困難に直面している。

・ワゴナー会長の退任は経営責任による引責を求めたものではなく、新たな対応を進めるため。

・部品メーカー、ディーラーなど幅広い利害関係者に痛みを求めなければいけない。

・カナダ政府も米国政府の対応を支持すると理解している。


GMの新たなCEOに就任したのはフリッツ・ヘンダーソン氏で社長兼最高執行責任者(COO)の職にある人物です。

向こう60日間に、債権者や労組との合意に向けた交渉を行うことになります。


オバマ大統領の声明は、自動車産業に関する失業増加と、クライスラーとフィアットとの提携を是とするとも受けとめられる内容であったとの印象です。


今後、米国民の世論なども含め、推移が見守られるところかと思います。



2009年3月30日月曜日

カンボジア・タイの国境紛争

過日(3月25日、現地時間)、カンボジア政府は、同国北部の寺院周辺にタイ軍兵士が侵入したと伝えました。


タイ陸軍はこれを否定しています。


この寺院は、カンボジアとタイで帰属権が争われているクメール寺院プレアビヒアで、2008年7月に世界遺産に指定されています。


昨年10月、同地域でカンボジアとタイの軍が衝突、死傷者も出ました。


1962年に国際司法裁判所は、カンボジアに同寺院の主権を認めていますが、タイ側は、同寺院周辺の一部地域に関する国境は未確定と主張しているようです。


カンボジアは、今回の金融市場の混乱及び世界的な景気後退により、縫製品輸出、観光業、建設業、ODA及び直接投資に顕著な影響を及ぼしていると伝えられています。


2007年6月のフン・セン首相の訪日の際、日本カンボジア投資協定に署名が行われ、2008年7月末に発効しました。

この協定は、投資の保護規定に加え、投資の自由化規定を盛り込んだものであり、韓国、ベトナムとの投資協定やマレーシア等との経済連携協定(EPA)の投資章とほぼ同内容の自由度の高い協定となっており、同協定により日本からカンボジアへの投資が活発化することが期待されています。


タイについては、1980年代後半以降、日本企業は円高を背景に積極的にタイに進出し、タイの経済成長に貢献しました。

2008年の非常事態宣言の発出や長期化する内政の混乱に加えて、反政府勢力による空港占拠により、観光産業を始めとする経済に大きな影響が生じたところ、今後の推移が注目されるところ、国境に関する紛争は気にかかるところです。


カンボジアもタイも日本と関係の深いアジアの国と言えます。


世界的な景気後退に関し、アジアが最も早く立ち直ると期待されているところ、今後の推移が見守られるところかと思います。



サハリン2の天然ガスの日本初出荷に思うこと

3月29日、ロシア・サハリン沖の資源開発事業サハリン2から、ロシアで初めてLNG(液化天然ガス)の輸出が開始されました。


今回の輸出分は、東京ガス、東京電力向けのようです。


日本はサハリン2で生産されるLNGの約6割を輸入する予定ですが、これは天然ガス国内消費量の7-8%に相当します。


サハリン2の出資企業は次の通りです。


・ガスプロム(ロシア、50%+1) 
・ロイヤル・ダッチ・シェル(イギリス・オランダ、オペレーター、27.5%-1)
・三井物産(日本、12.5%)
・三菱商事(日本、10%)


サハリン2の推定埋蔵量は次の通りです。


石油:約7.5億バレル(約1.03億トン)
��ンデンセート※:約3億バレル(約0.4億トン)
  (※天然ガス抽出等の過程で得られる原油)
天然ガス:約17.7兆立方フィート(約5,000億立方メートル)


雑誌記事によれば、サハリン1は、パイプラインを通じ、天然ガスを中国に輸出する計画だったところ、ロシア側が全量を中国向けの10分の1以下ともいわれる安値で、ロシアのガスプロムに卸すよう求めているとのことです。


ちなみに、中国のLNG市場は、今後20年間、アジアのLNG市場のなかで最も高い成長力を持つ市場と想定されているようです。


そう聞くと、日本と中国で天然ガス資源を取り合う関係になるのではとの懸念が連想されます。
しかし、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、中国のLNG市場と日本のLNG市場とは、その性格、位置づけが大きく異なるため、競合する可能性は低いと指摘しています。


すなわち、同機構の調べによれば、日本と中国は、LNG市場としての機能、役割が異なり、国内にエネルギー資源をほとんど持たない日本は、長期契約のLNGに対して高い価格を支払う。世界のLNG事業者にとって、安定した数量のLNGを高い価格で購入してくれる日本市場は魅力的であるとしています。


一方、中国は、国内に石炭という代替エネルギー資源を持つために、輸入LNGに高い価格を支払う意思はないようです。

サハリン2の初出荷は喜ばしいニュースです。ただ、日本は、構造的にエネルギー問題にどう取り組むかが重要な国家戦略と言えようかと思います。エネルギー価格は昨年来急落しましたが、このような時こそ中長期のエネルギー戦略を確実に進めることが重要なのではないかと思った次第です。



2009年3月29日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


30(月曜)

国内:鉱工業生産指数 2月(速報)

海外:EU ECBトリシェ総裁議会証言


31(火曜)

国内:完全失業率 2月

    有効求人倍率 2月

海外:米 ケースシラー住宅価格指数

    EU 消費者物価指数 3月


1(水曜)

国内:日銀短観 3月

海外:米 ISM製造業景況感指数 3月

      中古住宅販売成約指数

      ADP雇用統計

    EU PMI製造業景況指数 3月


2(木曜)

G20首脳会合

海外:EU ECB政策金利公表


3(金曜)

海外:米 バーナンキFRB議長講演

     雇用統計

EU PMIサービス業景況指数 3月


日銀短観、G20、米雇用統計、また市場ではECBの政策金利引下げの見方にあるようですが、こうした点などに注目が集まると思われるところ、その推移が見守られるところかと思います。



ローマ法王のアフリカ訪問

先般、ローマ法王ベネディクト16世は、就任以来初のアフリカ歴訪を行いました。


3月17日に最初の訪問国カメルーンを皮切りにし、1週間に亘り、アフリカ訪問を行いました。


ローマ法王は、アフリカ訪問で、汚職防止、貧困対策、紛争の沈静化などを求めました。


報道によれば、アンゴラでのミサでは数十万人が参加したとのことです。


ローマ法王は、以前から人工的な避妊を禁止しているカトリックの伝統的教義を支持する意向を表明してきたところ、今回のアフリカ訪問で法王は就任以来初めて避妊反対を明言しました。

サハラ砂漠以南のアフリカでHIV感染者が2200万人以上に増加しているとのWHOの報告が出されています。

バチカンでは、カップルの1人がHIV感染者だった場合に避妊具使用を認めるかで検討を進めているとの報道もあります。


アフリカではキリスト教信者が急増しているとみられるところ、個人的には、ローマ法王のメッセージがアフリカに果たす役割は少なくないのではないかと期待していました。


確かに、HIVに特効薬がない現状からすると、法王の避妊具禁止の考えは、現実から目をそらしているようにも思えます。

しかし、今回のアフリカ訪問の趣旨は、政治・社会情勢の安定に向けたメッセージなどであって避妊に関する宗教的な見地の表明ではなかったと思われるところ、殊更避妊具を強調して報道で取り上げられたことは残念に思います。


注目されるアフリカですが、先日、総務省はインドを経由して中東やアフリカにも達する高速通信回線網の整備に乗り出すとの記事を目にしました。


予算化などはこれからのようですが、今後の推移を見守りたいと思います。



2009年3月28日土曜日

2月のCPI

3月27日、総務省が発表した2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は100.4となりました。
前月比マイナス0.1%、前年同月比で同水準でした。


プラスに寄与した品目は、食料、電気代などでした。
マイナスに寄与した品目は、教養娯楽用耐久財(PC、TVなど)、灯油・ガソリンなどでした。


食料及びエネルギーを除く総合指数は98.5となりました。
前月比マイナス0.2%、前年同月比マイナス0.1%でした。


市場の大方は、資源価格の下落や景気後退からデフレ圧力が続いているとの見方にあるようです。


3月26日(現地時間)、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)でWTI期近の5月物終値は前日比プラス1.57ドルの1バレル54.34ドルとなりました。
一時は54.66ドルまで上昇し、約4カ月ぶりの高値となりました。
これは、最近の各種指標などから景気の底入れが近いのではないかとの期待が反映しているようです。


今後、デフレ色は強まっていくのか、資源価格や景気動向の推移が見守られるところかと思います。



米国の個人所得と消費者マインド

3月27日(現地時間)、米商務省が発表した2月の個人消費支出は、前月比プラス0.2%となりました。
前月比プラスは2カ月連続でした。


米国の2月の個人所得は、前月比マイナス0.2%となりました。
前月のプラスからマイナスに転じました。


同日公表された3月のミシガン大学米消費者信頼感指数(確報値)は57.3となりました。
前月比プラス1.0ポイントでした。


3月の消費者期待指数は53.5となりました。
前月比プラス3.0ポイントでした。


こうした指標に着目すると、米国の個人所得は厳しい状況にあるものの、消費者マインドは上向いてきているように見えます。


景気が大きく底割れしないような金融市場の安定化が重要な局面と考えられ、4月2日に開催予定のG20、先日公表された米国金融安定化策の具体的な進捗が見守られるところかと思います。



2009年3月27日金曜日

コンゴは厳しい経済情勢にある模様

アフリカ中部に位置するコンゴは、厳しい経済情勢に直面しているようです。


コンゴは、アフリカ最大の鉱物資源国として知られ、輸出の約9割がコバルト・ダイヤモンド・金等で占められ、1970年代初期までは、順調な経済発展を遂げたものの、銅価格の低迷や対外債務の増大等によって1970年代末期以降経済困難に直面しました。


コンゴの経済成長率は、2007年には6.5%であったものの、今回の経済後退によって、コンゴから海外投資家が資金を引き上げる動きにあり、厳しい経済情勢で、失業率は大きく増加しているようです。


銅鉱山を抱えるあるコンゴの町では、町の半分が職を失ったとの海外メディアの報道もあります。


多くの国で、外資引き上げの影響が出ている中、IMFの融資に注目が集まっています。


市場では、4月2日のG20ではIMFの財源は引き上げられる可能性が高いとの見方があるようです。

今後の推移を見守りたいと思います。



米国GDP確定値とガイトナーの証言

3月26日(現地時間)、米商務省が発表した2008年10―12月期の実質GDP(確定値、季節調整済)は、年率換算で前期比マイナス6.3%となりました。


改定値のマイナス6.2%から0.1%の下方修正となりました。


7―9月期のマイナス0.5%に続き、2四半期連続のマイナスとなりました。


ただ、事前の大方の市場予想よりマイナス幅は小幅に留まったと言えます。


米国の経済情勢は、厳しいものの、市場が想定しているよりはましとみられるところ、金融市場が安定に向かえば、大きく底割れする可能性は少ないと思います。


同日、ガイトナー米財務長官は、下院金融サービス委員会の公聴会で、金融市場の安定化策について証言をしました。


ガイトナー米財務長官は、金融機関だけでなく、ヘッジファンドやベンチャーキャピタルなども対象とする包括的な金融規制改革案を提示し、強力な監督の必要性を訴えました。


先日は、中国が、基軸通貨ドルに代わる国際準備通貨の創設構想を提唱し、これにガイトナー財務長官が提案に理解を示す発言をしたと受け止められ、ドルは一時急落する場面もありました。


厳しい経済情勢にあって、金融市場の混乱が続いていますが、欧米間で隙間風が吹いているとの見方もある中、4月2日に開催されるG20でどのような対応が打ち出せるのか、今後の推移が注目されるところかと思います。



2009年3月26日木曜日

異例な形での従業員の不満爆発

海外メディアの報道によれば、急速に進む景気後退に対する従業員の不満が異例な形で爆発しつつあるようです。


フランスでは、人員の約半数を解雇しようとした製薬メーカーの役員は、従業員によって執務室に閉じ込められた状態で、労使交渉を強いられているようです。

労使交渉が完了するまで、役員は執務室に留まらざるを得ない状況のようです。


通常、ロックアウトはストライキに対抗するため、経営者が工場などを閉鎖して労働者側の就業を拒むものですが、自分の勉強不足で、このように従業員が役員を閉じ込める方法もあると初めて知りました。


また、実質国有化され厳しい状況にあるRBSの元最高経営責任者は、高額の年金を受領することが知れ渡り、反発した民衆から自宅に投石を受け、自家用車は破壊されたようです。


批判を受けている当事者にとっては辛いものと思いますが、こうした動きが、この程度で推移するならば、格別の大きな問題とはならないと思います。


しかし、先般の北アイルランドでの警官、兵士殺害など予想外のテロが発生するなどの状況にあって、テロと貧困の結びつきは長年言われているところ、急速に進む景気後退は、治安に大きな影を落としつつあるようにも思えます。


こうした懸念が杞憂に終わることを願いつつ、今後の推移を見守りたいと思います



EU議長が米国の景気対策を批判

3月25日(現地時間)、EUの議長であるチェコのミレク・トポラーネク首相は、米国が現在の景気対策を進めることを批判しました。


同日、オバマ大統領は、記者会見で、不況期における運営は難しいところ、現在進めている景気対策や金融安定化策への理解を求めるとともに、米国経済は改善の兆しが見えつつあると表明しました。


確かに、同日、米商務省が発表した2月の耐久財新規受注は、前月比プラス3.4%となりました。

前月比プラスになったのは7カ月ぶりでした。


しかし、3月20日(現地時間)、米議会予算局は、2009年の実質経済成長率はマイナス3.0%と予測した上で、2009会計年度の財政赤字はGDP(国内総生産)比で13.1%に達するとし、オバマ政権が2月に示した見通し(実質成長率:マイナス1.2%、財政赤字:GDP比12.3%)より厳しい数字を明らかにしました。

これは議会運営に影響を与える要因と理解されています。


オバマ政権は、国の内外から圧力に直面していると言えます。


ただ、チェコの議会下院は、3月24日に、ミレク・トポラーネク首相率いる内閣への不信任案を賛成多数で可決しました。米国の景気対策を批判したチェコのミレク・トポラーネク首相は、EUの議長を務めており、国内政局の混乱がEUの運営に悪影響を及ぼす懸念が強まっています。


報道によれば、チェコのミレク・トポラーネク首相は辞任する意向を示したものの、野党である社会民主党はEU議長国の任期を終える今年6月末まで現内閣が執務を続けることを認めると表明したようであり、ひとまずは、EU議長任期途中での退任の可能性は高くないようです。


英国のブラウン首相は、国際的な協調が重要であると各国を回って訴えているようです。


4月2日のG20開催に向けた動きと今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月25日水曜日

最近の指標に着目すると底入れが近いように見える米国住宅価格

3月24日(現地時間)、FHFA(米連邦住宅金融庁)が発表した1月の全米住宅価格指数(季節調整済)は、前月比プラス1.7%となりました。
前月比でのプラスは2008年2月以来のことでした。


マイナスとなった地域があることからすると、全国的な改善を確認したとまでは言えないと思いますが、多くの地域でプラスとなりました。


全国 +1.7%
Pacific -0.9%
Mountain +0.8%
West North Central +1.0%
West South Central ±0.0%
East North Central +3.9%
East South Central +0.6%
New England +2.0%
Middle Atlantic +1.5%
South Atlantic +3.6%

(出所)FHFA
��注)前月比、季節調整値。


3月23日(現地時間)、米国のNAR(全米不動産業協会)が発表した2月の中古住宅販売戸数は、前月比プラス5.1%となりました。
年率換算で472万戸と、2003年7月以来、約6年ぶりの大幅な伸びとなりました。
これは、事前の大方の市場予想を上回る水準と言えます。

市場関係者によれば、差し押さえ住宅や空売り販売が多かったようです。


全国  +5.1%
北西部 +15.6%
中西部 +1.0%
南部  +6.1%
西部  +2.6%

(出所)NAR
��注)前月比、季節調整値。


こうした指標に着目すると、米国住宅市場の価格は底入れしつつあるように見えます。

今後の推移を見守りたいと思います。



ユーロ圏PMIは改善

3月24日(現地時間)、公表された3月のユーロ圏製造業PMI(速報値)は34.0となりました。

前月(確報値)の33.5に比して改善しました。
大方の事前の市場予想を上回る水準と言えます。


また、3月のユーロ圏サービス業PMI(速報値)は40.1となりました。
前月(確報値)の39.2に比して改善しました。
大方の事前の市場予想を上回る水準と言えます。


3月2日(現地時間)に公表された2月の米国ISM製造業景気指数は35.8と、前月の35.6から若干改善しました。


2月の中国のPMI(購買担当者指数)は49.0と、3カ月連続の改善となりました。


これらPMIのみに着目すると、欧米の産業界は厳しい状況にあるものの、ごく僅かながら改善に向かっており、中国の産業は相当回復しているように見えます。


今後の推移を見守りたいと思います。



2009年3月24日火曜日

米国バッドバンク構想とノンバンク破綻法案

3月23日(現地時間)、米国ガイトナー財務長官は、金融機関が抱える最大1兆ドルの不良資産を買い取る官民合同の投資基金「バッドバンク」構想の詳細を発表しました。


①米国財務省は、民間金融機関やヘッジファンドを含む投資家の参加や出資を仰いで複数の投資基金を設立。
②住宅ローン担保証券など不良資産について、当初5000億ドルから最大1兆ドル規模で買取を目指す。
③FRB(米連邦準備制度理事会)とFDIC(連邦預金保険公社)は、不良資産の買取を促進するため、低金利での融資を行う。


同日、オバマ米大統領は、この不良資産買取計画について、景気回復に重要だが信用状況は即時には正常化しないとの見解を示しました。


NY市場は、こうした発表を好感したようです。


また、海外メディアによれば、同日、米下院金融委員会は、AIGのような大手ノンバンクの破たんをめぐる政府の対応改善に向け法案を策定しており、同法案は31日にも投票が行われる可能性があると関係筋が明らかにしたようです。


バッドバンク構想の報道の陰に隠れて殆ど報道されていないようですが、ノンバンクのより安全な破綻策は、バーナンキ議長講演でも指摘されていた問題であり、注目される動きではないかと思います。


米国は、金融安定化に向けた対応の具体的な内容を明らかにしつつあります。


今後、対応策が機能し、具体的な実行が順調に推移するのかが見守られるところかと思います。



地価公示に思うこと

3月23日、国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価は、全国平均(全用途)で前年比マイナス3.5%となりました。

これは、3年ぶりのマイナスでした。


今回の傾向として、3大都市圏でのマイナス幅が地方圏を上回ったことがあります。


3大都市圏は、オフィスビル、マンションの開発が活発に行われてきた地域ですが、不動産開発資金の調達環境の悪化や景気後退が、大きく影響したのではないかと思います。


一般に、オフィスビルの賃料は景気変動と相関が強いと考えられるところ、最近ではオフィスビルの空室率が上昇傾向にあり、賃料の下落は不自然ではないと思います。


一方、住居系の賃料は、長期的に見るとオフィスビルと比べ相対的に下方硬直性が高く推移してきたと思いますが、段々と変動する傾向は大きくなっていくのではないかと思います。


地価公示は、一般の土地取引の際の目安とされ、不動産鑑定士等の鑑定評価や公共用地の取得価格などを決める際の根拠となる他、相続税評価や固定資産税評価の際の目安として、また、企業会計における資産の時価評価にも活用されています。


事業承継などを考えると、必ずしも公示地価の下落はマイナスの側面だけではないのかも知れません。


蛇足ながら、最近、不動産賃貸業者や家賃債務保証業者によって、賃借人が賃料の支払いが遅れた場合に無断で賃貸物件の鍵を交換されたり、高額な違約金を請求されたり、室内の荷物を無断で処分されたりなどといった、いわゆる「追い出し屋」被害に対し、規制強化を求める動きがあります。


報道によれば、国交省は、早ければ4月下旬にも民間賃貸住宅部会で家賃保証業務の適正化策を討議し、法規制の必要性を含めて議論を進める方針のようです。


不動産市場の適正な運営に向けた動き、活性化に向けた動きなど、REITの再編なども含め、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月23日月曜日

インド総選挙の行方

インド政府選挙管理委員会によれば、インドでは、4月13日から総選挙が開始され、インド各地で5月13日まで投票が続けられるようです。

インドの登録有権者数は7億1,400万人に達し、世界最大の民主主義国家での総選挙と言えます。


インドの選挙委員会は、投票日には警官40万人と治安部隊21万人を配置して警戒にあたることを明らかにしています。
また、写真つきIDカードを導入する他、最新の電子投票機器も配備されたようです。

万全の警備体制のようにも思えます。


しかし、3月22日(現地時間)、警備上の問題から、インドの総選挙と同時期に開催される予定だったクリケットのインド・プレミアリーグが、インド以外の第三国で開催することになりました。

インドは世界最大のクリケットファン人口を抱えており、海外メディアの街頭インタビューではクリケットファンから強い反発が表されています。


インド与党にとって、国際的な景気後退により産業の不振や相次ぐテロという逆風下にあると言えます。


野党は、与党によるテロ対策の不備を攻撃し、与党同様の農村・貧困対策を打ち出していくとみられます。


第三勢力として、左翼政党の動きも注目されるところですが、インドの最大の左翼政党であるインド共産党左派は、マニフェストの中で、インドと米国の間で結ばれている原子力協定を見直し、米国との軍事協力など戦略的関係を破棄するとしました。

インドでは総選挙と同時期に、一部の州で、州議会選挙の投票も実施されるようです。


インドの与野党の動きとともに、第三勢力がどの程度、支持を伸ばし、政権に参加するのかどうか、インドの総選挙の推移が見守られるところかと思います。



アフガン問題に関連したパキスタンの動き

3月22日(現地時間)、解任されたチョードリー前最高裁長官が復職しました。


パキスタンの政情の安定にとってプラスの材料と思います。


米国は、アフガニスタンを対テロ戦の重要地域としていますが、パキスタンで対タリバンの戦いが不調な状況にあるようです。


3月21日(現地時間)、報道によれば、米CIA(中央情報局)のパネッタ長官は、パキスタンの首都イスラマバードを訪れ、ザルダリ大統領らと会談し、隣国のアフガニスタンで進める対テロ戦に関し、米国がパキスタン治安部隊の強化に協力する準備を進めていることを明らかにしたようです。


パキスタンでは、米国がアフガニスタンでの対テロ戦の一環から、パキスタン南西部にも無人機による爆撃を行うとの米紙報道から、パキスタン国内で反発が強まっているようです。


パキスタン現政権は、従来の米国のパキスタンに対する政策がうまくいっていないと認識している模様であり、アフガニスタン問題に関連し、パキスタンにおける米国政策の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月22日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


23(月曜)
国内:公示地価
   法人景気予測調査

海外:米 中古住宅販売 2月


24(火曜)

海外:米 住宅価格指数 1月

    EU PMI製造業指数 3月


25(水曜)

国内:山口日銀副総裁講演

    貿易統計

海外:米 新築住宅販売 2月

       耐久財受注 2月


26(木曜)

国内:企業向けサービス価格 2月

海外:米 GDP10-12月(確定値)

      新規失業保険申請件数


27(金曜)

国内:全国消費者物価指数 2月

    商業販売統計 2月

海外:米 個人所得・個人支出 2月

       ミシガン大消費者信頼感指数 3月



週末、米国FRBのTALFが想定していた2000億ドルの枠に対し、申し込みは47億ドルとなったことを受け、米国株価は下落しました。週明け後、決算にからむ動きも含め、推移が見守られるところかと思います。




3月末の期限を迎える米国自動車メーカーへの追加支援可否

3月末まで残り僅かとなりましたが、今年の3月末は、米国自動車メーカーに対する米国政府の支援可否を決定する期限となっています。


昨年の12月頃、自動車メーカーに対する支援が期待されていた当時に予想された支援金額は、最近では、大幅に上回る可能性が指摘されているようです。


また、経営危機の度合いから、GMには追加支援が認められるが、クライスラーには認められないのではないかとの観測も出ています。


3月3日(現地時間)、公表された2月の米国新車販売台数は、前年同月比マイナス41.4%と、約27年ぶりの低水準となりました。


GMはマイナス53.0%、クライスラーはマイナス44.0%でした。


今回の販売台数大幅減を単純に米国の消費マインドと繋げて説明する向きもあるようですが、最近の米国の消費者マインドを表す指数は、市場の予想より改善していると言え(2009-03-15、3月の米ミシガン大消費者期待指数は改善。日米の消費マインドが上向きつつある可能性。)、単純に消費マインド減退が原因とするのにはやや抵抗感を感じないでもありません。


現在の米国自動車市場は大幅な供給過剰で、急激な回復が難しいとの前提に立ったとして、オバマ政権が雇用を何よりも重視するとすれば、GM、クライスラーの何れも追加支援を行い、市場原理を重視するなら、単純な追加支援を行わないという選択肢になる可能性が高いのではないかと思います。

しかし、自動車メーカーへの直接支援だけでなく、自動車取得に関する促進策など、国際的に、自動車メーカーへの支援は幅広く行われており、米国が市場原理を重視したとしても、他国が支援策を強化するなら、効果は限定的になるのではないかと思います。


また、米国にとって、自動車メーカーに対する追加支援のポケットは、本来、金融システム安定化向けの資金であること、また、現在の自動車販売不振などに、金融システム安定化問題が少なからず影響している可能性があることからすると、自動車メーカー支援と金融システム安定化に関する具体策は繋がっている問題と考えることが可能かと思います。


何れの問題も国際的な動きが影響するとすれば、4月2日のG20が注目されますが、G20前に、思い切った判断を下すのか、G20を見極めるのか、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月21日土曜日

EU首脳会議の合意と気になる今後の国際協調の行方

3月20日(現地時間)、EU首脳会議で、IMF(国際通貨基金)の強化に向けて750億ユーロの融資を新たに行うことで合意し、東欧などの地域に向け、250億ユーロの緊急基金を500億ユーロに倍増することでも合意したようです。


しかし、米国が求めていた景気刺激策の規模拡大については受け入れませんでした。


EUにとって、外貨準備が対外債務に比べて少ない東欧などに対する支援は重要であり、IMFの果たす役割は大きいと思いますが、出資割合から、IMFで最も発言力のある国は、米国であろうかと思います。


1950年代後半の景気後退期に、カナダが、拡張的な財政政策をとった結果、為替相場の下落予想から巨額の資本流出に直面し、固定相場制に復帰せざるを得なかった歴史的経験があります。


財政赤字にある米国は多額の財政支出を続ける中、他国にも景気刺激策を呼びかけるのにはこうしたことも影響しているのではないかと想像します。


そうした中、景気刺激策では協調しないEUに対し、米国がIMFでは協調していくのかどうか、今回の金融市場の混乱と景気後退は国際的な協調が重要と考えられるところ、今後の推移が見守られるところかと思います。



FRBバーナンキ議長のコメント

報道によれば、3月20日(現地時間)、FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長は、講演で金融安定化に関し考えを述べたようです。


・金融システム全体の安定を損ねないような、大手ノンバンクを破たん処理するより安全な方法が必要。


・現在の金融機関に対する自己資本規制や会計基準は、景気変動を過度に大きくしている可能性がある。


・FRBの貸出プログラムの需要は景気回復とともに減退し、支援を縮小できる。


FRBは長期国債の購入を軸にした追加的な金融緩和策を打ち出し、市場の注目を集めているところですが、金融市場の安定化に向けて、評価は様々であるとしても、積極的に対応を続けているというイメージです。


一方、ガイトナー財務長官は、報道によれば、細部を重視する実務家で、強く自己主張するタイプではなく、舞台裏で交渉を進める手腕が、周囲から高く評価されてきました。


オバマ政権でガイトナー財務長官の果たす役割は小さくなく、当初、市場の期待も大きいものであったと思います。


しかし、最近のガイトナー財務長官辞任の噂が市場で流れるなど、苦境にあるように見えます。


また、公表されている金融安定化策は、ガイトナー財務長官の当初の考えとは異なるものとみられ、財政問題の制約などがあるとしても、ガイトナー財務長官は、思うような運営が出来ていないのではないかとの懸念も感じないではありません。


各種報道などによれば、財務省スタッフはまだ十分決まっていないようです。


金融システム安定化に向けた具体的な中身に関し米国財務省による公表が待たれるところ、米国当局の対応力充実に期待するとともにその推移を見守りたいと思います。



2009年3月20日金曜日

米国失業保険申請件数は厳しいながら市場予想より良好な水準

3月19日(現地時間)、米労働省が発表した新規失業保険申請件数(3月14日終了週)は、64万6千件となりました。
これは、前週の65万8千件から減少し、事前の市場の予想より少ないものでした。


同日、米フィラデルフィア地区連銀が発表した3月の製造業業況指数はマイナス35.0となりました。

これは、前月のマイナス41.3から改善し、事前の市場の予想よりマイナス幅は小さいものでした。


報道によれば、同日の米国市場ではガイトナー米財務長官が辞任するとの憶測が聞かれるなどの動きにあり、混沌とした雰囲気が伝わっています。


しかし、公表された指標からすると、米国経済は、市場が想定しているほど悪化してはいないことを示しているように見えます。


市場が上昇基調の時、市場予想を大きく下回る悪材料が出ると、ネガティブサプライズとして市場は急落し、逆に、市場が下落基調の時、市場予想を大きく上回る好材料が出ると、ポジティブサプライズとして市場は急騰するような気がします。


マクロ指標が水準としては悪くとも、改善に向かい、傾向として、市場予想よりやや良好な結果を継続するならば、将来的にポジティブサプライズとして評価される局面が到来してもおかしくないと思います。


今後の推移が見守られるところかと思います。



中国の大手飲料会社の買収に対する独占禁止法の判断に思うこと

3月18日(現地時間)、中国商務省は、米コカ・コーラによる中国の果汁飲料最大手である中国匯源果汁集団を買収する計画が、中国の独占禁止法違反にあたるとして、買収を認めない判断が示されました。


昨年の計画発表後、中国のネットサイトで行われた投票では、今回の買収計画に反対との意見が82%を占めたとの報道もされていました。


各種報道を見ると、中国ブランドが外資の手に落ちることへの拒否反応が大きく影響したとの見方を取り上げているものが多いようです。


同日、中国政府は、今回の買収を認めない判断をしたことについて、中国の独占禁止法に沿った客観的な決定で、外部の影響を受けておらず、保護主義によるものではないと表明しました。


ある調査会社によれば、コカ・コーラの中国での炭酸飲料の市場シェアは52.5%に達していたようです。

そして、今回買収対象となった中国匯源果汁集団は、匯源や美汁源といったブランドで、中国果汁市場のシェアは約40%に達していたようです。


中国の独占禁止法は、法律の専門家から、"競争法としての枠組み、体系がしっかりしており、時間はかかるにせよ、着実に欧米並みの競争ルール、実務に発展していくものと予想される。欧米では、中国経済が順調に拡大していくと、中国競争法は、将来的に米国反トラスト法、EU競争法と並ぶ3大競争法の1つになる可能性があると評価されている"(「独占禁止法と国際ルールへの道」村上政博 NBL No.901)との評価がされています。


最近の中国の経済成長は、外資による中国への直接投資を活用し、中国から海外への輸出産業が大きなエンジンであったと思います。


中国商務省によれば、今年2月の海外から中国への直接投資額は、前年同月比マイナス15.8%になったようです。


1月のマイナス32.7%より縮小したとはいえ、対中直接投資の減少傾向には、未だ歯止めがかかっていないと言えます。


買収を認めない判断を明らかにした3月18日朝方の香港株式市場では、今回の対象会社、中国匯源果汁集団の株価は2割以上急落し、売買停止となりました。


実際のところ、今回の判断に、世論が影響を与えたかどうかはわかりませんが、独占禁止法に関する判断は、長い目でみて中国経済の行方に大きな影響を与えていく可能性があると思います。


中国の独占禁止法は、制度としてはしっかりしているようであり、今後、運用の積み重ねが注目されていくところかと思います。



2009年3月19日木曜日

世界銀行は中国の経済成長予測を下方修正

3月18日(現地時間)、世界銀行の中国事務所は、中国の2009年のGDP伸び率予測を6.5%と前回予測から1%下方修正しました。


中国政府の公式の経済成長目標は、13日に閉幕した全国人民代表大会で掲げた8%前後となっています。


今回、世界銀行は、世界的に急速に進む景気後退の影響を受け、中国の経済成長率は減速すると予測したものです。


過去、中国で公表された統計によれば、1999年から2003年にかけて中国の失業率は増加しましたが、この間の実質GDP成長率の平均は8.7%でした。その後、中国の実質GDPは2ケタペースで成長し、失業率は低下に向かいました。


こうした点に着目すると、中国で雇用が安定するには、年8~9%を上回る経済成長が必要とされるように見えます。


今回、世界銀行が示したGDP成長率6.5%は、中国での失業者が増大し、中国の国内情勢は不安定に向かうと示唆していると思います。


国際的にみて、中国は、思い切った景気対策を打ち出しており、世界的に進む景気後退から早期に脱出するのではないかと期待されているところ、世界銀行は中国経済は2009年から2010年にかけて厳しい状況が続くとしています。


今後の推移が見守られるところかと思います。



FRBが声明文を公表

3月18日(現地時間)、FRB(米連邦準備理事会)は、一段の金融緩和に向け、声明文を発表しました。


FOMCの声明の骨子は、


1.FF(フェデラルファンド)金利誘導目標水準を0~0.25%に据え置く。

2.住宅ローン・住宅市場を一段と支援するため、政府機関が保証するMBS(モーゲージ担保証券)を最大7500億ドル追加購入し、今年の総額を最大1兆2500億ドルとする。

3.今後6カ月間に最大3000億ドルの長期米国債を購入する。


というものでした。


今回のFOMCの声明発表前、市場には、一部の金融当局者が米国債取得策に冷淡な態度を示しているといった情報もあり、FRBは、新たな対策を打ち出す前にこれまでの信用緩和策の効果を見極めるのではないかとの見方も出されていました。


今回、FRBは、市場予想通りにゼロ金利政策を維持し、市場の期待に応え量的緩和の拡充策を採ったと言え、NY市場では、長期金利の低下の思惑が広がり、債券市場は活況になったようです。


今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月18日水曜日

ドイツの景況感は予想外の改善

3月17日(現地時間)、ドイツのZEW(欧州経済センター)が発表した3月のZEW景気期待指数(注)は、マイナス3.5となりました。
(注)ドイツの民間調査会社であるZEW(欧州経済センター)により実施されるエコノミストに対するアンケート調査です。向こう6カ月の景気見通しに対する予想を行い、楽観回答の比率から悲観回答の比率を引いたものです。


前月のマイナス5.8に比して改善しました。


ECB(欧州中央銀行)が過去最低水準への政策金利の引下げ実施後、EUの主要国であるドイツの景況感が注目されていました。


市場の事前の大方の予想では、マイナス幅は前月に比べ拡大するとの見方にありましたが、予想外の改善となりました。


改善は5カ月連続となりました。


市場では、日米に比べ、EUは、厳しい景気後退に直面していて、景気回復には日米より長い道のりが必要との見方が大勢を占めると思います。


確かに、ドイツの景況感は水準としては非常に悪いことは異論のないところかと思います。


しかし、ZEW景気期待指数のみに着目する限り、景況感は少しずつ改善に向かいつつあるように見えます。


市場には、ドイツの景気は今年の夏に底打ちするとの見方も出始めているようです。


個人的に、東欧問題などから、EUの主要国であるドイツの景況感は惨憺たるもので、景気回復を見通すことは困難と見ていたことは不適切であったかも知れないと思った次第にて、今後公表予定のIFO景況感指数を含め、推移を見守りたいと思います。



マダガスカルで政変


海外メディアによれば、3月17日(現地時間)、政情不安が伝えられていたマダガスカルで、ラヴァルマナナ大統領が辞任し、野党党首のラジョエリナ氏が自ら大統領を名乗ったようです。


ラヴァルマナナ大統領は、大統領の権限を軍に委譲しようとしたところ、これが受け入れられなかったようです。

(注)軍に大統領権限が委譲されたという報道もあり、情報は錯綜しているようです。


マダガスカルでは、ラヴァルマナナ大統領の汚職体質に対する抗議デモが続発し、治安部隊の発砲により100人以上が死亡したと伝えられていました。


最近、マダガスカルの大統領府に戦車が入るなど、マダガスカルの政情は不安定な状況が続いていました。


野党党首のラジョエリナ氏は、2年以内に選挙を実施すると表明したようです。


現在のところ、マダガスカルの政変は平和的に進んでいるようです。


ただ、汚職体質によって糾弾されたとはいえ、辞任したラヴァルマナナ大統領は2006年12月の大統領選挙で再選され、与党は国民議会選挙で圧勝していました。


また、報道によれば、アフリカ連合の高官は、反大統領派の動きを批判するコメントをしたようです。


今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月17日火曜日

EUの消費者物価は前年比プラス1.2%と速報値と変わらず


3月16日(現地時間)、EU統計局が発表した2月のユーロ圏消費者物価指数(16カ国、改定値)は、前年比プラス1.2%、前月比プラス0.4%と速報値と変わらない水準になりました。


食品・エネルギーを除くコア指数は、前年比プラス1.7%、前月比プラス0.4%でした。


2月27日(現地時間)、ドイツ連邦統計庁が発表した2月のドイツの消費者物価指数(速報値)は前年同月比プラス1%となりました。


3月12日(現地時間)、フランス国立統計経済研究所が発表した2月のフランスの消費者物価指数は前年同月比プラス1.0%、前月比プラス0.4%となりました。


EU及びユーロ圏主要国の2月の消費者物価指数は、プラスで推移しましたが、市場では、石油価格の下落が続くとすれば、エネルギー価格は消費者物価上昇率を押し下げ、消費者物価指数はゼロ近辺ないしマイナスになる可能性があるとの見方が出されているようです。


ECB(欧州中央銀行)は、4月に追加利下げに踏み切るとの観測も出ています。


EUは、日米に比べ、経済は厳しい状況にあるとの見方がある中、G20では、EUは追加の景気対策に慎重な姿勢を示した模様であり、今後、EUの消費者物価指数、ECBの金融政策などが見守られるところかと思います。



パキスタンのチョードリー前最高裁長官の復職決定

報道によれば、3月16日(現地時間)、パキスタンのザルダリ政権は、チョードリー前最高裁長官の復職を受け入れたとのことです。


チョードリー前最高裁長官は、ムシャラフ政権下の汚職を追求したために、その職を追われた経緯がありました。


今回のチョードリー氏の復職は、先ずは、パキスタン国内の政治的対立悪化という事態を回避したと言えます。


現地のマスコミは、今回、現政権がチョードリー氏の復職を認めたことで、司法の独立確保と民主主義の進展に意義があると伝えているようです。


懸念された当面のパキスタンの政情悪化は回避されたと言えますが、国軍の力が強いと言われる同国の政治情勢の今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月16日月曜日

金融システム安定化に関するG20共同声明と米国の動き

3月15日(現地時間)、ロンドンで開かれていたG20は共同声明が出されました。


声明の中で、必要に応じ流動性支援の継続および銀行の資本増強を通じ金融システム安定化に取り組み、不良資産を処理することにより貸し出しを回復することを表明しました。


声明では、金融システム上、重要な機関の健全性を確保するために必要なあらゆる行動をとることへのコミットを再確認するとしています。


金融システム安定化に向けた各国の具体的内容が気になるところですが、海外メディアによれば、米財務省高官が、米国財務省は、金融機関の不良資産買い取りに向けた官民共同ファンド設立の詳細を1週間以内に発表すると明らかにしたようです。


当初、ガイトナー財務長官は、官によるバッドバンク構想を希望していたところ、官民共同ファンドになったとの見方もある中、具体的なファンドの内容が注目されるところであり、発表が見守られるところかと思います。



パキスタンのシャリフ元首相に軟禁命令

報道によれば、3月15日(現地時間)、パキスタンではシャリフ元首相に自宅軟禁を命令したようです。


パキスタンでは、現政権に対し、シャリフ元首相に対する軟禁命令に抗議する大規模なデモ活動が起き、警官隊が衝突する事態にあるようです。


デモは、チョードリー前最高裁長官ら判事の復職などを訴える趣旨も併せているようです。


シャリフ元首相は、自宅軟禁措置を受け入れず、外出を強行するなどの動きにあるようです。


パキスタンでは、ソフトな革命が起きていると表現する見方もあるようですが、現時点では、抗議活動は、選挙実施を求めてはいないようです。


パキスタンの政情は流動的になりつつあるようであり、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月15日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


16(月曜)

国内:月例経済報告 3月

海外:米 鉱工業生産、設備稼働率

    米 NY連銀製造業景況指数 3月

EU 消費者物価指数 2月


17(火曜)

海外:米 生産者物価指数 2月

    米 住宅着工、建設許可件数 2月

    EU ZEW景況指数 3月


18(水曜)

国内:白川日銀総裁会見

海外:米 FOMC

    米 消費者物価指数 2月

    米 経常収支 10-12月


19(木曜)

国内:全国百貨店売上高 2月

海外:米 新規失業保険申請件数


20(金曜)

海外:バーナンキ議長講演


海外メディアによれば、ロンドンで開催されているG20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)が発表する声明について、新たな財政出動は求めず、既存の措置に集中する方針を示すとの見通しを示したようです。


最近、米国の大手金融機関の経営トップが業績に対する楽観的な発言をしていることもあり、金融市場は落ち着きを見せているようです。ただ、リスクを強く再認識するような話題が出ないかに注意が必要ではないかと思います。



3月の米ミシガン大消費者期待指数は改善。日米の消費マインドが上向きつつある可能性。

3月13日(現地時間)、公表された3月の米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は56.6となりました。
これは、前月の56.3から若干ながら改善しました。


3月の米ミシガン大消費者期待指数は53.0となりました。

これは、前月の53.0から改善しました。


米ミシガン大消費者期待指数は、景気回復の前に上昇する傾向にありますが、2月24日に公表された2月のコンファレンス・ボード消費者信頼感指数が25.0と、1967年の統計開始以来最も低くなったことを併せてみると、慎重に見た方が良いように思えます。


それでも、今回のミシガン大消費者期待指数のみに着目すると、米国の消費マインドは上向いてきている可能性があると思います。


日本でも、3月13日、内閣府が発表した2月の消費者態度指数(一般世帯、原数値)は、前月比プラス0.3ポイントの26.7と、2カ月連続でで改善しました。


厳しいマクロ指標などをみると、違和感が無いでもありませんが、米国の景気対策、日本の定額給付金の効果から、日米の消費マインドが上向きつつあるのかも知れません。


今後の推移を見守りたいと思います。



2009年3月14日土曜日

鉱工業生産指数確報値とGDPの2次速報値の印象

3月13日、経済産業省が発表した1月の鉱工業生産指数(確報値、季節調整済)は75.8と、前月比マイナス10.2%となりました。


今回のマイナス幅は過去最大で、速報値のマイナス10.0%から下方修正されました。


一般に、鉱工業生産指数は、GDPと同じ方向に、GDPよりも高い振幅を示す傾向があります。


業種別では、出荷の低下に寄与したのは、輸送機械工業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等でした。


また、出荷指数の確報値は、指数水準は76.1(季節調整済)と、前月比マイナス11.4%となりました。


業種別では、出荷の低下に寄与したのは、輸送機械工業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等でした。


一般に、鉱工業生産指数が、供給面の動きを、鉱工業出荷指数が、需要面の動きを示すと言えますが、今回の鉱工業生産指数と出荷指数の確報値公表は、生産、供給の何れも厳しい状況にあることを示していると言えようかと思います。


ただ、製造工業生産予測指数の予測修正率は、2月調査はマイナス8.7%とマイナスではありますが、1月調査のマイナス12.1%に比べ、マイナス幅は縮小しました。


3月12日内閣府が発表した2008年10-12月期実質GDP(国内総生産)の2次速報値は、前期比マイナス3.2%(年率マイナス12.1%)となりました。


これは、1974年以来、過去2番目の大幅なマイナス幅となりました。


大方の市場予測は、2009年1-3月期もマイナス成長が続くとの見方にあるようです。


生産と需要がスパイラル的に縮小していくのかなど、今後の推移が見守られるところかと思います。



消費者態度指数は2カ月連続で改善

3月13日、内閣府が発表した2月の消費者態度指数(一般世帯、原数値)は、前月比プラス0.3ポイントの26.7となりました。


2カ月連続でで改善しました。


これは、前月に比べ「収入の増え方」が低下したものの、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」、「暮らし向き」の意識指標が上昇したことによるものでした。


消費者態度指数は、消費者マインドを表し、消費支出の先行指標と言えるかと思います。


消費者態度指数の水準は、今回の景気後退期に入る前、一昨年の秋で42~44程度の水準であったことからすると、消費マインドは冷え込んでいると言えますが、2カ月連続で改善したことからすると、消費マインドは上向きつつあるのかもしれません。


また、同調査によれば、2月の一般世帯の1年後の物価に関する消費者の見通しは、最も回答が多かったのは、「上昇する(2%以上~5%未満)」の23.8%であり、次に、「変わらない(0%程度)」の20.0%、「上昇する(2%未満)」の19.7%という順でした。


この結果のみに着目すると、消費者の間では、現時点でデフレを強く懸念する状況にはないとの認識にあるように思えます。


今後、本統計に関し、毎年3月に実施される「主要耐久消費財等の普及・保有状況」の調査結果などが見守られるところかと思います。



2009年3月13日金曜日

東京都心5区のオフィス空室率は5.60%に上昇

3月12日、三鬼商事の公表した調査結果によれば、東京ビジネス地区(千代田、中央、港、新宿、渋谷の都心5区)の2月末時点の平均空室率は、5.60%となりました。


同調査によれば、2月は大型テナントの統合や集約に伴う解約予告が相次ぎ、この1カ月間に都心5区全体で空室面積が約4万5千坪増加したとのことです。

都心5区以外への移転や規模縮小など、急速に進む景気後退の影響が出ているようです。


同調査によれば、2月の平均賃料は、21,620円/坪と、前月の21,943/坪から低下し、2007年10月以来の低水準となりました。


2月26日、森ビルは、東京23区の大規模オフィスビル市場動向の調査結果を発表しました。


同調査によれば、2008年の新規需要は34万㎡で新規供給65万㎡の半分程度となり、空室率が3.8%に上昇したとしています。


東京23区の大規模オフィスビルの新規需要が供給量を大きく下回ったのは、2003年問題が取りざたされた前年の02年以来とのことです。


今後、2009年、2010年の供給は過去平均の104万㎡を下回り、09年が87万㎡、10年が89万㎡になる見通しにあります。


2011年は157万㎡、2012年は141万㎡と過去の平均を上回ると予測しています。


一般に、オフィス賃料は、景気動向の影響を受けると考えられるところ、当面、厳しい状況が続く可能性が高いと思われます。


今後の推移が見守られるところかと思います。



2月の米国小売売上高はマイナスながら、事前の市場予想より小幅。

3月12日(現地時間)、米商務省が発表した2月の小売売上高は、前月比マイナス0.1%となりました。


事前の大方の市場予想よりマイナス幅は小幅と言えます。


米国の個人消費支出のうち、小売店の売上高は約4割を占めています。


そこで、米国小売売上高は、米国の個人消費の行方を占う上で、有力な指標と理解されているところかと思います。


今回公表された2月の小売売上高は、速報値ながら、市場予想よりマイナス幅が小幅に留まったことからすると、米国の個人消費は、市場が考えるより、早期に安定に向かうのかも知れません。


今後の推移を見守りたいと思います。



2009年3月12日木曜日

機械受注統計は厳しい内容だったものの、市場予想よりマイナスは小幅

3月11日、内閣府が発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は、前月比マイナス3.2%減の7183億円となりました。


製造業は同月比マイナス27.4%の2,202億円、非製造業(除く船舶・電力)は同プラス13.5%の5,052億円でした。


過去、機械受注の山・谷は、設備投資に1~2四半期先行している傾向にあり、機械受注は設備投資の有力な先行指標と言えます。


2月9日に公表された2008年10-12月の機械受注見通し達成率は、受注総額では82.1% と前期に引き続き100%を下回り、7-9月期の達成率と比べ14.4ポイント低下していたことも併せてみると、設備投資意欲の低下傾向を再確認したところではありますが、今回の機械受注統計は、市場の事前の大方の予想よりマイナス幅は小さかったと言えます。


世界的に景気後退が急速に進む中、日本は国際的にみて相対的に早期に回復する可能性があるのでないかとの声も聞こえるところ、今後の推移が見守られるところかと思います。



2月の米国財政赤字幅は市場予想より小幅なものの、過去最高水準のペース

3月11日(現地時間)、米財務省が発表した2月の財政収支は1927億8千万ドルの赤字となりました。


前年同月の1755億6千万ドルの赤字より悪化しましたが、事前の市場の予想より赤字幅は小さいものだったと言えます。 


しかし、米国の財政赤字は過去最高の水準で推移しています。


米国財務省によれば、2月の財政赤字の大きな要因は、不良資産救済プログラム(TARP)と住宅対策でした。


今後、景気対策法の実行により、財政赤字は拡大していきます。また、金融安定化に相応の資金を投下する必要がある他、自動車メーカーの救済問題も決着していません。


急速に進行する景気後退と金融市場の安定化に対し、オバマ政権は、今後さらに財政支出を行うことが重要と思いますが、市場では、オバマ政権の財政見通しは楽観的過ぎるとの見方があり、また、赤字拡大に懸念を示す共和党議員から非難を浴びています。


オバマ政権が支持を得て適切な決定を行っていけるのか、まずは、ここ数ヶ月の動きが重要と思われます。


過去、長期的にみると、米国の財政収支と米国金利にはある程度の相関が認められましたが、米国は短期的に金利を上昇させる状況にはないと言えます。


為替の問題も含め、米国の財政収支とオバマ政権の行方が見守られるところかと思います。



2009年3月11日水曜日

治安の不安拡大の懸念。世の中のマインドを悪化させないか心配。

3月9日(現地時間)、北アイルランドで、兵士2名の射殺に続き、今度は警官が射殺され、IRAの分派が犯行声明を出したようです。


3月10日(現地時間)、スリランカ南部アクレサのモスクで、自爆テロがあり、少なくとも10人が死亡したようです。

これは、スリランカの閣僚6名が集まるイスラム教の祝日の式典を狙ったものだったようであり、閣僚1名が集中治療室で治療を受けているようです。


同日、イラクでは車による自爆テロで軍、ジャーナリストなど33人が死亡したようです。


最近、中国では、チベットの治安が悪化しているとの報道も出ています。


たまたまこうした報道が目についただけかもしれませんが、テロが活発化し、治安は不安定に向かっているようにも思えます。


2月27日(現地時間)公表された2月のミシガン大学米消費者信頼感指数は56.3となり、3カ月ぶりの水準に低下しました。


3月9日(現地時間)公表された中国の2月のDDMA消費者信頼感指数は前月比マイナス9ポイントとなり、中国の消費マインドは低下しているようです。


ただでさえ消費マインドが冷え込んでいるところ、治安・社会の不安は世の中のマインドをネガティブな方向に向かわせ、経済・社会活動に悪影響を及ぼすのではないかと懸念を覚えます。


懸念が杞憂で終わることを願いつつ、今後の推移を見守りたいと思います。



FRBバーナンキ議長が来月開催予定のG20に関しコメント

海外メディアによれば、3月10日(現地時間)、FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長は、4月に開催予定のG20で、将来の危機防止に向けた金融規制改革の指針となる原則について合意すべきとの認識を示したようです。


バーナンキ議長は、金融市場の混乱は、国際的な問題であり、各国間が相互に矛盾しない協調した対応が重要との認識の下、金融システム全体の健全性についての監督責任を一元化する制度に移行すべきとの考えを示したようです。


報道によれば、過日(3月9日、現地時間)、ユーロ圏グループの議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相は、各国に一段の景気刺激策を求める米国の呼びかけにユーロ圏諸国が賛同していないことを明らかにしたとのことです。


昨年、リーマンショック後に世界は協調して問題にあたるとの姿勢を示しました。そして、危機が深まれば、問題が長引かない限り、協調は強固になっていくのではないかとの見方がありましたが、最近は、欧米の歩調が必ずしも一致しない動きになっています。


3月10日(現地時間)、米国商務省が公表した在庫は前月比マイナス0.7%となったものの、売上が前月比マイナス2.9%となり、対売上高在庫率は1.30と前月の1.27から悪化しました。

米国では、売上の低下が加速し、生産の減少による在庫整理が追いつかない状況にあるようです。


金融市場の安定化問題は、景気後退の行方に大きく影響すると考えられるところ、G20で金融市場の安定化に向けてどのような対応を打ち出せるのか、注目されるところかと思います。



2009年3月10日火曜日

経常収支の赤字転化は国内資金需給の急激な逼迫さを表現

3月9日、財務省が公表したわが国の経常収支は1,728億円の赤字となりました。


前年同月比ではマイナス1兆3,365億円と経常黒字から経常赤字へ転化しました。


これは、「貿易・サービス収支」の赤字幅が拡大したことや、「所得収支」の黒字幅が縮小したことから、全体として13年振りの赤字となったものです。


赤字額としては、昭和60年1月以降で最大の赤字額でした。


経常収支は、国内における資金需給の逼迫度合いを意味する(※)と考えられるところ、国内は急速に進む景気後退にあって資金需給も急速に逼迫したことを示していると言えます。


※ GNP=消費+貯蓄 (←分配面)
      =消費+投資+経常収支 (←支出面)


 ∴経常収支=貯蓄-投資


従来、日本の政府部門は、財政赤字と景気対策で資金需要が高い一方、日本の民間部門の貯蓄超過による資金供給があったことでバランスしてきました。

しかし、資金需要の急速な逼迫が続けば、こうした構造が中期的に影響を受けるのかも知れません。

今後、その推移が見守られるところかと思います。



EU財務相はIMF融資財源倍増を支持の模様

海外メディアによれば、EU(欧州連合)域内の財務相は、今週末開かれるG20財務相会合で、IMF(国際通貨基金)の融資財源を倍の5000億ドルに引き上げることを支持する考えを示したようです。


ヨーロッパの成長市場であった東欧経済は、昨年来の金融市場の混乱と急速な景気後退によって、大きな打撃を受けています。


東欧諸国は、海外からの資金流入が成長を支える資金であり、対外債務に比べ外貨準備の割合は高くない傾向にあり、市場では、IMFから資金調達する必要が指摘されています。


今後、IMFの財源、東欧の経済動向と資金調達問題、EU経済への影響とEU為替などの行方を見守っていきたいと思います。



2009年3月9日月曜日

札幌北洋グループへの公的資金注入

最近の報道によれば、北洋銀行が改正金融機能強化法に基づいて金融庁に1000億円規模の公的資金注入を申請するとの観測が出ています。


昨年来の世界的な急速な景気後退により、国内各地域の企業経営は厳しい状況におかれ、地域経済は厳しさを増しています。


札幌北洋グループへの公的資金注入額は、当初、数百億円規模と見られていましたが、株価の下落等を背景に有価証券評価損が予想以上に膨らんだことが大きく影響した模様です。


札幌北洋グループの決算短信によれば、2008年12月末時点の自己資本比率は、9.9%程度と、銀行の国内業務を行う基準である4%を大きく上回っています。


国内地域経済の厳しさは続く見通しであり、今後、地域金融機関の再編につながる動きが出てくる可能性は少なくなく、他地域の地方銀行の行方が見守られるところかと思います。



北アイルランドで兵士2名が死亡する銃撃事件発生

3月8日(現地時間)、北アイルランドにある英国軍の基地で、銃撃事件が発生し、兵士2名が死亡するなど、6名の死傷者が出たようです。


海外メディアによれば、ピザの宅配を装った車が基地近くに停車し、近づいた兵士らを銃撃したとのことです。


現在、北アイルランドでは、英国との和平プロセスが進んでいます。


今回の銃撃事件は、和平プロセスを不安定にさせようとの意図があり、IRAの分派が関与しているのではないかとみられているようです。


北アイルランドの分離独立問題は、30年余にわたりテロが続き、1998年の和平合意までに数千人が犠牲になりました。


金融市場の混乱と、経済後退に直面する世界は、こうしたテロの脅威にさらされる懸念が強まるのかも知れません。


今のところ、北アイルランドの和平・政治プロセスに大きな悪影響はないようですが、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月8日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


9(月曜)

国内:国際収支 1月

海外:EU ユーロ圏財務相会合


10(火曜)

国内:景気動向指数 1月

海外:米 FRBバーナンキ議長講演

    EU 生産者物価指数 1月


11(水曜)

国内:機械受注統計 1月

    企業物価指数 2月

海外:米 財政収支 2月


12(木曜)

国内:GDP 10-12月(2次速報)

    オフィス空室状況 2月

海外:米 小売売上高 2月

       企業在庫 1月

EU 鉱工業生産指数 1月

   中国 消費者物価指数


13(金曜)

国内:消費者態度指数 2月

    鉱工業生産指数 1月(確報)

海外:米 貿易収支

      ミシガン大消費者信頼感指数 3月

    EU 小売売上高 1月


英国では週末に大手銀行のロイズが国有化となりました。報道によれば、米国ではGMが破産申請せずに事業再建を目指すという動きにあるようです。


この週明け後だけに限ったことではありませんが、予定されたイベントだけでなく、まずは、年度末にかけて、何か突発的な出来事が起こってもおかしくない状況にあると思います。推移を見守りたいと思います。



ソフトローに関するシンポジウム

過日、法律に関するシンポジウムで研究報告を聴く機会がありました。


これは、東京大学のグローバルCOEプログラムによるソフトロープロジェクトです。


ソフトローとは、東京大学のHPによれば、国の法律ではなく、最終的に裁判所による強制的実行が保証されていないにもかかわらず、現実の経済社会において国や企業が何らかの拘束感を持ちながら従っている規範を指します。

現代のビジネスローにおいては、このような一見つかみどころのないソフトローが膨大に存在し、また実際にも重要なウエイトを占めており、企業活動のありかたを大きく左右しています。


現在、世界的な金融市場の混乱と急速な景気後退に見舞われています。

そして、こうした状況に陥った要因を分析、対応が検討・実行となりますが、議論の趨勢によっては、金融市場での規制のあり方や市場経済のあり方が大きく変わる可能性があると思います。


急速に変化する状況に対し、立法を待っていたのでは、対応が後手に回る可能性がある中で、ソフトローの議論の中に何かインプリケーションを得ることができるかも知れないと思ったところでした。


東京大学の山本隆司教授の報告の中で、行政法の立場から、ハードローとソフトローの交錯について説明があり、特に、手続段階における役割や成果の関係が興味深かったですが、自分自身の問題意識に落とし込んで消化するまでには至りませんでした。


世の中は変わっていく、目に見えるものだけではなく、今、目にすることのないものも変わっていくのだと思います。

今後、出来る限りアンテナを高くして、変化の行方を見守って行きたいと思います。



2009年3月7日土曜日

米国地区連銀の総裁が金融当局の対応を批判、警鐘

3月6日(現地時間)、海外メディアの報道によれば、米国地区連銀の総裁が、米国金融当局の対応を批判し、警鐘を鳴らしたようです。


米フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁は、


・金融当局は、ベアー・スターンズは救済したものの、リーマンブラザーズは破綻させるなど、一貫性がない対応が不透明性につながっている


・AIGの救済などは、暗黙の了解として政府保証を当てにし、破たんさせられないほど大きく複雑になるよう金融機関に促すことになる


・規制当局が金融機関の債権者を救済するという考えはモラルハザードを生み出す


などと述べたようです。


過日(3月3日、現地時間)、FRBバーナンキ議長は、上院予算委員会で証言し、AIGは、規制を受けていないヘッジファンドのように経営されていたと述べ、AIGを強く批判しました。


AIGは大きすぎて潰せないという見方、大きすぎないように規模を制限するという意見、規模を制約すると市場の効率性を損なうという反論など、米国金融市場の立て直しに関する議論の行方が見守られるところかと思います。



米国の失業率は市場の想定を上回るペースで悪化している可能性

3月6日(現地時間)、発表された2月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数がマイナス65万1千人となりました。


これは、事前の大方の市場予想と同様の水準と言えます。


失業率は8.1%となりました。


これは、事前の大方の市場予想より悪い数字で、市場の想定しているスピードを上回るペースで失業率が高まっている可能性があると言えます。


米国では、今回の景気後退期において400万人以上の失業者が生まれています。


オバマ大統領は、過日(2月25日、現地時間)、景気対策法が成立した直後の議会演説で、350万人分の雇用創出ができると表明しました。


しかし、仮に、景気対策が見込通りに雇用が創出できたとしても、失業者全てをカバーできるものではなく、混乱している金融市場の立て直しと米国経済の回復がどの程度進むかが重要と言えます。


市場では、年内に米国の失業率は10%に達する可能性が指摘される中、オバマ政権は、追加的な公共投資をはじめ雇用維持・創出を前面に出した政策を進めるのか、市場経済の活性化策によって雇用が回復していくのを期待していくのか、今のところ前者になる可能性ことを懸念する向きもありますが、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月6日金曜日

追加景気刺激策が公表されなかった中国の全人代

3月5日(現地時間)、中国で全人代(全国人民代表大会)が開幕しました。


報道によれば、温家宝首相は、中国は、厳しい経済情勢にあり、困難に直面している旨の認識を示す一方、中国はこれを乗り越えることが可能であるとし、10%成長の時代は終わったが、今年の目標である8%成長の達成は可能と表明したようです。


しかし、事前に市場が期待していた新たな景気刺激策の発表はありませんでした。


昨年来の金融危機の深刻化、景気後退により、中国では2000万人が失職し、急激に失業率が上昇しているとの見方が出されています。


個人的には、中国が計画通り8%成長を達成できるとすれば、失業問題は沈静化に向かうと推測します。


世界経済にとって中国の経済成長に対する期待は高く、市場では、3月5日の日本の株式市場は全人代で追加景気対策が示されなかったこともあり、大引けにかけて伸び悩んだとの見方が出されているようです。


今後、中国の動向が注目される場面が増えていく可能性が高いと思われ、その推移が見守られるところかと思います。



さらなる金利引下げに向かうとみられるECBと新たな金融政策の段階に入ったBOE

3月5日(現地時間)、ECB(欧州中央銀行)は、政策金利を0.5%引き下げ、1.50%にすると発表しました。


ECBの政策金利は過去最低水準となりました。


同日、ECBは、ユーロ圏経済の2009年の経済成長は当初予想よりもマイナス幅が拡大し、2010年も不確かな回復にとどまるとの見通しを示しました。


会見で、ECBトリシェ総裁は、追加利下げの可能性を排除しないとのコメントしており、報道によれば、ECB理事会メンバーであるドイツ連銀総裁から、ECBにはさらなる利下げ余地があるとの認識が示されたようです。


ただ、トリシェ総裁は、会見で、ゼロ金利に関し消極的なコメントをしたようです。


ECBは、多くの関係国の状況を考慮する必要があるとしても、ゼロ金利に向かわざるを得ないのではないかとの印象ですが、今後の推移が見守られるところかと思います。


同日、BOE(英国中央銀行)は、政策金利を0.5%引き下げ、0.5%にすると発表しました。


また、750億ポンドの資産買い入れを発表し、英国政府は、BOEに対し、量的緩和政策を支えるため、全体で1500億ポンドの資産買い入れ枠を与えました。


BOEの総裁は、さらなる政策金利の引下げ可能性は低いとの認識を示しました。


英国の政策金利は0.5%と1%を下回る金利水準になったことで、政策金利を引き下げるとしても、その幅は限界的と言え、英国の金融政策は新たな段階に入ったと言えます。


BOEは、今後2年間でインフレ目標2%を下回るリスクを示しました。


今後、英国はデフレ懸念に対し、マネーサプライ拡大に取り組むことになろうかと思います。


英国の物価動向なども含め、今後の金融政策の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月5日木曜日

スーダンの現職の国家元首に国際刑事裁判所が逮捕状

3月4日(現地時間)、ICC(国際刑事裁判所)は、現職のスーダン元首であるバシル大統領に逮捕状を出したと発表しました。


現職の国家元首にICCが逮捕状を出すのは初めてです。


バシル大統領がスーダン国内に留まる限り、逮捕の実行は難しいようです。


今回の逮捕状は、ダルフール紛争に関連し、バシル大統領が、アラブ系民兵にカネを払い、自国の複数の民族を殺害したことや強姦などが含まれているようです。


ダルフール紛争では、30万人以上が死亡し、今も250万人が難民キャンプに身を寄せているようです。


現地では、大統領を支持する民衆が集まるなどの動きにあり、内政干渉との声も聞こえます。


ICCメンバーとの会見に関する海外メディアのTV放送で、その発言を聞く限り、今回の逮捕状は、世界各国のメンバーで検討の上、最終的にICCの裁判官3名で決定したもので、逮捕状を出すに至った手続きは適正に行われたとの印象です。


ところで、スーダンでは、過日(3月3日)、中国が全面支援したダムが完成したばかりです。


TV放送で同ダム完成の式典を見ましたが、バシル大統領は、満面に笑みをたたえ、米国に嫌われても、中国がいるから大丈夫といった内容を表明するなどしていました。中国の代表者は祝辞を述べていました。


従来、中国は、アフリカに対する積極的な資源外交を展開しており、このスーダンのダムもそうした流れの一環のようです。


スーダン情勢は、ある意味で今後の国際情勢を象徴しているような気がしており、個人的には、資源価格が再上昇する前、景気後退期にこうした問題が安定することを願いつつ、今後の推移を見守りたいと思います。



日銀須田審議委員の発言に関する印象

3月4日、日本銀行の審議委員である須田美矢子氏は、京都市で講演しました。


現在の金融情勢については、企業業績の悪化で株価が不安定な地合いとなるなど予断を許す状況にないと厳しい認識を示しました。


今後の経済見通しについては、10-12月が非常に下振れたことと、1月の生産・輸出の数字がかなり悪く、氏自身としては今まで出している見通しが下振れる可能性が高いのではないかと思っていると厳しい見通しを示しました。


今後の金融政策については、ゼロ金利や量的緩和政策の導入について、家計の利子収入の減少や市場機能低下などの副作用が大きく、現時点では選択の範囲にないと消極的な姿勢を示しました。


今回、須田氏は、機動的と言いながらも、ある程度リスクが顕在化するのを確認しながら、対応するときには思い切って対応するということと述べたとのことで、市場は、予防的に機動的な金融政策を期待しているところ、須田氏は、事態が深刻化したら対応するという姿勢のようです。


今回の須田氏の講演内容に関する評価は様々と思いますが、、須田氏の認識は市場と同様としても、対策については、思ったより須田氏の考えは市場の期待と乖離しているような印象を受けました。他の審議委員の発言も含め、今後の日銀の金融政策の行方が見守られるところかと思います。



2009年3月4日水曜日

トヨタ金融子会社の融資要請と米国の金融市場安定化


報道によれば、3月3日、トヨタの金融子会社(トヨタファイナンシャルサービス)が、日本の政府系金融機関(国際協力銀行)に2000億円規模の融資を要請しているようです。


今回、要請している融資の調達通貨は米ドルとみられます。


昨年来、日系企業の間で、海外でのドル資金の調達が難しくなっていましたが、トヨタの信用力でもということか、あるいは邦銀の問題ではないかとの印象です。


米国の資本収支をみる限り、米国は、対外資産を売却し、自国に還流させており、対外的なドルの供給は、政府の通貨スワップに負うところが大きいようです。


仮に邦銀の与信提供力の問題があったとしても、今回のトヨタの融資要請の根幹には、米国の金融市場の不安定さが大きく影響していると推察します。


日系企業の国際展開には、海外での資金調達が伴い、一般に、調達資金は米ドルになることが多いところ、米国の金融市場の安定化の行方は、日系企業の活動にとっても重要であることを示唆したものと思います。


米国では、AIG、シティなどの金融機関の動向が話題になっていますが、今後、米国の金融安定化策の行方が見守られるところかと思います。



ECBトリシェ総裁は金融政策に言及しなかった模様だが、ECB金融政策に変化の可能性

3月3日(現地時間)、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は、すべての経済が厳しい状況にあるとの認識を示しました。


3月5日はECBの政策金利の引下げが確実視されていますが、トリシェ総裁は金融政策への言及はなかったようです。


最近、ECBの金融政策に関して、非伝統的な政策を含む選択肢を検討しているとの報道されています。


また、ECBの政策委員会メンバーの中で、ゼロ金利政策を提唱している模様であり、市場では、従来、ゼロ金利政策に消極的とみられてきたECBの金融政策は、量的緩和に進む可能性があるとの見方が出されています。


市場では、今後、ECBの金融政策は、追い込まれる形で転換していくのではないかとの見方があるようですが、景気動向も併せ、その推移が見守られるところかと思います。



2009年3月3日火曜日

気になる米国貯蓄率の行方

3月2日(現地時間)に公表された1月の米国個人消費支出はプラス0.6%となりました。


これは、7カ月ぶりのプラスでした。


米国の個人貯蓄率は5%となりました。


これは、ほぼ14年ぶりの高水準となりました。


先日(2/24現地時間)公表された米国のコンファレンスボード消費者信頼感指数は25.0と、過去最低の水準になりました。


また、先日(2/27現地時間)公表されたミシガン大学消費者期待指数は50.5と、2008年6月以来の低水準となりました。


こうした指標からすると、米国の消費マインドは冷え込んでおり、先行きに対する不安から貯蓄を増加させているように見えます。


市場では、一斉に貯蓄に向かうことを懸念する見方もあるようですが、今回の貯蓄率上昇が、急速な景気悪化に対応した一時的な現象とすれば、懸念を強めるまでもないのではないかと思います。


ただ、サブプライムローン問題に端を発した今回の景気後退が、米国消費者の消費に対する考えを変え、米国の長期的な個人消費の動向が変化するならば、景気回復のシナリオやスピードに影響を与えると考えられますので、慎重に、今後の推移を見極めることが重要かと思います。





ISM製造業景気指数は若干改善したが、底打ちを示すものか

3月2日(現地時間)に公表された2月のISM製造業景気指数は35.8となりました。


依然、厳しい指数ではありますが、大方の事前の市場予想を上回り、1月の35.6から若干改善しました。


一般に、ISM製造業景気指数は、景気回復の直前に底を打つ傾向があります。


現在進む自動車メーカーへの支援問題や米国金融動向などを勘案すると、今回の若干改善は、市場では、底打ちを示すものではないとの見方にあると言えます。


市場では、今後、ISM製造業景気指数は、さらに厳しい水準を示す可能性が高いとの見方がある中、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年3月2日月曜日

3/1に開催されたEU緊急経済・金融首脳会議の不安と期待

3月1日(現地時間)、EUは、ブリュッセルで緊急の経済・金融首脳会議を開催しました。


今回の会議では、EU各国が保護主義に反対するとの原則で一致しました。


ただ、EU域内の自動車産業にEUが支援していく、グローバリゼーションの悪影響を低減するような対応を進めるといった合意も行われたようです。


また、未確認情報ながら、フランスのサルコジ大統領は、フランス国内の雇用はフランス人に、といった発言もあったようです。


内容を精査したものではありませんが、海外メディアの報道を見る限り、保護主義反対の意味は何なのか、保護主義反対の足並みがどの程度揃うのか、やや不安が残るような気もします。


しかし、報道によれば、ハンガリーのジュルチャーニ首相は最大1900億ユーロの基金設置を柱とする東欧向け金融安定化対策を提案したことを明らかにしたようです。


EUの金融機関の東欧向けエクスポージャーは高く、東欧向け不良資産を金融機関から切り離していくことは、EUの金融の安定化を進めるために有効と考えられるところ、期待をこめて今後の推移が見守られるところかと思います。



厳しい内容となった地域経済動向、中小企業景況調査は適切な景気対策への期待を表現

先日(2月26日)に内閣府から公表された地域経済動向によれば、2008年後半の各地域における生産動向を、地域別の鉱工業生産指数の変化率でみると、2008年10~12月期は、全ての地域で大きく落ち込み、大半の地域で10%を超える極めて大幅な減少となりました。


業種別にみると、関東、東海、中国、九州では輸送機械が、東北、北陸では電子部品・デバイスが、各々減少に大きく寄与していました。


また、先日(2月26日)、日本政策金融公庫政策研究所から、中小企業景況調査が公表されました。これは、3大都市圏の同公庫取引先を対象にしたアンケート調査となっています。


同調査によれば、中小企業の売上げ見通し(DI)は、マイナス46.5からマイナス46.9へ低下し、8ヵ月連続のマイナスとなりました。
(※)DI=今月以降3か月間、過去3か月の実績比、「増加」-「減少」、季節調整値。


最終需要分野別に見ると、建設関連および乗用車関連のマイナス幅が縮小したものの、食生活関連がマイナスに転じ、設備投資関連、家電関連および衣生活関連のマイナス幅が拡大しました。


この中小企業景況調査のみに着目すると、関東、東海、中国、九州の地域経済の景況感に影響した輸送機械の生産の減少は、今後、落ち着きを見せる可能性があるものの、輸送機械以外の分野の市場落ち込みが続く可能性があるように見えます。


地域経済動向、中小企業景況調査の何れも、急速に進む景気後退に対し、景気対策への期待を表しているように思います。


落ち込みが続く家電に関しては、地デジ対応のTVに対する補助金の付与が与党で検討されているとの報道もあるようです。


政局も大切かと思いますが、適切な景気対策の早期の実行が期待されるところと思います。


中小企業景況調査による売上見通しDI


 売上見通しDI
2008/9-7.8
10-17.2
11-26.7
12-34.7
2009/1-46.5
2-46.9



2009年3月1日日曜日

米政府保有のシティ優先株の普通株転換に対する評価と期待

2月27日(現地時間)、米財務省は保有するシティの優先株のうち、最大250億ドル分を普通株に転換すると発表しました。


米政府のほか、シンガポール政府投資公社(GIC)、サウジアラビアのアルワリード王子なども優先株の普通株転換に応じる見通しであり、市場では、既存の普通株の株主価値は、今後、希薄化により、4分の1程度に低下する可能性が指摘されています。


[格付け]

・同日、ムーディーズはシティの格付けを従来のA2から1ノッチ引き下げA3としました。

・同日、S&Pはシティの格付けをAに据え置きましたが、見通しはネガティブに変更しました。


[株価]


終値
2008/8末18.99
2008/9末20.51
2008/10末13.65
2008/11末8.29
2008/12末6.71
年初(1/2)7.14
2009/1末3.55
2009/2/262.46
2009/2/271.50


株価の推移からすると、リーマンショック後の2008/9末時点の株価は2008/8末より小幅ながら上昇していました。


しかし、2008/10末は2008/9末に比べ大きく株価は下落しています。

当時、シティに何があったのでしょうか。

2008/10/3(現地時間)、米西海岸最大手銀のウェルズ・ファーゴは、米金融大手シティグループに銀行事業の売却で合意したばかりだった米銀大手ワコビアを151億ドルで買収すると発表しました。

ワコビアは、米金融大手シティグループへの銀行事業の売却を白紙化し、身売り相手を鞍替えしたのでした。

これにより、シティは、預金量で、3位のJPモルガンチェースから大きく引き離された4位に転落してしまいました。

シティが、米国メガバンクグループから脱落した瞬間でした。


[不良資産]


今年1月16日(現地時間)、シティが発表した2008年第4四半期決算は、82億9千万ドルの純損失となりました。
第4四半期決算の評価損とクレジット関連の損失は283億ドルでした。

シティの赤字は5四半期連続でした。


振り返れば、およそ1年前、市場では、シティに対し、サブプライムローンやCDO(債務担保証券)へのエクスポージャーが高く、相対的に資本基盤が弱い点が指摘されていました。


当時、シティにはパンディットCEOが着任したばかりでした。


2007年第4四半期決算は、サブプライム関連で181億ドルの評価損を計上したことを主要な要因として、1998年の合併発足以来、四半期として初めて赤字に転落しました。


振り返ってみれば、最近1年間はシティの不良資産の評価損は拡大する一方でした。


[イメージ]


シティは、グループの規模縮小に向かっており、かつてのシティのイメージはさらに大きく変化していくことは確実な情勢です。


歴史にifは禁物ですが、もし、シティが不良資産の処理を積極的に進めていたら、もし、ワコビアの買収が成功していたら、もし、パンディットCEOが大胆な戦略再構築を進めていたら、結果は違ったのかもしれません。


2月25日(現地時間)、FRBのバーナンキ議長は下院金融委員会で、国有化とは、政府が銀行を管理下に置き、株主を一掃し、経営を開始することだが、金融当局にはそのような計画はない、と証言しました。


市場が期待するのは、金融機関から問題となる不良資産を切り離し、不良資産の評価・処分を市場メカニズムを活用しながら進めるというものですが、今回の米政府による普通株転換に対しては、市場メカニズムを活用するというよりも市場メカニズムから隔離するというイメージとの市場の見方があります。


今後の米国の金融安定化策の行方が注視されるところかと思いますが、併せて、シティを他山の石として、多くの金融機関で適切な経営が進められることを期待しつつ、今後の推移を見守りたいと思います。



週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


2(月曜)

国内:毎月勤労統計 1月

海外:米 個人所得・消費支出 1月

      ISM製造業景気指数 2月

    EU 消費者物価指数 2月


3(火曜)

海外:EU トリシェECB総裁講演

    米 自動車販売台数 2月


4(水曜)

国内:須田日銀審議委員講演

海外:米 地区連銀経済報告


5(木曜)

国内:法人企業統計10-12月期

海外:EU GDP10-12月期

       ECB政策金利公表


6(金曜)

海外:米 雇用統計 2月

       消費者信用残高 1月



来週は、ECBの政策金利公表や米雇用統計などの重要なマクロ指標が公表されるとともに、先ごろの日銀金融政策決定会合で社債の買い取り検討に反対票を投じるなど、追加対策に消極的とみられる日銀の須田審議委員の講演があり、須田氏の金融政策に対する認識が注目されるところかと思います。