2月27日(現地時間)、米財務省は保有するシティの優先株のうち、最大250億ドル分を普通株に転換すると発表しました。
米政府のほか、シンガポール政府投資公社(GIC)、サウジアラビアのアルワリード王子なども優先株の普通株転換に応じる見通しであり、市場では、既存の普通株の株主価値は、今後、希薄化により、4分の1程度に低下する可能性が指摘されています。
[格付け]
・同日、ムーディーズはシティの格付けを従来のA2から1ノッチ引き下げA3としました。
・同日、S&Pはシティの格付けをAに据え置きましたが、見通しはネガティブに変更しました。
[株価]
| 終値 |
2008/8末 | 18.99 |
2008/9末 | 20.51 |
2008/10末 | 13.65 |
2008/11末 | 8.29 |
2008/12末 | 6.71 |
年初(1/2) | 7.14 |
2009/1末 | 3.55 |
2009/2/26 | 2.46 |
2009/2/27 | 1.50 |
株価の推移からすると、リーマンショック後の2008/9末時点の株価は2008/8末より小幅ながら上昇していました。
しかし、2008/10末は2008/9末に比べ大きく株価は下落しています。
当時、シティに何があったのでしょうか。
2008/10/3(現地時間)、米西海岸最大手銀のウェルズ・ファーゴは、米金融大手シティグループに銀行事業の売却で合意したばかりだった米銀大手ワコビアを151億ドルで買収すると発表しました。
ワコビアは、米金融大手シティグループへの銀行事業の売却を白紙化し、身売り相手を鞍替えしたのでした。
これにより、シティは、預金量で、3位のJPモルガンチェースから大きく引き離された4位に転落してしまいました。
シティが、米国メガバンクグループから脱落した瞬間でした。
[不良資産]
今年1月16日(現地時間)、シティが発表した2008年第4四半期決算は、82億9千万ドルの純損失となりました。
第4四半期決算の評価損とクレジット関連の損失は283億ドルでした。
シティの赤字は5四半期連続でした。
振り返れば、およそ1年前、市場では、シティに対し、サブプライムローンやCDO(債務担保証券)へのエクスポージャーが高く、相対的に資本基盤が弱い点が指摘されていました。
当時、シティにはパンディットCEOが着任したばかりでした。
2007年第4四半期決算は、サブプライム関連で181億ドルの評価損を計上したことを主要な要因として、1998年の合併発足以来、四半期として初めて赤字に転落しました。
振り返ってみれば、最近1年間はシティの不良資産の評価損は拡大する一方でした。
[イメージ]
シティは、グループの規模縮小に向かっており、かつてのシティのイメージはさらに大きく変化していくことは確実な情勢です。
歴史にifは禁物ですが、もし、シティが不良資産の処理を積極的に進めていたら、もし、ワコビアの買収が成功していたら、もし、パンディットCEOが大胆な戦略再構築を進めていたら、結果は違ったのかもしれません。
2月25日(現地時間)、FRBのバーナンキ議長は下院金融委員会で、国有化とは、政府が銀行を管理下に置き、株主を一掃し、経営を開始することだが、金融当局にはそのような計画はない、と証言しました。
市場が期待するのは、金融機関から問題となる不良資産を切り離し、不良資産の評価・処分を市場メカニズムを活用しながら進めるというものですが、今回の米政府による普通株転換に対しては、市場メカニズムを活用するというよりも市場メカニズムから隔離するというイメージとの市場の見方があります。
今後の米国の金融安定化策の行方が注視されるところかと思いますが、併せて、シティを他山の石として、多くの金融機関で適切な経営が進められることを期待しつつ、今後の推移を見守りたいと思います。