2009年2月28日土曜日

2009年1月の鉱工業生産、大幅減産に関わらず依然厳しい在庫に関する指標


2月27日に経済産業省が公表した2009年1月の鉱工業生産指数(速報値、季節調整済)は、76.0(前月比マイナス10.0%)となりました。


過去最大のマイナス幅となりましたが、これは事前の大方の市場予想と同様の水準であったと言えます。


在庫指数は108.3(前月比マイナス2.0%)となりましたが、在庫率は150.9(前月比プラス11.6%)となりました。


生産の低下を受けて、在庫の絶対水準は低下したものの、売上低下はこれを上回るペースで進んだため、在庫の調整が追いつかない状況にあるようです。


同時に公表された製造工業生産予測調査によると、2月は前月比マイナス8.3%、3月は同プラス2.8%となりました。


3月は生産が上昇に転じるとの調査結果のみをみると、出荷が持ち直せば、在庫の調整が進み、生産へもプラス効果が出やすくなると考えられるとの期待もありますが、1月の実現率はマイナス5.1%、2月の予測修正率はマイナス8.7%となっています。


一般に、景気後退期は、予測修正率はマイナスで推移する傾向があるところ、今後の推移が見守られるところかと思います。



米国第4四半期GDP改定値とミシガン大消費者期待指数

2月27日(現地時間)、米商務省が発表した第4四半期のGDP改定値は、年率換算で前期比マイナス6.2%と、速報値のマイナス3.8%から下方修正されました。


2月27日(現地時間)、公表されたミシガン大学米消費者信頼感指数(確報値)は56.3となりました。
これは、2008年11月以来の低水準でした。


 米ミシガン大消費者信頼感指数
2009/256.3
161.2
2008/1260.1
1155.3
1057.6
970.3
863
761.2
656.4
559.8
462.6


2月27日(現地時間)、公表されたミシガン大学米消費者期待指数(確報値)は50.5となりました。
これは、2008年6月以来の低水準でした。


 米ミシガン大消費者期待指数
2009/250.5
157.8
2008/1254
1153.9
1057
967.2
857.9
753.5
649.2
551.1
453.3


ミシガン大米消費者期待指数は、景気回復の前に上昇する傾向がありますが、消費者信頼感指数からすると、米国の足元の消費マインドは冷え込んでおり、景気回復までには程遠い状況にあると言えます。


今回公表された米国GDPは、厳しい数値となりましたが、この傾向はしばらく続く可能性が高いと思います。


気にかかるのは、個人消費支出価格指数はマイナス5%と、過去最大の低下率を記録し、食品とエネルギーを除くコアPCE価格指数もプラス0.8%上昇と、小幅な伸びにとどまったことです。


デフレ入りの懸念が強まったようにも見えます。


今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年2月27日金曜日

千代田書店閉店

経済・経営・金融の専門書店として知られる千代田書店茅場町店(東京)が明日、2月末で閉店するようです。


ネット上でも各所で取り上げられたようですが、自分は、同店で本を買った際、レジカウンターの後ろの柱に貼ってあった掲示で知りました。


証券関係者にとって、千代田書店というと、証券・金融関係の書籍が揃った書店として広く知られた存在です。


同社の外商部門は、取次会社・明文図書の子会社(株)ビジネスブックスが千代田書店のスタッフを雇用して3月1日から引き継ぐことになったようです。


ちなみに、明文図書のwebサイトによれば、同社は法律・経済・経営・ビジネス書の普及をすすめる、唯一の専門取次のようです。


なお、千代田書店スタッフによれば、証券関係の専門書は、店舗規模を縮小して現在とは別の場所で継続するかも知れないということだそうです。


千代田書店のwebサイトをみると、創業は、大正4年(1915年)9月20日だったようです。


閉店日は、明日、平成21年2月28日(土曜)の午後3時とか、閉店の理由は定かではありませんが、兜町の名物が消えることに少し感慨を覚えた次第です。


さて、現実に戻れば、2月26日(現地時間)、米国オバマ大統領は予算教書提出に際し、従来の共和党の政策を批判し、公的支援追加、海外のオイルに依存しないエネルギー・環境政策の推進、コンピュータを子供に教育するなどを表明しました。


財政赤字は拡大する見込みですが、現在はオバマ政権への期待が上回っていると言えます。


景気対策の効果までにはまだ時間がかかると思われ、当面は、金融市場の安定化策の行方を見守りたいと思います。

1982年10月以来最悪となった米国の新規失業保険申請件数、今後の失業率の悪化を示唆

2月26日(現地時間)、米労働省が発表した新規失業保険週間申請件数(2月21日終了週)は、66万7千件となりました。

これは、1982年10月以来で最悪(※件数が高水準)となりました。


事前の市場の大方の予想を大きく上回るものと言えます。


新規失業保険週間申請件数は、失業率の先行指標であり、先行きの失業率の悪化を示唆していると言えます。


米国の失業率は2009年1月で7.6%ですが、2月18日(現地時間)、FRB(米連邦準備制度理事会)が公表した2009年1月末時点の経済見通しでは、2009年10-12月期の米平均失業率は8.5~8.8%に悪化すると予測しています。


市場では、米国の失業率は9%を超えるとの見方が出されています。


ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、米金融監督当局の金融機関に対するストレステストの想定条件は、2010年の失業率が10.3%、ケース・シラー住宅価格指数が09年は前年比マイナス22%、10年は同マイナス7%、GDP成長率は09年がマイナス3.3%、10年がマイナス0.5%としているようです。


失業率は景気回復の遅行指標と言えますが、一般に、失業率は一旦大きく悪化すると、なかなか改善が難しく、米国の政策効果に期待しつつ、指標を長い目で注意深く見ていきたいと思います。



2009年2月26日木曜日

賃金に不満なバングラディッシュ兵士の反乱と景気後退への対策への期待

海外メディアによれば、バングラディッシュで、賃金に関する不満から、政府軍兵士の一部が、首都ダッカの商店街を制圧していたところ、2月25日(現地時間)、政府と合意に達したようです。


現時点では、合意内容は不明なようです。


TV映像で見ると、首都ダッカでは、住宅地で銃や大砲の音が聞こえ、戦車、ヘリコプターが街に出現していました。


バングラディッシュの一般の人々の間に恐怖を感じさせたようです。


しばらく前に、イギリスで山猫ストが頻発しているとの報道に接し、景気後退による雇用・賃金に関する不満の強さの広がりの表れと個人的にに注目していたところでしたが、今回の報道から、賃金に関する不満から兵士が反乱することもあるのかと驚きました。


2月24日、25日(現地時間)、FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長は、下院金融委員会で金融政策について証言を行い、米国政府の適切な金融安定化策が講じられなければ米景気後退が2010年まで続く可能性があると警告しました。


市場の思いを代弁したとの思いでTV放送でバーナンキ議長が証言する姿を見ていました。


先進国で賃金に対する不満から兵士が反乱するという事態を想定することは難しいと思いますが、政府が適切な対策を講じないと、市場や社会に大きなストレスが蓄積し、何かの拍子にどんな形で爆発するかも知れません。


そうならないことを願いつつ、当面は、4月開催のG20に向け、各国の政策などの推移を見守りたいと思います。



薄日が差しかけたと思っていた米国中古住宅市場は厳しさを増した状況にある模様

2月25日(現地時間)、全米不動産業者協会(NAR)が発表した1月の中古住宅販売戸数は前月比マイナス5.3%減、年率449万戸となりました。


これは、およそ11年ぶりの低い水準でした。


事前の大方の市場予想を大きく下回るものでした。


2008年12月の中古住宅販売戸数は予想外に増加し、価格下落が続いていた住宅市場が最悪期を脱したのではないかとの見方も出てきたところ、2009年1月の発表が注目されていたところでした。


2月24日(同)に発表されたケース・シラー住宅価格指数(20都市)は、前月比でマイナス2.5%、前年比でマイナス18.5%と大幅な落ち込みを記録しました。


大きく価格が下落を示す中、需要が回復しない状況にあると言えます。


販売在庫はマイナス2.7%と在庫の絶対数は減少しましたが、在庫率は、現在の販売ペースでは9.6カ月分に拡大しました。


1月下旬の時点では、薄日が差した可能性があると思われた米国中古住宅市場は、厳しさを増した状況を再確認したといったところかと思います。


個人的には、1カ月ごとの指標の上げ下げで一喜一憂するのは適当とは言えず、中期的にその推移を見守るべきと改めて感じた次第です。



2009年2月25日水曜日

南アフリカはマイナス成長となった模様

海外メディアによれば、南アフリカの2008年10-12期の経済成長率はマイナス1.8%となった模様です。


2008年、通年では、プラス3.0%と、プラス成長になったようです。


2007年の南アフリカの経済成長率はプラス4.8%(世界銀行)でした。


南アフリカは、金、ダイヤモンド、希少金属など、豊富な鉱物資源を有しており、同国のGDPは、サブサハラ・アフリカ諸国(※)のGDP総額の約4割を占めていて、アフリカ経済の牽引役と言えます。

※サハラ砂漠以南の地域の48カ国を指し、約7億4400万人が暮らしている。1990年代には、サブサハラの人口の44%が1日あたり1ドル未満での生活という貧困状態にあった。しかし、サブサハラはここ10年近く成長傾向にあり、経済成長が貧困削減へとつながっている。(出所)世界銀行東京事務所


南アフリカのマニュエル財務大臣は、2009年の経済成長率は、1998年以降最低の1.2%にまで落ち込むと予想しているが、2010年には、世界経済の回復を受け、成長が回復することを見込んでいる旨を明らかにしました。


サブサハラ・アフリカ地域は、石油価格の高騰に供給側として堅調に反応した数少ない地域のひとつで、米国やユーロ圏での需要落ち込みにもかかわらず歴史的な高水準で経済成長が維持できるとの見方もあります。


市場では、同地域内の内需は底堅いと見られているようですが、石油価格が大幅に下落した状況がどのように影響していくのか、今後、サブサハラ・アフリカ地域の経済の行方が見守られるところかと思います。



米国住宅価格は過去最大の落ち込み

2月24日(現地時間)、発表された2008年12月のケース・シラー住宅価格指数(20都市)は、前月比でマイナス2.5%、前年比でマイナス18.5%となりました。10都市では、前月比マイナス2.3%、前年比ではマイナス19.2%となりました。


2月3日(同)、全米不動産業者協会(NAR)が発表した2008年12月の住宅販売保留指数は、前月比プラス6.3%上昇と、2008年8月以来初めて上昇に転じ、買い手が市場に戻りつつあるとみられました。


しかし、差し押さえ物件の増加が主因であり、実態を示していない可能性もあるとの見方もありました。


今回のケース・シラー住宅価格指数が前年比で過去最大の落ち込みなったことからすると、米国の住宅価格は依然として下降局面にあると言えます。


先般公表されたオバマ政権の住宅対策は内外から高い評価を受けていますが、市場には、住宅価格はさらに大幅に下落する可能性があるとの見方も出されているようです。


今後の米国住宅市場の推移を見守りたいと思います。



2009年2月24日火曜日

SFCGの破綻に思うこと

2月23日、SFCG(旧、商工ファンド)が、民事再生法の適用を申請しました。


SFCGが破綻した直接的な要因は、資金繰りにあったようです。


大手信用情報機関、帝国データバンクの調べによれば、負債総額は3380億の内、銀行借入等の間接金融が3割で、主要取引行6行とは1500億円のコミットメントラインを締結していたものの、その大半が昨年9月に破綻したリーマン・ブラザーズ証券など外資系金融機関であったようです。


SFCGは格付け機関(R&I)からCPでa-3の格付けを取得していましたが、同日、格付けはcに格下げしました。


R&Iによれば、a-3は、短期債務履行の確実性は当面問題ないが、環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。cは、最低位の格付けで、債務不履行に陥っているか、またはその懸念が極めて強い。というものです。


一般に、ノンバンクの信用力評価においては、資金調達の安定性が重視されるところ、同社が昨年10月に提出した有価証券報告書によると、主な借入先には外資系金融機関が中心で、リーマンブラザーズや、シティバンク、スタンダードチャータード銀行などの名前が並ぶ状況でした。


何故、格付け機関が破綻が報じられるまでa-3の格付けを維持したのか、やや疑問を感じないでもありません。

同日、ムーディーズは、株式会社SFCGグループがオリジネートした不動産担保ローンプールを裏付けとして発行された信託受益権を格下げ方向で見直しを行うことを表明しました。


先日、ドイツで開催された欧州首脳の会合では、ヘッジファンドや格付会社の監督など規制を強化していく姿勢を打ち出しました。

SFCGの破綻は、改めて格付け機関に関する問題提起をしたようにも思えますが、4月開催予定のG20に向け、今後の推移を見守りたいと思います。



米財務省、FRBなど金融監督当局は、共同声明を発表

2月23日(現地時間)、米財務省、FRBなど金融監督当局は、共同声明を発表し、必要に応じて金融機関に追加資本を注入すると確約しました。


今週から、不良資産を確定するストレステストが行われる予定です。


公的資本が注入される場合、政府は普通株に強制転換される優先株を取得するとのことですが、米国政府がシティの普通株を最大40%取得するのではないかとの報道がされるなど、米国金融機関に注目が集まっています。


個人的には、本ブログで何度か記した通り、かねて米国のバッドバンク構想に期待していたのですが、米国でのバッドバンク構想の実現可能性は相当低くなったと思います。


仮に、資本注入したとしても、大幅な景気後退下にあっては、金融機関の資産に占める不良資産の割合は増加せざるを得ないと考えられると思います。


市場では、今のところ、詳細が不明であるなどから、今回の共同声明を積極的に評価する向きは多くないようです。


今後の行方が見守られるところかと思います。



2009年2月23日月曜日

中国の炭鉱事故に思うこと -気になる中国の基盤の安定性-


報道によれば、2月22日(現地時間)、中国の山西省の炭鉱で事故が起き、作業員74人が死亡(報道により72人死亡など死亡人数ははっきりしません)したようです。


まだ、事故は続いており、炭鉱内には多数の作業員が閉じこめられている模様です。


今回事故の起きた山西省は中国にとって石炭の主要産地であり、この炭鉱は過去10年間事故が発生せず安全とされていたものでした。


中国の発電は、現状、石炭火力による割合が高い状況にあります。


昨年1月、中国では、広範囲の雪害で発電用石炭の供給が困難になり、電力不足から、中国13の省や自治区で、電力の使用制限の措置が取られました。


今回の炭鉱事故は、今のところ昨年の雪害と同様の影響を及ぼすものと考えられてはいないようです。


以前から、中国の炭鉱の危険さは指摘されており、昨年の中国の炭鉱での死者は3千人に上るようです。


ただ、リスクが伴うということで、炭鉱労働者の給料は高いと言われています。


国際的な経済後退の中、中国の多額の公共投資と内需拡大が期待されていますが、今回の炭鉱事故をみると、その基盤は必ずしも安定したものではないのかも知れないと感じた次第です。


今後、中国の内需拡大の推移を見守りたいと思います。



金融サミットを控えヨーロッパ首脳会議がベルリンで開催

2月22日(現地時間)、ヨーロッパの首脳会議がドイツのベルリンで開かれました。


会議の目的は、4月2日に英国のロンドンで開かれる金融サミットを控え、ヨーロッパの足並みを揃えることにありました。


報道によれば、今回の首脳会議で、金融市場とヘッジファンドの規制強化などで合意したようです。


ドイツのメルケル首相は、会見で、ヨーロッパの団結を訴えました。


英国のブラウン首相は、会見で、今は試練の時だと訴えました。


今回、ヨーロッパは、金融サミットに向け総論では足並みを揃えるという点では成功したと言えます。


しかし、金融危機は切迫した問題であるところ、規制強化ということになれば、その検討には少なくとも数ヶ月を要することや、具体的に適切な規制が構築できるのか、その内容は現時点でははっきりしていません。


ヨーロッパの中では、イメージとして、ドイツが金融市場の規制強化をすべきだと強く主張しているものの、英国などは長期的な金融市場に対する規制の考え方がドイツと一致しているようには思えません。


今回のヨーロッパの首脳会議のヨーロッパが団結した意義は重要としても、規制強化に踏み込むとして、具体論ではヨーロッパ内だけみても、相当の紆余曲折が想定されるのではないか、中身にはやや疑問を感じるというのが現時点の印象です。


今後の推移を見守りたいと思います。



2009年2月22日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


23(月曜)

国内:全国スーパー売上高 1月

海外:EU ECBトリシェ総裁講演

    米 アトランタ連銀総裁講演

       ダラス連銀総裁講演


24(火曜)

国内:日銀 金融政策決定会合議事要旨公表

    企業向けサービス価格 1月

海外:米 日米首脳会談

      ケースシラー住宅価格指数 12月

      消費者信頼感指数 2月

      FRBバーナンキ議長議会証言


25(水曜)

国内:貿易統計 1月

海外:米 中古住宅販売 1月


26(木曜)

国内:地域経済動向

海外:米 新築住宅販売 1月

      新規失業保険申請件数


27(金曜)

国内:消費者物価指数

    失業率・有効求人倍率 1月

    鉱工業生産指数 1月

    商業販売統計 1月

海外:米 2008年10-12期GDP改定値

    EU 消費者物価指数 1月


週明け後、24日にオバマ米大統領と初の日米首脳会談がワシントンで行われます。国内関係では貿易収支、鉱工業生産、海外関係では米住宅関連指標などのマクロ経済指標が注目されるところかと思います。



GMグループのサーブの経営破綻の示唆するものは何か

GMグループのスウェーデン自動車メーカー、サーブが経営破綻しました。


サーブの破綻は何を示唆するのでしょうか。


サーブの破綻前にGMとサーブは、スウェーデン政府に支援を求めていましたが、GMグループはスウェーデン以外の関係する各国政府にも支援を求めているようです。


現在、GMは米国政府に支援を求め、提出した再建計画が検討されています。


報道によれば、米国政府の作業部会での初会合で、GMとクライスラーは徹底したリストラが必要との見解を示したようです。


ホワイトハウスは、作業部会のトップである、ガイトナー財務長官とサマーズNEC委員長は、国内自動車業界に影響を及ぼす問題の緊急性と、長期的存続の実現に向けた根本的な経営再編の必要性を強調したとの声明を公表したようです。


これからすると、米国政府はGMを支援するシナリオを念頭にしているとみられますが、現時点では大規模なリストラは避けられない情勢にあります。


GMが支援を求めている米国以外の各国政府は、自国の産業や雇用への影響を見極めた上で支援の可否を決定すると思いますが、世界的な景気後退で厳しい財政にある中、各国にとって外国資本の企業への支援決定へのハードルは低くないと推測します。


仮に、米国以外の政府がGMグループの自動車メーカーを支援するとしても、米国同様に経営合理化は避けられず、当面、GMは規模縮小に向かのではないかと思います。


米国の資本収支によれば、米国は、海外資産を売却して自国に回帰させる動きにあります。


米国の国際収支統計によれば、米国の対外資産は、2008年第2四半期に1026億ドル減少し、同第3四半期に95億ドル減少しました。


2008年第2四半期の減少幅は過去最大で、2期連続で米国の対外資産が減少したのは、1960年以来初めてのことでした。


GMの規模縮小は、米国の国際的な資産規模縮小を象徴した動きかも知れないと感じる次第です。



2009年2月21日土曜日

大和生命の支援先内定の報道

報道によれば、昨年10月に経営破綻した大和生命保険の支援先企業は米保険大手プルデンシャルに内定したようです。


今後、2週間以内に契約条件を協議した上で最終決定の見通しのようです。


米プルデンシャルは日本で、プルデンシャル生命保険とジブラルタ生命保険を展開しています。


プルデンシャル生命保険


【総資産】 2兆1,619億円(2007年度末)
【保有契約高】 25兆9,098億円(2007年度末)


ジブラルタ生命保険

【総資産】 3兆6,139億円(2008年12月末現在)
【保有契約高】 20兆3,578億円(2008年12月末現在)


大和生命

【総資産】2,831億円(平成19年度)
【保有契約高】 1兆746億円(平成19年度)


上記の数値は各社のHP公表データから抜き出したものです。


報道によれば、日本の日興コーディアル証券のM&Aの可能性が指摘されるなど、今回の金融市場の混乱は、金融の再編を進める可能性が高いと思います。


日本の地方銀行の動向なども注目されるところではないかと思います。



米国CPIとPPIはデフレ入口のような印象、今後デフレ入りか回避か

2月20日(現地時間)、米労働省が発表した1月のCPI(消費者物価指数、総合、季節調整済)は、前月比プラス0.3%となりました。

食品及びエネルギーを除く指数は、前月比プラス0.2%でした。


米国CPIは、昨年9月以来のプラスとなりました。


しかし、前年同月比でみると、1月のCPI(総合)は変わらず、1955年8月以降で最も低水準となりました。

2月19日(同)、米労働省が発表した1月のPPI(生産者物価指数、総合、季節調整済)は、前月比プラス0.8%となりました。
食品及びエネルギーを除く指数は、前月比プラス0.4%でした。


米国PPIは、昨年7月以来のプラスとなりました。


しかし、前年同月比でみると、1月のPPI(総合)は、マイナス1.0%と、2006年10月以来最大の低下となりました。


今回のCPIとPPIを見る限り、米国は、デフレの入口に立っていて、今後、デフレ入りを回避できるかどうか、微妙なところにあるように思えます。


米国の景気対策の効果と、金融安定化策の重要さを再確認した次第です。


海外メディアによれば、2月18日(現地時間)、バーナンキFRB議長は、長期的なインフレ予測値を明らかにしました。


FRBのインフレ目標値の公表と併せ、今後の推移が注目されるところかと思います。




前月比,%
PPI CPI 
 総合、季節調整済食品・エネルギー除く、季節調整済総合、季節調整済食品・エネルギー除く、季節調整済
2008/71.30.60.70.3
8-0.50.50.00.2
9-0.10.40.00.1
10-2.70.4-0.80.0
11-2.50.1-1.70.1
12-1.90.2-0.80.0
2009/10.80.40.30.2
(出所)米国労働統計局



2009年2月20日金曜日

米国金融機関を経営する富豪による詐欺の疑い

最近、米国の金融機関を経営する富豪の詐欺の嫌疑が話題になっています。


その富豪とは、アレン・スタンフォード氏で、テキサス州ヒューストンを本部とするスタンフォード・ファイナンシャル・グループを経営しています。


報道によれば、同グループのスタンフォード・インターナショナル銀行は、世界131カ国に3万人の顧客を抱え、総資産は85億ドル、グループ全体の運用資産は500億ドルに上るようです。


2月17日(現地時間)、SEC(米証券取引委員会)は、アレン・スタンフォード氏とグループ企業を巨額詐欺の疑いでダラス連邦地裁に提訴しました。


高利回りと偽って金融商品を不正に販売していた疑いが持たれています。


詐欺的な金融商品の販売は、よくある話ですが、今回、報道によれば、問題となった金融商品は、80億ドル(約7500億円)に上ること、米国だけでなく、国際的に行っていた模様であることから注目した次第です。


スタンフォード・インターナショナル銀行には預金を引き出そうとする人が詰め掛けているとのTV報道がありましたが、預金は全額保護されているようです。


アレン・スタンフォード氏は容疑を否認した模様ですが、当局は行方をつかめていないようであり、詳細は不明ですが、影響は世界に及ぶ可能性が高く、その推移が見守られるところかと思います。



日本銀行が企業の資金繰り支援強化を決定

2月19日、日本銀行は、金融政策決定会合で、企業の資金繰り支援強化を決定し、社債やCP(コマーシャルペーパー)等を担保に金融機関に年0.1%の固定金利で資金を供給する制度を9月末まで半年延長するとしました。


政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は、0.1%前後に据え置きました。


対象となるのは、
①償還までの残存期間が1年以内
②シングルA格以上
です。


市場では、BBB格以上を対象にすることを期待する見方がありましたが、今回の決定はA格以上となりました。


2月16日に内閣府が公表した2008年10-12月のGDP速報値によれば年率換算で前期比マイナス12.7%と、石油危機直後以来34年ぶりの落ち込みを示す中、日本銀行の対応は慎重過ぎ、遅すぎるのではないかと感じないでもありません。


上場会社の中でもA格以上を取得可能なのはごく一部の優良企業に限られるところ、今後、支援の一層の強化を期待しつつ、今後の推移を見守りたいと思います。



2009年2月19日木曜日

米国の1月の鉱工業生産は前月比低下

2月18日(現地時間)、FRB(米連邦準備制度理事会)が公表した1月米鉱工業生産指数は前月比1.8%低下しました。


2009年1月の自動車生産台数は年率換算390万台と12月の同661万台からマイナス41%と、1967年以来で最低となりました。


2月10日(同)、米国商務省が公表した2008年12月の売上高在庫比率(卸売、季節調整済、※)は、1.27ヶ月と、11月の1.24ヶ月から上昇しました。
※現在の販売ペースで在庫清算にかかる期間を示す指標


これは、2002年3月以来の高水準となりました。

米国では、大きく生産が落ち込む中で、売上減も進む状況にあり、在庫率からみた在庫水準は上昇が続いています。


日経新聞記事によれば、トヨタは、4月までに在庫を適正水準に圧縮した上で、5月の国内生産台数を、2―4月の月平均台数に比べ約3割多い20万台規模に引き上げる方針とのことです。


今後、トヨタの在庫は予定通りの推移を辿るのか、また、米国の生産、在庫はどうなるのか、その推移が見守られるところかと思います。


 米国売上高在庫比率米国鉱工業生産
 (卸売、季節調整済)(総合、季節調整済)
2008年8月1.10109.8
2008年9月1.12105.3
2008年10月1.16107.0
2008年11月1.24105.7
2008年12月1.27103.2
2009年1月 101.3


(出所)米国商務省、FRB



米国自動車メーカーが再建計画を提出

2月17日(現地時間)、米国の自動車メーカー2社(GMとクライスラー)は、米政府に経営再建計画を提出しました。


2社合計で約220億ドルの追加支援を要請しました。


米国政府は昨年12月の合意にもとづきGMに総額134億ドルの融資を実行しているようです(※)。
※2/16までに94億ドル実行済み、2/17に40億ドル実行予定であったと思います。


同様にクライスラーには既に40億ドルの融資を実行済みで、30億ドルの追加支援要請を受けています。


米国自動車メーカーを救うための必要資金は高くなるばかりといった印象です。


GMは、自動車市場の回復は、2009年内は困難で、2010年から緩やかな回復に向かうと見ているようです。
クライスラーは、今後3年は米国市場の低迷は続くと見ているようです。


GMは、世界で4万7千人を削減し、2012年までに米国内で5カ所の工場を追加閉鎖する計画です。

クライスラーは、生産能力を10万台、雇用を3千人削減する計画です。


両社は、人件費削減を計画していますが、UAW主導の退職者向け医療保険基金について最終合意に達していないなどの状況にあるようです。


再建計画次第では、米国自動車市場は供給過剰で安値販売が常態化してしまったりするかも知れません。


個人的には、今回の再建計画によって両社の生産能力をどの程度の水準に引き下げるのかなどに関心があり、こうした点を含め、今後、提出された再建計画に関する検討の推移を見守りたいと思います。



2009年2月18日水曜日

イタリアのベルルスコーニ首相の担当弁護士に関する収賄疑惑浮上

イタリアのベルルスコーニ首相の税金担当弁護士ミルズ氏に関し、1998年の訴訟における偽証での収賄容疑が浮上しているようです。


ベルルスコーニ首相は、在職中は罪に問われないようであり、海外メディアの報道によれば、最近も暴言で話題となったベルルスコーニ首相に対して、イタリア国民は、またか、との思いのようであり、今のところベルルスコーニ首相に対する致命的なスキャンダルとはみなされていないようです。


それでも、今回の件がイタリア政治に対する国民の信頼が低下につながらないか懸念されます。


先日(2月6日、現地時間)、イタリア政府は、景気対策として、新しく環境適応車を購入する際の下取りに最高1500ユーロの助成金を拠出する他、10000ユーロを超える家電・家具の購入に対して20%の税控除を行うなどを発表しています。


このイタリアの景気対策は、自動車メーカー各社に対する支援の意味合いがあり、ベルルスコーニ首相は、この景気対策実施の見返りに国内工場の運営と部品会社への支払いを維持するよう自動車メーカー各社に伝えたと表明しています。


報道によれば、2月16日(現地時間)、ドイツのグッテンベルク経済技術相は、フランスのドブジャン景気対策実行担当相と会談し、自動車産業などへの過度な政府支援をお互いに自重することを申し合わせたようです。


自動車産業は、いわば各国の産業の基幹を占める国策会社のようなもので、急速に進む景気後退局面で自国の景気回復や雇用維持を講じるとすれば、筆頭クラスにあげられる対象かと思います。


そうした意味でドイツとフランスの申し合わせを懐疑的に見る向きもあるようです。


本ブログ(2009-02-15 G7閉幕)で取り上げた通り、先日のG7では保護主義的な施策を回避し、WTOの妥結に向けて取り組むことを表明しました。


しかし、各国政権への信頼低下の懸念が生じれば、政権は大衆の信頼を引きとめようと、保護主義的な動きを強める可能性があるのではないかと想像します。


イタリアの政権への信頼が低下し、仮に、国内産業保護の政策を強めていくと、EU域内に伝播し、国際的に広がっていくのではないか、考えすぎと思いますが、気になるところです。



大きく低下した第三次産業活動指数の公表に思うこと

2月17日に経済産業省が発表した12月の第3次産業活動指数(総合)は、106.0(※)と前月比マイナス1.6%となりました。
※2000年平均=100.0


業種別にみると、

サービス業(前月比プラス1.9%)、不動産業(プラス2.2%)、飲食店・宿泊業(プラス2.1%)が上昇しましたが、

卸売・小売業(前月比マイナス3.5%)、情報通信業(マイナス3.9%)、複合サービス事業(マイナス14.1%)、運輸業(マイナス3.5%)、金融・保険業(マイナス2.7%)、医療・福祉(マイナス1.7%)、電気・ガス・熱供給・水道業(マイナス3.1%)、学習支援業(マイナス2.9%)が低下しました。


同指数の水準としては2005年8月(105.8)以来の低水準となりました。


マイナス幅が最大となったのは複合サービス事業で、これは、郵便事業の影響が大きかったようです。次にマイナス幅が大きかったのは情報通信業で、ソフトウエア業、固定電気通信業、出版業の低下の影響が大きかったようです。


情報サービス業  季節調整済指数 

 2008/ 8:138.1 (+ 4.9)
 2008/ 9:116.7 (-15.5)
 2008/10:131.5 (+12.7)
 2008/11:132.1 (+ 0.5)
 2008/12:122.9 (- 7.0)

 ()内は前月比増減
 出所:経済産業省


日本経済に占める第3次産業の割合は6割を超え、その意味では、今回公表された第3次産業活動指数は重要な指標と言えます。


しかし、公表日は、鉱工業生産指数より遅れ、翌々月の20日頃(経済産業省のホームページでは1ヵ月+15日程度としています)となっており、公表時期は遅いとの印象は否めません。


第3次産業活動指数は、景気動向指数の遅行系列として採用されています。


第3次産業活動指数は、サービス業、小売業、金融業といった第3次産業全体を総合的に把握する意義は大きく、確かに、一般に、第3次産業活動指数は、鉱工業生産指数ほど景気に敏感に反応しないと言われてはいますが、もし公表時期が早くなれば、もっと注目され、活用されるのではないかと思う次第です。


単なる個人的な思いつきにすぎませんが、日本が景気対策として、財政出動をして多額のお金を使うなら、そのごく一部を使って、各種統計の公表を早期化したり、統計回答者の謝礼を増やしたり、webでの統計情報公開における利便性を高めるための必要なシステム投資を行ったり、統計精度を上げたりすることをもっと考えても良いのではないかと思う次第です。



2009年2月17日火曜日

国際法律家委員会が英米を批判

海外メディアによれば、国際法律家委員会は、英米はテロとの戦いにより国際法の枠組みを壊していると結論つけた報告を行ったようです。


国際法律家委員会は、世界各国の弁護士、判事から構成されています。


今回の報告は、3年間に亘り研究されてきたもので、9.11事件以前の法律で十分現在のテロに対応可能としています。


9.11事件以降導入されたテロ対策の法制度の多くは違法でその効果は疑問としてます。


キューバのグアンタナモ米海軍基地は、よく法律上の議論の的になってきましたが、オバマ政権は、同基地のテロ容疑者収容所を閉鎖することを表明しています。


米国メディアによれば、オバマ政権は、同基地の拘束者のうち、誰を釈放し誰を告発するかについて、必ずしも順調に推移していないようです。


国際的な金融市場の混乱、世界的な景気後退への対応、テロとの戦いなど、何れも一つの国で解決できる問題ではなく、国際的な協調が重要なテーマばかりです。


国際的な協調には、前提となる国際的なコンセンサスないしルールが重要と考えられるところ、今後、多角的にルールのあり方が議論されていくのかもしれないと感じた次第です。



GDP大幅減の発表に思うこと

2月16日、内閣府が発表した2008年10-12月期のGDP(国内総生産、実質、季節調整値、速報値)は、年率でマイナス12.7%となりました。


マイナス幅は第1次石油危機以来、約35年ぶりの大きさとなりました。


これは、大方の事前の予想をやや上回る水準ながら、同日のTOPIX終値は770.10と前日比プラス5.51(同プラス0.72%)になったことからみて、市場は、ほぼ予想した範囲内と受け止めたようです。


リーマンショック直後、日本の経済閣僚は、ハチが刺した程度で日本経済への影響は限定的との見方を示しましたが、今回、同じ閣僚は、戦後最大の経済危機であるとの認識を明らかにしたようです。

閣僚の発言は政治的な意図もあり、額面通りに受け止めることは必ずしも適当でない場合があると思いますが、日本の場合、与野党ともに、その時々の政局の影響を受ける度合いが大きいのか、発言のブレが大きすぎるのではとの印象は否めません。


今回の景気後退の長期化が懸念されるところ、経済・金融対策は、効果が出るまでに相応の時間がかかることや、景気後退の痛みは相当幅広く影響することからすると、経済・景気対策の中身と併せて政権への世論の支持ないし信頼が重要かも知れません。


一定規模の財政出動を行えば、景気悪化の痛みを和らげる効果が見込めると思いますが、現在報道されている与野党の政策からは、中期的に成長力を高めるシナリオのイメージが今ひとつはっきりしないとの印象です。


現在、与野党は次期衆院選をにらみ激しい攻防を繰り広げているように見えます。

なるほど、政治家にとって政局は大事かと思いますが、GDPが大幅なマイナスを記録したタイミングをとらえ、国民に対し、どのように日本の経済を中期的に高めていくのか、政策を具体的かつ明確にして議論していくことを期待しつつ、その推移を見守りたいと思います。



2009年2月16日月曜日

国連の地球温暖化予測より遥かに大きい気候変動の可能性との発表

2月14日(現地時間)、地球温暖化に関する国連の予測は、気候変動を過小評価しているという批判が出ているようです。


批判されている国連の予測は、昨年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、Intergovernmental Panel on Climate Change)によって公表されたものです。


この内容は、


産業革命以降、人間活動による世界の温室効果ガスの排出量は増加し続けており、1970年から2004年の間に70%増加した。

20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。

温室効果ガスが現在のまたはそれ以上の速度での排出は、一層の温暖化の原因となり、21 世紀中に世界の気候システムに多くの変化を引き起こすであろう。その規模は20 世紀に観測されたものより大きくなる可能性がかなり高い。

今後20年間に、10年当たり約0.2℃の速度で気温が上昇すると予測される。

晩夏における北極海の海氷が、21世紀の後半までにほぼ完全に消滅すると予測しているものがある。


などを内容とするもので、公表当時、内容の厳しさから衝撃的なものでした。


海外メディアによれば、クリス・フィールズ氏(クリストファー・フィールド氏?)は、この国連の予測は、過小評価しており、はるかに大きい気候変動が予想されるとしています。


シベリアの永久凍土が温暖化で溶けており、温暖化ガスが放出されていることや、中国・インドの主として石炭を原料とする発電の影響などをあげているようです。


現在、国際的に環境ビジネスが注目されていますが、景気悪化時期における温暖化対策が適切に進むのかどうか、今後の行方が見守られるところかと思います。



気になるベネズエラの国民投票の行方

2月15日(現地時間)、南米のベネズエラで、憲法改正に関する国民投票が行われました。


今回の国民投票は、公職者の再選挙に関する制限撤廃の是非を問うものです。


チャベス大統領は、現行の憲法によれば、2012年までに退任しなければいけませんが、今回の国民投票で憲法改正が可決されれば、次回の大統領選に出馬することが可能になります。

今回の国民投票の結果は、21世紀の社会主義を提唱するチャベス大統領の政策に対する信任を問うものと言えます。


野党からは、チャベス大統領が、政権の独裁を狙っているとの批判が出ています。

今回の国民投票の結果は、16日(現地時間)、国家選挙管理委員会によって発表される見通しです。


従来、チャベス大統領は原油価格の高騰を背景に、対外的には、石油を外交カードに用い、対内的には、貧困層に対する支援活動を推進してきました。


米国との関係では、チャベス大統領は、ブッシュ大統領を名指しで非難するなどしていましたが、経済面においては、ベネズエラの主要産業である原油輸出の約54%(2007年)が米国向けとなっており、石油を中心とする両国の経済関係は依然密接な状況にあります。


原油価格の下落から、国内貧困層に対する経済支援の原資であった原油収入は低下していると考えられるところ、チャベス大統領の提唱する21世紀の社会主義が実現できるのかどうか気になるところです。


報道によれば、チャベス大統領は、オバマ米政権について「立場の歩み寄りのプロセスを始める用意がある」とあらためて対話の意向を表明したようです。


チャベス大統領は信任されるのか、ベネズエラの政策は今後どのような方向に向かうのか、ベネズエラの国民投票の結果が見守られるところかと思います。



2009年2月15日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


16(月曜)

国内: 2008年10-12月期 GDP

クリントン米国務長官来日

海外: EU ECBトリシェ総裁講演


17(火曜)

国内: 第三次産業指数 12月

海外: 米 自動車メーカー再建計画提出期限

       (GM、クライスラー)


18(水曜)

海外: 米 鉱工業生産 1月


19(木曜)

国内: 白川日銀総裁会見

     月例経済報告


20(金曜)

国内: 全産業活動指数 12月

     コンビニエンスストア売上高 1月

海外: 米 消費者物価指数

     EU PMIサービス業指数


週明け、日本のGDPが公表されますが、市場の大方は年率で10%以上のマイナスを予想し、厳しい内容になると見ています。実際の公表値が注目されるところかと思います。



G7閉幕

2月14日(現地時間)、イタリアのローマで開かれていたG7(7カ国財務相、中央銀行総裁会議)は、共同声明を採択して閉幕しました。


共同声明の骨子は、


①世界経済の減速は、2009年は続く見込み


②各国は金融財政政策を総動員していくとして、協調姿勢を強調


③保護主義的な施策を回避し、WTOの妥結に向けて取り組む


という内容でした。


昨年、英国は景気の大幅後退懸念に対し、国際的にみて、迅速な景気対策を講じました。


当時、付加価値税の2.5%引下げを柱とする英国の景気対策の内容については議論が出たものの、英国の迅速な対応には国際的に高い評価を得ていたと言えます。


しかし、英国のマクロ指標などからすると、期待された効果が出ていないようです。


財政政策の実行の中身が重要と考えられるところ、同日、オバマ大統領は、景気対策の上下両院の可決を歓迎すると表明しました。


今回の米国の景気対策は総額の36%が減税、64%がインフラ整備など歳出追加となっています。


市場では、インフラ整備などによる経済効果に期待する向きが多いようです。


今回、G7では保護主義に反対の姿勢を明確にしましたが、英国、独国、日本などは選挙が見込まれ、国内産業の保護とのバランスという難しい舵取りが迫られ、保護主義の台頭を完全に排除することは困難な可能性が高いと思います。


また、今回、為替は大きな問題として取り上げませんでしたが、今後、大きく問題になる可能性があるのではないかと思います。


米国の金融対策の中身を含め、各国の金融・景気対策の推移を見守りたいと思います。



2009年2月14日土曜日

市場予想を上回る厳しさとなった米ミシガン大消費者信頼感指数

2月13日(現地時間)、公表された2月の米ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は、56.2と1月の61.2から悪化しました。


市場の大方の事前予想を下回る水準となりました。


米国の消費者心理は、市場が考えるより冷え込んでいると言えます。


現状は、消費者心理を押し上げるような話題を期待することが困難な状況にあり、効果が確認できるまでには一定の時間がかかると思いますが、米景気対策の実行の行方と、未だ十分でないとの見方が拭えない金融市場の安定化に向けた対策の進展が期待されるところかと思います。



ユーロ圏GDP伸び率は市場予想を上回るマイナス幅に

2月13日(現地時間)、EU統計局が発表した2008年第4四半期のユーロ圏域内GDP伸び率は前期比マイナス1.5%、前年比マイナス1.2%となりました。


市場は、マイナスとなることは予想していたところ、市場の事前の大方の予想を上回るマイナス幅になりました。


昨日(2月13日)、当ブログでユーロ圏の鉱工業生産は市場予想を上回る悪化となり、ECBの利下げ可能性は非常に高くなり、利下げ幅が注目される旨を記しましたが、今回のユーロ圏域内GDP伸び率が市場予想を上回るマイナス幅となったことで、大幅な利下げを求める圧力が強まると言えます。


ユーロ・円は、年初127円台であったところ、円高基調で推移し、一時は112円台となりましたが、2月13日は、3営業日ぶりとなる118円台乗せとなったばかりでした。


今回のユーロ圏域内GDP伸び率が市場予想を上回るマイナス幅となったことで、ユーロ・円為替の行方と、3月決算を目前にしてEU圏と取引のある日本企業の業績を押し下げる要因になりかねないことが気になるところです。


現在、G7が開催されていますが、世界経済の回復に向けた強いメッセージを発することを期待したいと思います。



2009年2月13日金曜日

ユーロ圏の鉱工業生産は市場予想を上回る悪化

2月12日(現地時間)、EU統計局が発表した12月のユーロ圏の鉱工業生産は、前月比マイナス2.6%、前年比マイナス12.0%となりました。


前年比の減少幅は1990年以来過去最大となりました。


市場の大方の事前の予想よりマイナス幅は大きなものでした。


こうした市場予想を上回る経済悪化を示すマクロ指標は、ECBに対し、強い利下げ圧力になり、3月の利下げ可能性は非常に高くなると思います。


ECBの3月の政策金利の利下げの実行と利下げ幅を見守りたいと思います。



海賊に拿捕されていたロシアの戦車を積んだ船がモンバサに入港

2月12日(現地時間)、ソマリアで海賊に捕まっていた船がケニアのモンバサの港に入港し、注目を集めているようです。


海外メディアによれば、この船には、ロシアの戦車30両などが積まれているとのことです。


この船の荷物は、ケニア政府軍が引き取るようですが、この武器は、ケニアを経由してスーダン南部に送られるのではないかとの見方が出ています。


4年前、ケニアは、スーダン南北の紛争を調停した経緯があります。


スーダンでは西部のダルフールで紛争が続いており、長年、国際的に憂慮されています。


スーダンのダルフール地方の紛争をめぐり、スーダン政府とダルフールの反政府組織との和平協議が、カタールの首都ドーハで行われています。


ダルフールの和平協議の進捗を期待したいと思います。



2009年2月12日木曜日

米国金融安定化策への失望と下院金融委員会公聴会

2月10日(現地時間)に米政府が発表した金融安定化策の内容に失望が広がっています。


昨年来、オバマ大統領発足前に市場が期待してきたシナリオ通りにはいかなかったと言えます。


市場の期待が高すぎたことがあるのかも知れませんが、市場の期待を下げるということは、経済に対する、より厳しいシナリオに移行することに繋がる可能性が高いと言えるのではないかと思います。


現在、米国では、下院金融委員会の公聴会が開かれています。


2月10日(現地時間)、FRBのバーナンキ議長が出席しました。


海外メディアによれば、「現在、金融市場が機能不全に陥っている原因は、サブプライムローンなどの問題ではなく、経済の先行きをめぐる懸念が原因であり、経済や金融システムの安定に向けた強力な措置が必要である」旨を述べたようです。


2月11日(現地時間)、大手銀行の経営者8人が公聴会に出席しました。


金融機関の多額の報酬受取に批判的な見方など、厳しく経営責任が問われたようです。


金融システムの機能回復には、多額の資金を必要とすることは相当理解が進んでいると思いますが、今回の下院金融委員会の公聴会の進展が、金融安定化策の推進にどのように影響するのか、その行方が見守られるところかと思います。



ジンバブエで野党指導者が首相に就任

2月11日(現地時間)、アフリカのジンバブエで、野党(民主変革運動)指導者のモーガン・ツァンギライ議長は、同国の首相に就任しました。


ツァンギライ氏は2008年3月に行われた大統領選挙でムガベ氏を上回る得票がありましたが、その後、野党支持者への暴力や嫌がらせが横行し決選投票への出馬取りやめに追い込まれたという経緯があります。


今後、ツァンギライ首相は、対立してきたムガベ大統領と連立政権を運営することになります。


国際社会は、同国に対し、経済的な支援の用意がありますが、現時点では、ムガベ大統領に対する不信感から、支援を留保した状態にあるようです。


従来、欧米の強い圧力にも関らず、ムガベ大統領は退任を拒んできました。


これまで独裁政治を行ってきたムガベ大統領が、ツァンギライ首相に、どの程度の権力を分割するか、国際社会の経済制裁の解除と経済支援の行方も含め。注目されるところかと思います。



2009年2月11日水曜日

気になる右傾化が指摘されるイスラエルの選挙の行方

2月10日(現地時間)、イスラエルで選挙がスタートしました。

日本時間の2月11日午前5時頃まで投票は続くようです。


今回のイスラエルの選挙は、鳩(平和)と鷹(戦争)の戦いになったようです。


今回の選挙では、最大野党の右派リクードと、政権維持を目指す最大与党の中道カディマが激しく争っていると言われています。


イスラエルの右傾化が指摘される中、対パレスチナ強硬派の極右政党「わが家イスラエル」(リーバーマン党首)は、何れの党が勝利するにしても、連立政権に名を連ねる可能性が高いとみられています。


外相、財務省、国防相といった重職に同極右政党が就任することはないというのが現在の見方のようです。


イスラエルの選挙結果は、中東和平に大きく影響するとみられるところ、イスラエルの選挙は、まだ投票も終えていない段階で、現地では右派の躍進を織り込んだ状況にあるようです。


今後、右派がどの程度躍進したのか、その選挙結果と、連立政権の中身が注目されるところかと思います。



英国大手金融機関の経営責任に関する英国下院での審議

2月10日(現地時間)、英国の下院特別委員会で、公的資金によって救済された金融機関の経営者に対する経営責任が審議されているようです。


その一部を海外メディアを通じたテレビ放送で目にしました。


英国では、RBS(ロイヤル・ バンク・オブ・スコットランド)、住宅金融大手HBOSの救済のため、370億ポンド(最近の為替で約5兆円)を投下しています。


RBS、HBOSの経営者4名は、英国の下院特別委員会で、今回の金融危機が予想できなかったと述べました。


また、RBS経営者は、2007年に合意したRBSによるABNアムロの買収の対価が700億ユーロ(当時の為替で約11兆5千億円)にのぼったことは、間違った判断であったと述べました。


RBS、HBOSの経営者4名は同委員会で謝罪しました。


今回の下院特別委員会で、経営者4名は、RBS、HBOSのボーナスの仕組みが短期的な利益を追いかけるもので適切ではなかったとも述べているようです。


景気後退で失業が増加し、税収も厳しい状況にある中、多額の公的資金を投入した以上、金融機関の経営責任は問われてしかるべきと思いますが、扇情的に経営責任が取り上げられると、今後、各国の金融機関が公的支援の枠組みを活用することを躊躇するかも知れず、そうなれば、結果的に、国民経済が悪影響を受けるという悪循環に陥ることになろうかと思います。


英国の下院特別委員会における審議が適切に進むことを願いつつ、今後の行方を見守りたいと思います。



2009年2月10日火曜日

機械受注統計が公表、設備投資計画の下方修正が続く可能性を示唆

2月9日、内閣府が発表した民間設備投資の先行指標である、機械受注統計が公表されました。

この統計は、受注内容により大きく変動することや先行性の低下が指摘されるものの、一般に、約半年の先行性があると言われています。


船舶・電力を除く民需の動向を見ると、2008年11月前月比マイナス16.2%の後、12月は同マイナス1.7%の7416億円となりました。このうち、製造業は同プラス7.0%増の3033億円、非製造業(除く船舶・電力)は同マイナス8.3%の4451億円となりました。


前月比でマイナス1.7%という水準は、事前の市場予想に比べ予想外に小幅に留まりました。


しかし、この統計では、受注額が一時に計上される仕組みになっているため、製作に長期を要するような大型受注があった場合、大きく変動するという特性があります。


実際、今回は、鉄鋼業からの受注が大型案件で前月比461%も伸びるなどの特殊要因があったようです。


同時に内閣府は機械受注見通し調査を公表しました。


2008年10-12月の機械受注見通し達成率をみると、受注総額では82.1% と前期に引き続き100% を下回り、7-9月期の達成率と比べ14.4ポイント低下しました。
��注)内閣府は、機械受注額の「見通し( 単純集計値) 」に対する「実績」の乖離を調整するために、両者の比を「達成率」として計算し、直近の3 期平均達成率を見通しの「単純集計値」に乗じています。


過去の経験則から、達成率が低下した場合、当初の見通しよりも、現実の需要が弱い状態にあることを意味することから、将来の設備投資計画も下方修正されやすくなります。


発表された機械受注見通し調査によれば、2009年1-3月期の受注見通しは、前期比プラス4.1%増となりました。


内閣府によれば、2009年1-3月期見通し達成には、毎月前月比5.8%のプラス基調が必要であり、仮に、前月比横ばいが続いた場合は、2009年1-3月期受注は前期比マイナス7.1%減になる見通しとのことです。


一般に、機械受注見通し調査は、かなり振れが大きい統計であることを考慮する必要があろうかと思いますが、それでも、設備投資計画の下方修正が続く可能性が高い情勢にあると言えます。。


同日、日本工作機械工業会が発表した1月の工作機械受注額は187億300万円となりました。


前年同月比でマイナス84.4%と大幅な減少になりました。


国内向けは90億3000万円(前年同月比マイナス84.0%)、海外向けは96億7300万円(同マイナス84.8%)でした。


今後の推移が見守られるところかと思います。



北京の高層ビルで火事

2月9日(現地時間)、中国の北京で高層ビルが火事で焼け落ちたようです。


この高層ビルは、国営中央テレビに隣接する建設中のビルで、完成後はマンダリンオリエンタルホテルが開業する予定でした。


中国は、元宵節(旧暦1月15日の節句)で、北京市内では、多数の市民が花火を打ち上げていました。


出火の原因は、高層ビル内で打ち上げた花火が燃え移ったとの見方と、花火が高層ビルの屋上に落ちて出火したとの見方があるようです。


マンダリン・オリエンタル・ホテル・グループは2月2日、中国の海南島(三亜市)に「マンダリン・オリエンタル三亜」を開業したばかりでした。


急速な景気後退から、ホテル業界も厳しい経営環境にある模様であり、ホテルにとって今回の火事が良いことか悪いことか俄かにはわかりませんが、内需拡大を目指す中国で、春節の消費は予想外の好調が伝えられたところ、高層ビルの火事が中国市民の消費者心理を冷やさないことを願うところです。



2009年2月9日月曜日

米国政策と女性初の大西洋横断

今週、いよいよ米国で景気対策法案が成立に向けて動いていく見通しにあります。


もう一つの注目点は、米国の金融安定化法で、バッドバンク設立が前進するのかどうかです。


今週は、米国政策動向が注目される1週間になりそうです。


さて、海外メディアによれば、米国の56歳の女性が、女性として初めて、泳いで大西洋を横断したようです。


アフリカ沖の島から出発して、カリブ海のトリニダード・トバゴに到着したもので、距離は、約1000マイル(約1600km)とか。


個人的には、米国の政策が順調に進むことを期待するところですが、仮に不調で、市場も失望することがあったとしても、大西洋を初めて泳いだ女性のように、前向きな気持ちを持って行くことが大切なのではないかと思っています。



米国・ロシアで関係改善の動き

米国とロシアで核軍縮促進の動きが出ているようです。


海外メディアによれば、


2月6日(現地時間)、ロシアのイワノフ副首相は、世界の核軍縮について、米国のオバマ新政権に対し、我々が歩を進める時だ、と呼びかけました。


2月7日(同)、アメリカのバイデン副大統領は、ロシアとNATO・北大西洋条約機構の加盟国との関係に危険な兆候が出たが、今こそリセットボタンを押すべきだと語りました。


これに対して、ロシアのイワノフ副首相は、歓迎の意を表したようです。


軍事的な緊張が緩和に向かうことは、好ましいことであり、今後の行方を見守りたいと思います。



2009年2月8日日曜日

成立に向け動き出した米景気対策法案


米の景気対策法案が週明け後、成立へ向けて動き出しそうです。


順調に行けば、10日に上院で採決、下院の法案と一本化、両院で再可決の予定であり、オバマ大統領は2月16日までに法案に署名したい意向を表明しています。


現時点でポイントを整理すると、次の通りです。


①当初、9370億ドル規模だった景気対策法案は、7800億ドル規模に縮小する予定。


②対策の42%が減税、残り58%が公共事業など財政支出となり、減税の比重が高まった。


③バイアメリカン条項は削除案は否決され、修正案が既に可決されている。


週明け後の行方が注目されるところかと思います。



週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


9(月)
国内:機械受注 12月
   工作機械受注 1月


10(火)
国内:消費動向調査 1月
   特定サービス産業動態統計調査 12月
海外:イスラエル 総選挙
   米 卸売在庫 12月


11(水)
海外:米 貿易収支


12(木)
国内:国内企業物価指数 1月
   オフィス空室状況 1月
海外:米 小売売上高 1月
     企業在庫 12月
     失業保険新規申請件数 先週分
   EU ユーロ圏鉱工業生産 12月


13(金)
国内:商業販売統計 12月
海外:7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)
   米 ミシガン大消費者信頼感指数
   EU ユーロ圏GDP 10-12月


2月13日、14日に、G7がイタリアのローマで開かれる予定です。個人的には、次の点に注目したいと思います。


①オバマ米政権発足後、初めてであり、米の指導力と協調

②米国の景気対策法案に盛り込まれたバイアメリカン条項に関する保護主義拡大の懸念を排した政策協調

③昨年以来の経済・金融危機に対する各国対応の進展の検討



2009年2月7日土曜日

米雇用統計と景気対策への期待

2月6日(現地時間)、米労働省が発表した1月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が59万8千人減少となりました。


これは34年ぶりの大きさでしたが、今回の雇用統計の内容が大変厳しい内容であるということは、市場では事前に予想されていたことでした。


それでも、事前の大方の市場予想を大きく上回る減少幅となりました。


米国では、厳しい経済状況にあり、企業決算の発表に際した人員削減計画の公表が続いており、厳しい米国雇用統計は今後も続く可能性が高いと思います。


今回公表された雇用統計によれば、失業率は7.6%となりましたが、先行指標などからすると、先々、米国の失業率は、9~10%に達する可能性が高いと推測します。


現在、米国上院では、景気対策が審議されていますが、今回の雇用統計は、景気対策への期待を高めると思います。


今後、期待をこめて、米国議会での景気対策の行方を見守りたいと思います。



トヨタ決算

2月6日、トヨタは第3四半期決算の発表を行い、通期(2009年3月期)の業績見通しを下方修正しました。


第3四半期の要因別影響額は、販売面で-5600億円、為替で-2500億円などとなっており、販売不振と為替変動が大きく影響しました。


ちなみに、トヨタの発表した資料によれば、第3四半期の要因別影響額は、原価低減の影響はゼロとなっています。


この事から、短期的に原価低減を図る余地は殆ど無いと推測します。


当初計画では1兆2500億円を計画していた純利益は、今回予想では3500億円の赤字を見通しています。


            通期売上高  通期営業利益  純利益

当初計画         2兆5千億円  1兆6千億円  1兆2500億円  
昨年11月6日時点    2兆3千億円   6000億円    5500億円
昨年12月22日時点 2兆1千5百億円  -1500億円     500億円
今回            2兆1千億円  -4500億円  -3500億円


今回の前提為替レートはドル=93円、ユーロ=123円となっています。


最近、EUの予想外に悪化したマクロ指標の発表があったこと、市場の予想の範囲とは言えECBが政策金利を据え置いたことに対し、景気後退への対応が相対的に消極的との印象が広がったことなどから、ユーロ通貨は軟調に推移しています。


当面、市場予想通りのマクロ指標の公表が続くとすれば、当面、ユーロ通貨は軟調に推移する可能性が高く、トヨタの想定する前提為替レートより円高で推移する可能性が高いのではないかとの印象です。


直近で円はドルに対し安値圏にあり、トヨタの想定する前提為替レートより若干円高の水準にあります。


今後、オバマ政権の景気対策、金融政策が適時、適切なものとして市場に受け止められていくのかどうか、トヨタの業績を占う上で、短期的にトヨタには原価低減を図る余地が殆ど無いと推測されるところ、トヨタの想定する前提為替レートの行方が気にかかるところであり、為替動向次第では、4度目の下方修正も全くないとは言えないのかも知れません。




2009年2月6日金曜日

イランの原子力

最近、イランの原子力に関する話題が続いています。


海外メディアによれば、2月5日(現地時間)、ロシアは、イランの原子力発電所を年内に稼動させる予定だと明らかにしたようです。


対象となるのは、イラン南部のブシェールの施設のようです。


報道によれば、最近、イラン原子力庁は、旧ソ連のチェルノブイリ原発で起きた事故のようになる可能性があると指摘する秘密報告を行っていたようです。


イランは、技術的に問題ないとしているようですが、秘密報告の内容は気になるところです。


2月4日(現地時間)、イランの核開発問題を協議する国連安保理の常任理事国である米、露、中、英、仏とドイツの6カ国は、オバマ米新政権のイランとの対話姿勢を歓迎する共同声明を発表しました。


今後、イランが、IAEA・国際原子力機構への約束を守り、ウラン濃縮活動を停止するのか、また、核査察を受け入れるのか、今後の行方が見守られるところかと思います。



ECBは政策金利据え置き、BOEは政策金利引下げ

2月5日(現地時間)、ECB(欧州中央銀行)は、政策金利を2.0%に据え置くと決定しました。


また、ECBのトリシェ総裁は、3月の理事会で利下げすることを示唆しました。


ECBが政策金利を2月は据え置き、3月引下げることは、以前より予想されていたことでサプライズは全くありませんでした。


同日、ドイツ経済技術省が5日発表した12月のドイツ鉱工業受注指数は、前月比マイナス6.9%となりました。


ドイツの鉱工業受注指数は、2008年、マイナス25.1%となりました。


スペインの工業生産は、2008年、マイナス19.6%となっています。


個人的には、市場では、当初予定通り政策金利を据え置く可能性が高いと見ていたものの、予想以上のペースで深刻化するEUの経済状況への対応を注視していたところ、改めて、据え置き決定の報道に接すると、やはりそうかと思いつつ少し残念でした。


一方、BOE(英国中央銀行)は、政策金利を0.5%引き下げ、1.00%にすると決定しました。


これは、市場の大方の事前の予想通りの結果でした。


経済状況からすると、今後もさらに英国の政策金利引下げは続くとみられるところ、近い将来、一段の量的緩和措置を講じると予想されます。 

今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年2月5日木曜日

1月のADP全米雇用報告は市場予想よりやや良好な水準

今週、6日(金曜)は、米国では1月の雇用統計が発表される予定で、日本ではトヨタの決算発表があり、何れも国際的に注目が集まっているところかと思います。


2月4日(現地時間)、米国雇用統計の発表に先立ち、ADPエンプロイヤー・サービシズ(ADP:Automatic Data Processing, Inc.)が発表した1月のADP全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は52万2千人の減少となりました。


これは、市場の事前の大方の予想より減少幅は少なかったと言えます。


ADP全米雇用報告は、民間の事業会社からサンプルを抽出して調査するもので、米国雇用統計に先立ち公表されることから、雇用統計の行方を占う指標として市場で注目されているものです。


今回公表された1月のADP全米雇用報告は、雇用者数の減少ペースが減速し、減少幅も予想を下回りました。


とすれば、今週金曜に公表予定の米国雇用統計は、市場の予想より良好な数字が発表されるのかも知れません。


しかし、先週公表された失業率の先行指標と言える米国の新規失業保険週間申請件数は増加傾向にあること、米国企業の人員削減計画が相次いでいること、また、次期厚生長官と行政監督官が相次ぎ指名辞退するなど指導力低下が懸念されるオバマ政権の現状等からすると、短期的に失業率が持続的な低下に向かう可能性は極めて低いと思います。


今週金曜の雇用統計の発表を含め今後の推移が見守られるところかと思います。



ユーロ圏の12月小売売上高は前月と同じマイナス幅

2月4日(現地時間)、EU統計局が発表した12月のユーロ圏の小売売上高は、前年比マイナス1.6%となりました。


これは、事前の市場の予想とほぼ同様の水準と言えます。


一部に、12月のユーロ圏の小売売上高は、前月よりマイナス幅が拡大し、ECBに対する政策金利引下げの圧力が高まるとの見方もあったようですが、12月のユーロ圏の小売売上高は、前月と同じマイナス幅となりました。


2月5日、ECBの政策金利が引き下げられるのかどうか、厳しいマクロ指標が相次ぐものの、市場の大方の予想では引下げ可能性は低いとの見方にあるようですが、英国中央銀行を含め、その行方が注目されるところかと思います。



2009年2月4日水曜日

スリランカで表現の自由が脅かされている懸念

海外メディアによれば、スリランカで、同国政府により、表現の自由が脅かされている懸念が出ています。


過日、当ブログ(2009年1月23日「スリランカ政府軍は反政府武装組織の本部を制圧したと表明」)で、スリランカ政府軍が、反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラの本部を制圧し、大きな勝利を得たことを肯定的に受け止めていましたが、ことはそう単純ではないようです。


海外メディアによれば、スリランカでは、反政府的立場から報道していた報道機関が何者かに爆破され、また、反政府的立場にある著名編集者が何者かに射殺されるなど、反政府的立場にあるマスコミに対する圧力が続いているようです。


今のところ、こうした事件の犯人は不明で、関係者の中には政府に強い疑念をもつものの、公の場での批判は控えている傾向にあるようです。


政府は、戦時中の政府批判は反逆罪としている模様です。


こうしたことからすると、スリランカに関する報道は、同国政府に好ましいものに限られ、報道内容は、そのまま受け止めることが必ずしも適当でない状況にあるのかも知れません。


個人的には、スリランカに関する情報は、慎重に検討して行きたいと思います。




イランで国産人工衛星打ち上げ成功のニュース

2月3日(現地時間)、イランは、同国初の国産人工衛星の打ち上げに成功したと表明しました。


今回の表明は、政府によるもので、海外メディアによるイラン現地の市民へのインタビューでは、本当に成功したとは思えないとのコメントも出ているようであり、国際機関が確認したかどうかは不明です。


イランは、今回の人工衛星は、通信衛星で、平和的利用を目的としているとしています。


しかし、イランは核開発が問題になっているところ、人工衛星の技術と組み合わせれば、核弾頭付の長距離ミサイルを開発可能とみられます。


海外メディアの報道をみる限り、欧米では、今回の人工衛星打ち上げに反発する見方が強まっているようです。


同日、韓国の情報当局は、北朝鮮で弾道ミサイル発射準備の兆候とみられる動きがあることを明らかにしました。


イランと北朝鮮のこうした動きは、世界の安全保障面に不安定な影響を与える懸念を感じるところ、今後の行方が気にかかるところです。



2009年2月3日火曜日

発表された米国ISM製造業景気指数は市場予想より良好な水準

2月2日(現地時間)、米国では、ISM(米供給管理協会)が発表した1月の製造業部門指数は35.6となりました。


事前の市場の大方の予想は、より悪化した水準になると予想していました。


水準そのものは、厳しい水準であり、市場では、景気後退の影響から、今後も悪化傾向を辿るとの見方にあります。


今後、底入れとなるか、底割れとなるか、まずは今年前半にどの程度の在庫整理が進むかどうか、今後の推移が注目されるところかと思います。



アフリカ連合の次期議長決定

2月2日(現地時間)までアフリカの各国は、アフリカ連合サミットを開催していました。


結果的に今回決議には至りませんでしたが、アフリカの連合政府の設立が話し合われるなどしたようです。

このアフリカ連合の次期議長に1年の任期でリビアのカダフィ大佐が選出されたようです。


リビアというと、過去、パンナム機事件等に関し、国際的な孤立感が高まったことが思い出されますが、遺族との補償交渉や大量破壊兵器計画の廃棄などを受け、現在では国際社会への復帰が急速に進み、外交上最大の課題とされた米国との関係についても、2004年10月に米国による対リビア制裁が解除され、2006年6月には米国のテロ支援国家リストから削除されたことにより正常化が図られています。


リビアは、アフリカ諸国との連帯、イスラム社会の連帯とアラブの団結などを基本にしているようです。


アフリカは、国際的に、人道、資源、政治的に注目され、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年2月2日月曜日

英国で頻発する山猫ストと気になる行方

最近、イギリスで、一部の組合員が組合指導部の承認を得ず、独自に行うストライキ、いわゆる山猫ストが頻発しているようです。


こうしたストは、政府の経済危機への対応を批判しています。


ブラウン英首相は、雇用に対する国民の懸念に一定の理解を示しつつも、こうしたストは正当化できないとして批判しています。


一部には、EU域内で国際的に活動している企業の中には、イギリス人労働者を排除しており、EU法の改正によって対応すべきとの意見も出てきているようです。


過日(1月26日、現地時間)の英現地紙が報じた世論調査によれば、支持率は最大野党の保守党43%に対し、与党労働党は28%となったようです。


山猫ストの頻発は、雇用に対する英国民の強い不満を表しており、内向きの議論に向かいやすいとみられるところ、ブラウン首相は、難しい政権運営を余儀なくされると思います。


昨年来、英国は、ブラウン首相の英断で、国際的にみて景気対策は先駆けたものであったと思います。


今後予定される総選挙の行方が気にかかるところです。



ペルーでのセンデロ・ルミノソとの戦いに思うこと

海外メディアによれば、ペルー政府軍は、センデロ・ルミノソとの戦いを続けているようです。


ペルーは世界第2位のコカイン生産国ですが、センデロ・ルミノソは、麻薬生産地を拠点にして活動するゲリラ組織です。


自分は、センデロ・ルミノソは、壊滅したと思いこんでいました。


実際には、ペルー政府は、2005年12月23日以降、センデロ・ルミノソが活動しているとされる地域を非常事態宣言地域に指定し、治安部隊を派遣して掃討作戦を展開しているようです。


海外メディアのインタビューで、ペルーの治安部隊の司令官は、今後5年でセンデロ・ルミノソを壊滅に追い込めるとの見方を示しました。


しかし、識者からは、センデロ・ルミノソは、貧困問題に根ざした問題で、軍事的な作戦だけで壊滅させるのは容易ではないとの見方も示されています。


現在進む世界的な景気後退が、世界各地で反政府ゲリラ活動などが活発になる可能性があるのではないかと懸念する次第です。



2009年2月1日日曜日

週明け後の主な予定

2日(月曜)

(国内) 新車販売台数 12月

(海外) 米 ISM 製造業景況指数 1月

     米 個人所得、個人消費支出 12月

     EU PMI製造業景況指数 1月


3日(火曜)

(国内) 10年利付国債入札

     毎月勤労統計


4日(水曜)

(海外) EU ユーロ圏小売売上高 12月


5日(木曜)

(海外) 米 失業保険新規申請件数 先週

     EU ECB政策金利

        英国中央銀行政策金利


6日(金曜)

(国内) 景気動向指数 12月

     トヨタ決算発表

(海外) 米 雇用統計 1月



週明け後、トヨタの決算発表が予定されるなど、内外の企業決算の発表が続く予定です。


各企業決算は、市場予想と比べてどうか、また、会社決算予想も含め、企業決算への注目への高まりが続くのではないかと思います。


 



IFRS導入コストに関する記事を読んで

最近、IFRS導入コストに関する雑誌のコラム記事(旬刊経理情報 2009/2/1号 p.1)を目にしました。


記事では、


SECが、米国企業がIFRS導入で最初の3年間に必要とする平均コストを1社32百万ドルと見積もっている。


しかし、過去、SECはSOX方導入における初年度費用を約9万ドルと見積もっていたところ、実際には約3百万ドルを必要とした。


と指摘しています。


恥ずかしながら、個人的には、IFRS導入に関する日本の議論は、IFRSの内容自体が中心で、あまりコストに関する議論は耳にしたことがありませんでした。


記事は、日本のIFRS導入議論に関し、コストや体制整備に警鐘を鳴らしていました。


既にIFRSは相当議論されているところ、今後、こうした議論がさらに深まっていくかと思います。


今後の推移を見守りたいと思います。