2009年1月31日土曜日

低水準なユーロ圏CPI、高水準なユーロ圏失業率とユーロ圏政策金利

1月30日(現地時間)、EU統計局が公表した1月のユーロ圏CPI(消費者物価指数)上昇率は、前年比でプラス1.1%となりました。


これは、約10年ぶりの低水準でした。


ECB(欧州中央銀行)は、インフレ目標として2%を若干下回る水準を設定しています。


今回公表された1月のユーロ圏CPI(消費者物価指数)上昇率は、これを大きく下回るもので、デフレリスクが指摘される中、望ましいものとは言えないと思います。


同日公表されたユーロ圏の失業率は8.0%となりました。


これは、2006年11月以来の高水準でした。


当ブログ(2009年1月22日「欧州の金融政策の行方」)で、1月21日、ECBのトリシェ総裁は、2%が必ずしも政策金利の最低水準ではないが、ゼロ金利政策は意図していない旨の見解を明らかにした旨を記しました。


今回のCPIと失業率は、ECBに対する強い利下げ圧力となることは確実な情勢と思います。


必ずしも足並みが揃っているとは言えない欧州の景気対策の現状などをみると、個人的には、ECBは、年末までにゼロ金利政策に追い込まれていく可能性もゼロではないと思います。


まずは、2月にECBが利下げに踏み切るかどうか、その行方が見守られるところかと思います。


ユーロ圏CPI(前年比)


2008年 11月 2.1%
      12月 1.6%
2009年  1月 1.1%



米国GDPの落ち込みと米国景気刺激策の行方

1月30日(現地時間)、米国商務省が発表した2008年第4四半期の米国GDP伸び率(速報値)は、年率換算で前期比マイナス3.8%となりました。


これは、1982年以来の大幅な落ち込みとなりました。


ただ、事前の市場の予測は、より大幅なマイナス幅を予想していたとみられます。


昨年来、市場では、米国の経済は、早ければ今年後半から再成長に向かうとの見方がありましたが、その前提としては、オバマ政権による適切な景気刺激策が講じられるなどにより、2009年第1、第2四半期で経済の下落幅が緩和に向かうとの見方によっています。


現在、第1四半期の最初の1ヶ月が過ぎようとしていますが、米国では景気刺激策が検討されている真っ最中です。


この景気刺激策に盛り込まれたバイアメリカン条項が問題になりはじめていますが、上院ではさらに保護主義的な条項が追加されるとの見方も出ているようです。


個人的には、仮に、米国でWTOに抵触するような保護主義的な条項が景気刺激策に盛り込まれれば、欧州をはじめ各国の保護主義的な動きが強まることは確実であり、現在進行する景気後退から長期に亘り容易には脱け出せない状況に陥る可能性が相当高くなると予想します。


米国の景気刺激策の内容と検討スピードに関し、今後の推移が見守られるところかと思います。


米国 2008年第4四半期
前期比、季節調整済、年率)


GDP -3.8%

個人消費     -3.5%
うち耐久消費財  -22.4%
うち非耐久消費財 -7.1%

民間設備投資  -19.1%
民間住宅投資  -23.6%

輸出      -19.7%




2009年1月30日金曜日

米バッドバンク設立の行方と米下院の景気対策法案可決

海外メディアによれば、1月29日(現地時間)、米国のシューマー上院議員は、米金融機関の不良資産を買い取る、いわゆるバッドバンク設立にかかる政府費用は、1兆ドルから4兆ドルとなるとコメントしたようです。


過日(1月28日、現地時間)、米議会下院は、総額8190億ドル(約74兆円)の景気対策法案を可決しました。


内容は、道路に対する公共投資などで、今後2年間で300万~400万人の雇用創出を目指すものです。


今回の景気対策法案可決は、経済にとって良いニュースと言えますが、共和党は減税策を上積みした修正案などで反対攻勢を強化するなど、採決も賛成244票、反対188票と共和党からの賛成票はなかったようです。


個人的に、金融機能の安定化に向け、米国におけるバッドバンク設立構想に賛意を示すものですが、少なくとも1兆ドル必要と今回の景気対策法案より多額となり、おそらくは短期的な目に見える効果とはならないバッドバンク設立の決議の行方が気にかかるところです。


オバマ政権は、今回、米下院で可決された景気対策法案は、来月中旬の法案可決、成立を目指しているところ、野党共和党との協議の中で、法案修正のされる可能性も指摘されているようです。


個人的に、オバマ政権による早期の金融対策に期待するものですが、その行方を占う意味でも、今回の景気対策法案を見守りたいと思います。



厳しい米国マクロ指標と企業決算

1月29日(現地時間)、米労働省が発表した新規失業保険週間申請件数(1/24終了週)は58万8千件となりました。


これは、事前の大方の市場予想を上回る水準と言えます。


同日(同)、米国の自動車大手フォードが発表した第4四半期決算は、58億8千万ドルの赤字(前年同期28億ドルの赤字)となりました。


同日、日本のソニーが発表した昨年10月~12月期の決算は、180億円の営業赤字(前年同期2,362億円の黒字)となりました。


厳しいマクロ指標の公表が続きますが、市場は、個別の企業決算に対する注目を高めているように思えます。



2009年1月29日木曜日

ダボス会議が開幕

1月28日(現地時間)、スイスでダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)が開幕しました。


1年前に開催されたダボス会議では、現在の大幅な景気後退を予想しておらず、開発途上国に対する積極的な投資が訴えられていました。


現在、環境は大きく変化しました。


ダボス会議に出席している南アフリカの財務相は、TVインタビューの中で、世界各国の財政収入が低下する中、開発途上国への投資は低下し、開発途上国の経済は大きく後退するだろうとの見通しを明らかにしています。


同日(同)、ILO(国際労働機関)が発表した年次報告によれば、2008年末時点の世界の失業者数は過去最高の1億9020万人に達しました。

2008年末の失業者数は、前年末比1070万人の増加となり、2009年は、5000万人が新たに失業する可能性があると分析しています。


同日(同)、IMF(国際通貨基金)は、世界経済見通しを改定し、2009年の世界全体の経済成長率は、0.5%(前回予測2.2%)と大幅に下方修正しました。


日本の経済成長率は、マイナス0.2%(前回予測マイナス0.2%)と大幅に下方修正しました。


今後、景気後退の影響から財政収入が減少する中、政府に対し大幅な景気刺激策が期待されるところ、政府の迅速かつ適切な対応が重要と考えられます。


IMFによる米国の経済成長率はマイナス1.6%(前回予測マイナス0.7%)と大幅に下方修正となったものの、新興国の成長鈍化が鮮明になる中、米国オバマ政権の経済政策の具体的内容により注目が集まっていくのではないかと思います。



FOMCはゼロ金利継続と長期国債買い入れ検討を表明

1月28日(現地時間)、FOMC(米連邦公開市場委員会)は、事実上のゼロ金利政策を当面継続する方針をあらためて示すとともに、市場への資金供給量を増やす信用緩和の一環として、長期国債の買い入れを前向きに検討する方針を決定しました。


今回、FOMCは、物価に関して、デフレ懸念に言及しました。


市場には、今回の長期国債買い入れ検討を疑問視する見方もあるようですが、個人的には、デフレリスクが高まっていけば、米国政府が不良資産を銀行システムから取り除く必要が強まり、FRBは、さらなる資金供給に踏み込む可能性があるのかもしれないと思います。


今後、経済、金融に関する動向の行方が見守られるところかと思います。



2009年1月28日水曜日

米の消費者信頼感指数は事前の市場予想を下回る水準に低下

1月27日(現地時間)、米民間調査機関コンファレンス・ボードが発表した1月の消費者信頼感指数は、37.7(前月比マイナス0.9)となりました。


これは、事前の大方の予想を下回るものでした。


同指数は、前月に続き、過去最低の水準となりました。


昨年のクリスマス商戦は期待したほどではなく、景気の大幅後退懸念が強まる中、最近では、キャタピラー社やホーム・デポ社など米大手企業のリストラの発表が続いています。


オバマ米大統領の掲げる雇用創出策は、まだ具体的に動き出してはいませんが、既に、景気後退の中で生じる失業者を吸収することは難しく、さらに対策を講じることが求められるのではないかとの見方もあるようです。


市場では、消費者信頼感は当面は低水準で推移し、経済成長にとって大きな下押し圧力になるとの見方が出ています。


期待指数も43.0と前月比マイナス1.2となりましたが、雇用の項目は若干の低下に留まりました。


さらなる消費者のセンチメントの低下を抑制するには、米政府による迅速な景気対策の実施が期待されるところ、今後の推移が見守られるところかと思います。



大きく落ち込んだS&amp&#59;Pケースシラー住宅価格指数

1月27日(現地時間)、公表された昨年11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏)は、前月比マイナス2.2%、前年同月比マイナス18.2%となりました。


今回、大幅下落と言える水準と言えますが、ほぼ大方の事前の市場予想通りと思います。


ピーク時(2006年)と比べ、同指数は25.1%低下しています。


過日(1月26日、現地時間)に発表された昨年12月の米中古住宅販売は予想外に増加し、住宅市場が最悪期を脱した可能性があるとの見方も出ていました。


これは、価格が大幅に下落したことで、住宅購入が賃貸より安くつく状況に変わりつつあるとの見方によるものでした。


今回の下落は事前に予想されたものとはいえ、改めて米国住宅市場の厳しさを示したと思います。


日本の都市部の住宅地の価格がバブル崩壊後の下落した幅に比べ、まだ下げ幅は足りないとする見方もあり、市場には、S&Pケースシラー住宅価格指数が、2010年までに、さらに20~25%下落する可能性があると予想する向きもあるようです。


今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月27日火曜日

アイスランドの連立政権崩壊に思うこと

1月26日(現地時間)、アイスランドの連立政権が崩壊しました。


連立政権崩壊の要因は、金融、経済危機と言えます。


アイスランドは、金融危機に際し、IMFなどから資金を調達しましたが、経済危機にあって通貨のアイスランドクローネは暴落、失業率も増加する中、こうした資金を返済していくことが出来るか、経済状況の行き詰まりが政治に波及したと言えます。


現在進行中の国際的な金融危機と大幅な景気後退は、思い切った政策が重要ですが、短期的に目に見える効果は期待することが難しいと考えられるところ、支持率の高い安定政権が樹立できるかどうかの重要性を再認識した次第です。


米政権は圧倒的な支持率を確保していますが、イギリスでは2008年5月に行われた統一地方選挙で保守党が躍進し、労働党が歴史的敗北を喫し、同年9月の労働党大会後、支持率の差は縮まっている他、ドイツでも総選挙を控えるなどの状況にあります。


国際的な金融、経済の行方を占う上で、各国の政治の重要性が高まっているような気がします。



子供兵士に関する国際裁判が公判開始

1月26日(現地時間)、オランダ・ハーグで、コンゴの反政府抵抗勢力が子供兵士を使ったことが戦争犯罪として国際刑事裁判所(ICC)にかけられました。


ルバンガ被告は、アフリカのコンゴにおける内戦で、反政府抵抗勢力であるコンゴ愛国者同盟の指導者でした。


ルバンガ被告は、15歳未満の少年・少女を兵士として戦闘に参加せたことが戦争犯罪として裁判になっているものです。


今後、子供兵士、子供兵士の親が証人として出廷するようです。


ルバンガ被告は無罪を主張しています。


仮に、有罪となれば、服役は最長30年となるとみられます。


今回の公判まで約6年半かかりましたが、年内に審理は終了する見通しのようです。


個人的には、まだ経験、知識が十分発達しておらず是非を十分に判断する能力に欠けると考えられる子供を兵士として用いることそのものが問題と考えます。


報道によれば、コンゴでは、子供兵士を戦闘に参加させ、殺害、強姦、放火を行わせ、自らの護衛に当たらせるといった行為があったようですが、裁判でどの程度立証されるかどうかが重要と思います。


今回の国際裁判は、戦争犯罪や、コンゴ以外での子供兵士問題に対する国際的な姿勢を示すとともに、現在ICCに非加盟の米国の国際協調路線を占う上でその対応が見守られるところかと思います。



2009年1月26日月曜日

インドのシン首相の心臓手術と今後の行方

インド政府は、1月24日(現地時間)にインドのシン首相は心臓のバイパス手術を受けたところ、経過は良好に推移していると発表したようです。


国民会議党が主導するインドの現連立政権の任期は今年5月までであり、5月前に総選挙が始まる見通しです。


シン首相は今年76歳の高齢にあり、手術後に休養を経て、政治活動への復帰は3月ごろになるとの見方もあるようです。


インドの与党(国民会議党)は、シン首相の後任者を考えていないと表明しているようです。


シン首相の復帰まで、ムカジー外相がシン首相の代行にあたるようです。

シン首相の復帰のタイミングはどうなるのか、現時点でシン首相の手術と休養は、近い将来の総選挙を前にして、インド政権与党にとって、大きな打撃と言えます。


1月25日(現地時間)、インドの首都ニューデリー近郊で同日未明、パキスタン人テロリストと見られる男2人と銃撃戦の末、射殺したと発表したようです。


次期総選挙は、与党も野党も圧倒的な勝利を得ることはできず指導力は限定的になるとの見方があるようですが、アドバニ元副首相を次期首相候補とする野党(インド人民党)も、最近、産業界からのモディ州首相に対する支持が広がっているなど、体制は磐石とは言えないようです。


経済、治安で、大きな課題に直面しているインドの政権、選挙、政策の行方が見守られるところかと思います。



本日は春節、注目される東アジア地域の消費動向

1月26日は、東アジアの多くの国で、春節(旧正月)にあたります。


中国は、1月25日から春節を祝う1週間の大型連休に入りました。


中国メディアによれば、中国政府は、春節を前に、約7400万人の生活困窮者に1人100元(約1300円相当)から180元(約2400円相当)を給付したようです。同国浙江省杭州市でも、春節を前に、貧困家庭、退職者、小・中・高校生を対象に総額約1億元(約13億円相当)の消費券を給付したようです。


海外メディアによれば、台湾政府は、春節を前に、金券として利用できる消費券が、約2300万人を対象に、1人3600台湾元(約1万円相当)を配布したようです。


中国は多発する失業者によるデモやストへの対策という面があるようですが、いずれも景気刺激策を兼ねていると思います。


TVでの放送を見ると、中国では春節の飾りつけを行い、お祭りムードに包まれているように感じましたが、東アジア地区の消費の落ち込みは欧米ほどではないとの見方の中、春節の消費がどのように推移するのか、景気刺激策の効果や今後の東アジア地域の消費マインドを占う上で注目されるところかと思います。



2009年1月25日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


26(月)
(海外) 米 景気動向指数 12月
    米 中古住宅販売 12月

27(火)
(国内) 企業向けサービス価格指数 12月
(海外) 米 S&Pケースシラー住宅価格指数 11月
    米 消費者信頼感指数 1月


28(水) 
(海外) 米 FOMC政策金利発表
    米 MBA住宅ローン申請指数 先週


29(木)
(国内) 商業販売統計 12月
(海外) 米 失業保険新規申請件数 先週


30(金)
(国内) 鉱工業生産 12月
    消費者物価指数 12月
    失業率・有効求人倍率 12月
    家計調査 12月
(海外) EU ユーロ圏失業率
    EU ユーロ圏消費者物価指数


28日にFOMCは政策金利を公表予定ですが、昨年のFOMCで、FF金利誘導目標を0~0.25%に引き下げることを決定しています。

金利引き下げ余地はほとんどありませんが、さらなる流動性供給の決定を期待する向きもあるようです。


厳しいマクロ指標の公表が確実視されるとともに、企業決算の発表が行われる見通しであり、減益幅や次期決算見通しが気にかかるところかと思います。



厳しさを増す地域経済

1月23日、北海道商工会議所連合会が発表した2008年10-12月期の道内中小企業の業況判断指数(DI)は、マイナス53.9となったようです。

これは、北海道拓殖銀行が破綻した直後に記録したマイナス54.3(1998年7-9月期)に次ぐ水準のようです。


現在までのところ、景気後退による生産の落ち込みは、マクロ指標からすると、既に前回の金融危機を上回っていると考えられるところ、日本の各地域経済へ与える影響が懸念されるところです。


ちなみに、中小企業基盤整備機構調べによる各都道府県別の中小企業の業況判断DI(製造業、2008年10-12月期)で、前期比で落ち込み幅の大きい都道府県は、次の通りです。


都道府県別の中小企業の業況判断DI(製造業)
2008年10-12月期 前期差


富山県 -26.0
神奈川県-24.1
大阪府 -21.2
長野県 -20.8
徳島県 -20.1
石川県 -18.6
福井県 -17.7
山口県 -17.5
鹿児島県-17.5
福島県 -17.1
山形県 -14.4
三重県 -13.4
愛知県 -12.6
栃木県 -12.5
静岡県 -12.4
滋賀県 -12.1
岡山県 -11.8
山梨県 -11.4
青森県 -11.2
島根県 -11.0
愛媛県 -11.0
東京都 -10.5
香川県 -10.2

(出所)中小企業基盤整備機構



2009年1月24日土曜日

日本銀行のCP買取決定に関し感じること

過日、日銀は、債務履行能力が高い格付けのものに限り、コマーシャルペーパーを買い取ることを決定しました。


今回の決定によれば、CPは、a-1格相当のCPに限る等の条件のようです。


短期債の格付けがa-1というと、必ずしも全てに当てはまるものではないかも知れませんが、発行体格付は、シングルA格以上で、上場会社の中でも限定されるというイメージです。


大手企業であっても資金調達が思うように進まない場合があると言われる中にあっては、大手企業の資金調達を支援することで、結果として中小企業の資金調達を円滑にする効果を期待するということは理解できます。


また、中央銀行の財務の健全性は重要であることは理解できます。


今回のCP買取決定に関する説明の際、日本銀行は、予想インフレ率は、今のところ大きく下落するという感じはではなく、デフレスパイラルに陥っていくという感じではないとコメントしたようです。


物価変動は、基本的には、経済全体の供給力に対して実際にどれだけの総需要が存在するかが、重要な決定要因であると考えられ、この、経済全体の供給力と総需要の乖離を、一般にGDPギャップと呼び、物価変動圧力を評価するための基本的な指標の一つとして日本銀行も理解しているところ、日本銀行の公表資料からみて、GDPギャップはマイナスが拡大していることは日本銀行も認識しているところかと思います。


急激に進む景気後退と金融市場の混乱が続く中、英国は量的緩和を視野に入れた発言をし、米国は不良債権買取を検討するなどの動きにあります。

日本の政府や中央銀行はというと、個人的には、勝手な憶測ながら、欧米の傷は深くとも、日本は大丈夫との思いからか、対応スピードは決して迅速なようには感じないというのが率直なところです。


期待をこめて、今後の推移を見守りたいと思います。



ジンバブエのコレラ感染拡大

海外メディアによれば、ジンバブエで、コレラの感染が都市部から農村部に拡大しているようです。


都市部から農村部への移住するという人の流れの中で感染が拡大しているようです。


WHOによれば、コレラ感染による死者(2008年8月以降)は、昨年末時点でおよそ1560人だったものの、最近時点では2755人に達したと報告しました。感染者は4万8600人以上としています。


ジンバブエで拡大するコレラ感染は、隣国の南アフリカに達している模様です。

ムガベ大統領への国際的な批判の中、同国経済は超インフレに見舞われています。


南アフリカの仲介が行われるも、ジンバブエの与野党間の対話は期待通りに進まず、ムガベ大統領は、一方的に政権を樹立するとの見方が強まっているようです。


昨年12月、日本の日赤派遣の緊急医療チームが、ジンバブエに医療支援のため派遣され、過日(1月18日)に帰国しました。


国際社会は同国への批判を繰り返し、経済制裁を行い、人道支援を行っていますが、同国の混乱は続いています。


過日、ジンバブエのムガベ大統領夫人の派手なライフスタイルとジンバブエ人民の苦境を対比して報じようと、同夫人の香港での行動を追いかけていた英国人報道カメラマンが、同夫人の写真を撮ろうとして夫人から顔を殴られるなどの暴力を振るわれたとの報道が出るに至っては、政治的独裁者の滑稽さと行く末を思わずにはいられませんでした。

今後、適切なアプローチによって同国の混乱が収拾されることを期待するものですが、一部には武力をもって解決することも必要との意見が出されているようです。今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月23日金曜日

米国の新規失業保険週間申請件数は予想を上回る増加

1月22日(現地時間)、米労働省が発表した新規失業保険週間申請件数(1月17日までの週)は58万9千件となりました。


その前の週の52万7千件から増加しました。


これは、大方の事前の市場予想を上回る水準でした。


米労働省は、一部の州で年末の休暇シーズンにより新規失業保険の申請処理手続が遅れたことが申請件数の押し上げにつながった可能性があるとの見方を示したようです。


新規失業保険週間申請件数は失業率の先行指標と言えます。


オバマ政権による雇用、景気対策への期待が高まりそうですが、高い支持率を示すオバマ大統領就任演説で国民にも責任を果たすべき新たな時代に立ち向かうよう呼び掛けたことから、米国民は我慢を受け入れるとの見方が示されています。


オバマ政権の進める環境関連の政策は、雇用への効果は限定的と言われるところ、老朽化した橋などへの公共投資による経済効果に期待がかかっています。


短期的な失業率の大幅改善は困難とみられるところ、オバマ政権の政策の早期実行と効果に期待しつつ、その行方を見守りたいと思います。



スリランカ政府軍は反政府武装組織の本部を制圧したと表明

海外メディアによれば、スリランカ政府軍は、反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラの本部のあるダルマプランを掌握したと表明しました。


反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラの本部の建物を制圧し、反政府軍の駐留している地図も入手したとのことであり、スリランカ政府軍にとって大きな勝利と言えます。


スリランカと日本との貿易額は約589.7億円(2005年)で、日本はスリランカにとって重要な貿易相手国(輸入、輸出とも第6位)になっています。


福田首相時代、石油探査に関する日本とスリランカの会談が行われ、日本によるスリランカの石油とガスの発掘に関して提案した関係にもあります。


2008年1月にスリランカ政府は、反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラとの停戦合意が破棄され、政府は反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラ根絶を宣言していました。


既に戦闘により数万人の死者が出ていると言われており、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月22日木曜日

欧州の金融政策の行方

1月21日(現地時間)、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は、海外メディアとのインタビューの中で、2%が必ずしも政策金利の最低水準ではないが、ゼロ金利政策は意図していない旨の見解を明らかにしたようです。


1月20日(現地時間)、英国中央銀行総裁は、講演で、まだその局面ではないとしながらも、量的緩和も視野に入れる考えを示唆したようです。


これらのみを見る限り、ECBと英国では温度差は小さくないように感じます。


1月21日(現地時間)、海外メディアは、欧州系大手金融機関クレディ・スイスは、2008年、最大60億スイスフランの損失に達した可能性があると報道しました。


現在、金融不安の再燃が指摘される中、円高が進んでいます。


日本Yen/米ドル
 年初=91.167
 最近=87.808
 

日本Yen/EUユーロ
 年初=127.13
 最近=112.99


これは、資金逃避的なものとの見方にありますが、仮に、こうした見方が正しいとするならば、欧米の金融政策の行方や欧米系金融機関の決算動向が影響する可能性があると思います。今後の推移が見守られるところかと思います。



安全保障に関し公約の実現に動き出したオバマ政権

1月21日(現地時間)、イスラエルは、ガザに侵攻していた地上部隊の撤退を完了したと表明しました。オバマ大統領の就任時点では大半のイスラエル軍が撤収していたようです。


同日、オバマ米大統領は、安全保障に関する会合をホワイトハウスで開き、イラク駐留米軍の早期撤収に向けた作業に着手するよう指示したようです。オバマ大統領はイラクからの撤退を公約していました。


同日、オバマ米大統領は、キューバにある米海軍グアンタナモ基地の特別軍事法廷に対し、審理を停止するよう要請しました。これはブッシュ政権でテロとの戦いで象徴的な存在であったグアンタナモ基地を閉鎖するとの公約にもとづくもののようです。


オバマ大統領は、安全保障に関する公約の実現に向けて動き出したようです。


今後、経済、金融に関する動きの行方が見守られるところかと思います。



2009年1月21日水曜日

オバマ大統領就任

1月20日(現地時間)、米国でオバマ大統領が就任しました。


就任演説で、米国は厳しい経済情勢に直面しているとの認識の下、雇用対策、公共投資の実施、産業の創出などを表明しました。


TVで中継放送を見ていたところ、日本時間21日午前5:30頃よりパレードが始まり、沿道は多くの人で埋め尽くされ、ワシントンはお祭りムード一色であるようにTV画面を通じ感じました。


同日、米国の主要株式指標であるNYダウ終値は7,949.09と前日比マイナス332.13(同マイナス4.01%)となりました。


これを見る限り、米国株式市場はご祝儀相場とはいかなかったようです。

今後、米国では厳しいマクロ指標の公表が続くとみられるところ、オバマ大統領が適切な政策を適時に打ち出せるかどうか、自動車メーカー支援問題、雇用対策、景気対策、金融対策などの推移が見守られるところかと思います。



クライスラー・フィアット資本・業務提携の報道内容を見た印象

1月20日(現地時間)、米自動車大手クライスラーは、伊フィアットから35%の出資を受けること等で合意したと発表しました。


事業面では、生産設備の共有、技術供与等を予定しており、関係筋の見方として報道によれば、提携による経費節減効果は30億-40億ドルが見込まれるようです。


フィアットは、米市場への本格進出の足がかりになることを重視したとのことです。

これら報道は情報も限られ、単なる印象に過ぎませんが、今回の提携内容は、米国自動車市場の需要が今回の景気後退以前の水準にそう遠くない時期に回復することを前提としているように思われます。


今回の資本・業務提携は、米政府からの支援を受ける材料としては有効かも知れませんが、これをもって経営を強く安定させる効果が強く期待できるようには感じられないというのが率直なところです。


米政府支援の適否に関する経営計画の議論の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月20日火曜日

EUの動き

1月19日(現地時間)、EUの欧州委員会は、2009年のユーロ圏の実質経済成長率について、前年比マイナス1.9%になるとの見通しを発表しました。


昨年11月の予想(前年比プラス0.1%)から、大幅に下方修正しました。


2010年はプラス成長(前年比プラス0.4%)と予想しています。


海外メディアによれば、同日、ECBのトリシェ総裁は、現在の景気減速の大きな要因は、原油など商品価格の値上がりだったが、これは同時にインフレ的・引き締め的だった。最近の商品価格の値下がりはディスインフレ的・緩和的といえる。旨を表明したようです。


こうした発言からすると、ECBはゼロ金利を望んでいないとのスタンスに変化は無いように思えます。


今後の推移が見守られるところかと思います。


蛇足ながら、EUに関して、


1月19日(現地時間)、EU本部のあるベルギーのブリュッセルを訪問しているトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン首相は、EU加盟に弾みがつくことを期待していると表明したようです。


昨年11月、トルコ国営ガス会社、ロイヤル・ダッチ・シェルは、イラクでの天然ガス探索や販売に関する提携を発表しました。


1月19日、ロシアのプーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相立会いの下、ウクライナ経由のロシア産天然ガス供給の再開で合意しました。


カスピ海地域等を供給元とする、トルコ経由欧州向けパイプラインが進展は、将来的にはロシアからの天然ガス調達との関係に影響するのかも知れません。


今後の行方が見守られるところかと思います。



英国の追加金融対策の公表と行方

海外メディアによれば、1月19日(現地時間)、英国は、追加の金融対策を発表しました。


今回、金融機関の貸し渋り対策として、実施するもので、銀行の不良債権の損失を公的資金で肩代わりするもので、住宅ローンによる損失を含むとのことです。


RBS(ロイヤルバンクオブスコットランド銀行)への出資も高める予定です。


ブラウン首相は、今回の対策決定に関する会見で、追加金融対策で貸し渋りを抑制することで、結果として不必要な失業を回避する旨を言及しました。EU通貨圏に加盟していない英国政府は、金融対策として既に6000億ポンドを投下しており、今回の追加対策で合計1兆ポンド(約130兆円)に達する見通しのようです。


英国内では、野党議員から批判も出てきている模様であり、追加対策の効果が現れるのか、仮に、期待した成果が現れなければ、現政権は政治的に強い批判を受ける可能性があると思われます。


英国の金融対策は国際的に先行している傾向があり、一定の成果を期待しつつ、その行方が注目されるところかと思います。




2009年1月19日月曜日

札幌北洋HDに対する公的資金注入

報道によれば、北海道を基盤とする第二地方銀行最大手の北洋銀行を傘下に持つ札幌北洋ホールディングスは、公的資金の注入を申請する方向で検討に入ったとのことです。


同行は、2008年10月に合併したばかりでした。


第2地銀中、北洋銀行の自己資本比率は8.45%(第2地銀45行中31位)、札幌銀行は10.75%(同45行中7位)であり、これだけみると、自己資本充実に切迫感は無い様に思えます。

(注)自己資本比率は2008年3月末。国内基準。


ただ、北海道経済は、昨年の洞爺湖サミットの遺産を活かした活性化を期待するものの、日銀の発行するさくらレポート(2009年1月16日発行)によれば、個人消費は厳しい状況にあるなど、国内の地域経済で最も厳しい状況にあるとみられます。


一般に、地銀は、地域経済動向の影響を強く受ける傾向が強いと考えられます。

また、地域経済は比較的堅調であったとしても、多くの地銀が存在する場合、地銀は厳しい競争環境におかれることになります。


適時適切な新金融強化法の有効活用により、必要に応じ金融機関の再編が進み、金融の安定化につながることを期待したいと思います。



イスラエルの一方的停戦

各種報道によれば、過日(1月17日)、イスラエルはガザに対する攻撃の一方的停止を発表、一旦は攻撃を停止したものの、ハマスの攻撃続行に対抗してて、限定的ながら攻撃を継続しているようです。


エジプトを仲介役として、停戦に向けた交渉が行われるようですが、重大な局面にあると理解されます。


しかし、中東諸国の中には、イスラエルによるガザの封鎖そのものが、緩やかな死につながるものであり問題であるとする見方があるようです。


イスラエルは、昨年の停戦で、ハマスに武器密輸を自由に許してしまったと考えているようです。


ハマスは、ガザ市民に人道支援や生活に必要な物資が届くように、すべての境界検問所を開放すべきと、ガザ封鎖の解除を訴えています。


停戦の具体的内容と、オバマ次期大統領就任後のイスラエル・パレスチナの交渉の行方が見守られるところかと思います。



2009年1月18日日曜日

週明け後の主な予定

週明けの主な予定は次の通りです。


19(月曜)

(国内) 鉱工業生産 11月

(海外) EU ECBトリシェ総裁 スピーチ

     EU 欧州委員会 経済成長見通し

     

20(火曜)

(国内) 月例経済報告

      消費動向調査

(海外)  米 オバマ新大統領就任式


21(水曜)

(国内) 景気動向指数 11月


22(木曜)

(国内) 貿易統計 12月

     白川日銀総裁 会見

(海外) 米 失業保険新規申請件数

     米 住宅価格指数


週明け後、20日は、オバマ次期米大統領の就任式ですが、昨年来、オバマ次期政権への期待は話題になり、ある程度相場に織り込まれているのではないかと思われます。



報道には一部違和感を感じるが、オバマ政権下での不良債権の本格買取に期待

報道によれば、米政府と金融当局は、米国オバマ次期政権のもとで、金融機関の不良債権を本格的に買い取る計画を検討しているとのことです。


報道機関にもよるかもしれませんが、金融機関への資本注入効果に疑問があるので不良債権買取を優先する旨の報道内容が散見されるところ、この点につき、実際に米政府と金融当局の考えを記事にしているのかどうか個人的には違和感を感じるところです。


2005年のペイオフ完全解禁を前に導入された日本の金融機能強化法は、公的資金投入の前提として経営責任の明確化を条件にしていたところ、用意された2兆円の資金のうち、実際に使われたのは約4百億円に過ぎませんでした。


今回、オバマ次期政権は昨年導入された米国の金融機能安定化法にもとづく資本注入の効果に疑問をもっているとの記事が散見されましたが、資本注入のみで金融機能を早期に安定化させることは明らかであると考えられると共に、日本の金融機能強化法と同様に米国の金融機能安定化法の制度そのものの問題もあるように思います。


基本的に、資本注入と不良債権買取は、何れも金融機能を安定化させるためには重要な方法であり、適時に導入することで、金融機能の早期回復が期待できると考えられているのではないかと思います。


報道機関にもよるかと思いますが、自分が目にした報道内容には一部違和感を感じるものの、オバマ次期政権が、実効性のある不良債権の本格買取の仕組み導入を強く期待するところであり、今後の推移を見守りたいと思います。



2009年1月17日土曜日

最近の雑誌記事を読んで

最近発行された雑誌で、「SECの規制緩和により、資産担保証券に関する適切なデューディリジェンスが行われていなかったことが米国金融市場の混乱に影響した」、「大手投資銀行に対する純資産規制が緩和されたことが米国金融市場の混乱に影響した」旨を指摘した記事を読みました(NBL No.896、p.4)。


景気後退の行方を占う上で、金融市場の安定は重要と考えるところ、オバマ次期大統領がどのような政策を打ち出していくか、今後、金融市場における安定した資金供給の確保が可能になるような政策が打ち出せるか、また重要な金融市場に対する規制のあり方を含め、今後の推移を見守りたいと思います。



僅かながら改善した米国ミシガン大消費者信頼感指数をみて思うこと

1月16日に公表された米国の1月のミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は、61.9と、12月の60.1から改善しました。


水準そのものは低水準であり、米国の景気後退を反映していると言えます。


しかし、僅かではあっても改善したことをどう理解すればよいのでしょうか。


多くのマクロ指標は、米国の景気後退が厳しさを増していることを示しています。


米国のクリスマス商戦が期待したほどの水準に達せず、年が明けて、消費者心理が改善するような動きがあったのでしょうか。


想像するに、一つには、オバマ次期米大統領の就任を目前にして期待の表れかも知れません。


先日(1月15日)、このブログで、米国の昨年のクリスマス商戦は価格の下落が期待したほどに需要を喚起しなかったと記しました。


しかし、1月の消費マインドが僅かであっても改善したというのであれば、価格下落は需要を僅かであっても喚起し、さらなる大幅な価格下落は回避できる可能性があると言えるかも知れません。


色々な見方があろうかと思いますが、速報値で今後確定値が出た段階で修正の可能性があり、また、1カ月だけの動きでは適切な判断は難しいという点などからすると、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月16日金曜日

ECBの政策金利引下げと次回G20

1月15日(現地時間)、ECB(欧州中央銀行)は、政策金利を0.5%引き下げ、2.0%としました。

これは、過去最低の水準です。

市場では大方の事前予想で引下げを予想していました。


市場では、今後さらにECBは政策金利を引き下げるのではないかとの見方が出されています。


昨年から国際的な協調利下げが続いていますが、これは、G7にロシア、ブラジルなどの新興国を加えたG20で、金融危機克服のため各国が緊密に連携し、経済・財政政策を総動員することで合意したことが大きな意味を持ったと思います。


次回G20は4月2日にロンドンで開催予定ですが、海外メディアのインタビューに対し、オバマ次期米大統領は、次回G20までに、金融規制に関する提案を示すとコメントしたようです。


G20に先立ち、G7(中央銀行総裁会議)が、2月13日~14日にローマで開催される予定です。


個人的には、今回の景気後退の行方を占う上で、金融市場の安定は重要な意味を持つと考えるところ、オバマ次期米大統領の提案に注目するものですが、今後の推移が見守られるところかと思います。



IASB/FASBの提案する財務諸表の表示に関する勉強会に出席して

1月15日の夕刻、アナリストを対象に、ASBJ(企業会計基準委員会)の研究員の方を講師として、IASB(国際会計基準審議会)/FASB(米国財務会計基準審議会)の提案する財務諸表の表示について勉強会が行われました。


定員150名の会場は、多くの出席者で占められ、高い関心の下、約1時間に亘り、講師より、資料を元にポイントについてご説明頂きました。


今回の勉強会は、IASB/FASBによって公表された「Preliminary Views on Financial Statement Presentation」(2008年10月)に対するコメントを2009年4月19日まで募集していることにもとづくものでした。


IASB/FASBは、財務諸表の表示を大きく変更することを提案しており、アナリストの分析業務にも多大な影響を与える可能性が高いと思われます。


例えば、キャッシュフロー計算書を直接法で表示することや多くの調整表を作成しなければならない点などが実務上の観点から十分な検討が必要ではないかとの指摘があるようです。


以前の報道では、利益計算書が包括利益のみになるのではないかとの観測もありましたが、今回のIASB/FASBの提案する財務諸表の表示では、当期純利益も残ることになり、日本の多くの関係者はひとまず良かったとの印象をもったのではないかと思います。


アナリストの企業分析実務としては、例えば、セクターによっては、流動資産と固定資産との間の振替については重要な意味をもつとして着目した分析を行っていますが、今回の提案ではどう取り扱われるかなどに関し質疑が交わされました。


日本の対応は、IASB/FASBでの議論を終えた後に検討することになるようですが、導入となれば、影響は大きく、今後の議論の推移が注視されるところかと思います。




2009年1月15日木曜日

シリアのアサド大統領に対するインタビューを見て

海外メディアによるシリアのバッシャール・アル・アサド大統領に対しインタビューが行われ、アサド大統領は、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃についてコメントしました。


今回のインタビューで、アサド大統領は、


イスラエルの攻撃は、自国に対するロケット弾攻撃に対抗したものだという理由で正当化されるとは思わない。


何故なら、停戦期間中、イスラエル側に死者は出ていないが、ハマス側は暗殺により多くの死者が出ている。


今回のイスラエルの攻撃は、結果的に、イスラエル攻撃の過激化を高めるものになると予想する。


という旨のコメントを話しました。


シリアは、1991年のマドリッド会議に端を発する現行の中東和平プロセスを支持しており、中東和平問題など中東情勢の鍵を握る重要な立場にある国と一般に理解されています。


今回のシリアのアサド大統領のインタビューのTV放送をみて、仮に停戦に達したとしても、停戦後の中東情勢の安定化への道のりは容易ではないと改めて感じた次第です。



米国小売売上高は市場予想を上回る減少へ。企業在庫を含めた行方に注目。

1月14日(現地時間)、米商務省が発表した12月の小売売上高は、3432億ドル、前月比2.7%減少となりました。


昨年末(12月30、現地時間)に米コンファレンス・ボードが発表した12月の消費者信頼感指数は38.0と、1967年の調査開始以来最低となっていました。


また、昨年のクリスマス商戦は、大幅な値下げを行ったと一般に理解されている他、クリスマスシーズンに米国北東部は大雪に見舞われました。


事前の大方の市場予想は、前月比での減少を織り込んでいました。


しかし、減少幅は大方の市場予想を上回るものになったようです。


同日、米商務省が発表した昨年11月の企業在庫の対売上高在庫比率は1.41カ月で、2001年9月以来の高水準となりました。


米国のクリスマス商戦は、大幅な値下げを行ったとの理解ですが、価格の下落が期待したほどに需要を喚起しなかったという意味で、今回の小売売上高のニュースは先行きの景気後退見通しにとって懸念材料と言えると思います。


今後、企業在庫を含め、その推移が見守られるところかと思います。



2009年1月14日水曜日

クリントン上院議員公聴会のTV放送を見た印象

クリントン上院議員の国務長官就任承認に関する公聴会のTV放送を見ました。


2008年米大統領選でオバマ氏とクリントン氏が争っていた当時、オバマ氏は、クリントン氏がイランの革命防衛隊をテロ組織と指定する方針に賛成したことを非難するなど、クリントン氏のイラク、イラン両国に関する外交政策を非難していました。


こうした経緯から、クリントン氏がどのような発言をするのか関心を持って見ていました。


今回、自分が見たTV放送の範囲では、クリントン上院議員は、イスラエル・パレスチナ問題、イラン問題などに言及し、オバマ次期米大統領の打ち出している国際協調を軸に軍事偏重によらずに対処する旨を表明していました。


自分はクリントン上院議員に対する公聴会の全てを見たものではありませんが、TV放送から受けた印象としては、現時点でクリントン氏はオバマ氏の外交に対する考えに立っていく旨を明確にし、オバマ政権はブッシュ政権の外交方針を国際協調主義に転換するのだと改めて感じた次第です。



ロシア発ウクライナ経由ヨーロッパ向けガス送出は再開したものの

1月13日(現地時間)、海外メディアによれば、ロシアのガスプロムは、ウクライナ経由ヨーロッパ向けガス送出を再開したとのことです。


しかし、まだヨーロッパにはガスは届いていないようです。


ロシアは、ウクライナが妨害しているからだと非難しています。


ウクライナは、ロシアが以前と異なるルートで送出したのが原因としています。


また、そもそもロシアからガスが送出されたとしてもヨーロッパに届くまでには技術的に時間を要するとの見方もあるようです。


今回、ロシア発ウクライナ経由ヨーロッパ向けガス送出再開のニュースは喜ばしいものですが、問題の発端となったロシア・ウクライナ間のガスの価格に関する対立は続いており、ロシアのウクライナ向けガス送出は、依然停止しているようです。


問題の完全な解決にはまだ時間がかかるようです。



2009年1月13日火曜日

南アフリカの汚職疑惑裁判と気になる同国政情の行方


南アフリカの次期大統領候補で与党ANC(アフリカ民族会議)のズマ議長の汚職疑惑に関する裁判が続く見通しです。


1月12日(現地時間)、南アフリカの最高裁判所は、ズマ議長に対する収賄罪などの公訴を棄却した高裁の判決を破棄したとのことです。


これに対し、ズマ議長は、最高裁判決は憲法違反として憲法裁判所に訴えると主張しているようです。


南アフリカでは、4月に総選挙が行われる見通しです。


現時点では、ANCにとっての大統領候補はズマ議長が唯一であり、仮に、ズマ議長に対する収賄罪に関する判決が出されたとしても、ズマ議長の大統領選出は変わらないとの見方にあるようです。


しかし、昨年12月、反ズマ派は新党を結成し、94年以降、政権を維持してきたANCは分裂状態にあり、政局は流動化している状況です。


日本は、特殊鋼の材料であるクロム、マンガン、バナジウム、プラチナなど多くのレアメタルの輸入の約半分を南アフリカに依存しています。


また、南アフリカは、アフリカだけでなく広く途上国の代表として行動してきた経緯があります。


仮に、南アフリカの政情が不安定になると、日本の製造業にとって少なからぬ影響を与える可能性があるとともに、先進国とアフリカないし途上国との対話に悪影響が出る可能性があります。


今後の南アフリカ情勢の推移が見守られるところかと思います。



ブッシュ大統領の最後の記者会見

1月12日(現地時間)、ブッシュ米大統領は、大統領としての最後の記者会見を行いました。


ブッシュ米大統領は、任期中の失策に関しても言及したようです。


率直にブッシュ大統領自らが失策を認めたとも言えるコメントもあったようですが、自らの正当性を主張しただけとの一部マスコミの評価も出ました。


ブッシュ大統領の8年の任期中には、2001年の9.11米同時多発テロ、イラク戦争、北朝鮮の核開発問題、世界的な景気後退をもたらした金融危機など世界的に注目される出来事が多くありました。


ブッシュ米大統領の任期中、マスコミなどを通じ多くの意見や批判が出されましたが、実際のところはどうであったのでしょうか。


米国メディアとのインタビューで、ブッシュ米大統領は、退任後に回想録を執筆することに前向きな発言をしたようです。


数年の時間を要すかもしれませんが、ブッシュ米大統領の率直な回想録が公表され、後世にとって有益な歴史材料が提供されることを期待したいと思います。


ブッシュ米大統領の任期は残り8日、いよいよオバマ次期米大統領が就任します。



2009年1月12日月曜日

オルメルト首相発言から連想するイスラエルのガザ侵攻の行方 

海外メディアによれば、イスラエルのオルメルト首相は、ガザ攻撃は目標を達成しつつある旨を発言したようです。


イスラエルは、オバマ次期米大統領の就任前にガザ侵攻を決着させようとしているとの見方が出されています。


過日(1月5日、現地時間)、ブッシュ米大統領は、イスラエルによるガザへの地上侵攻について、自衛のためとして、イスラエルを強く擁護しました。


1月11日(現地時間)、ブッシュ政権は、昨年、イスラエルによるイラン核施設空爆の支援要請を拒否していたとの報道がありましたが、基本的に、ブッシュ政権は、イスラエルへの強い支持を鮮明にしてきたと理解されていると思います。


しかし、オバマ政権は、ブッシュ政権と異なり、国際的な対話路線を打ち出しており、イスラエルのガザ侵攻に対する姿勢もブッシュ政権とは変わる可能性が高いとみられます。


オバマ次期米大統領の就任式が行われる1月20日までに、イスラエル・パレスチナ間の停戦が進むのか。今後の推移が見守られるところかと思います。



中国の希少金属備蓄と市場への影響の可能性

報道によれば、中国政府は、新たに、銅や希少金属についても戦略備蓄体制を確立していく方針を明らかにしました。


中国の経済成長のために必要な鉱物資源を安定的に確保する目的とのことです。


中国の国土資源省が、鉱物資源の確保について2015年までの方針をまとめた計画書の中で明らかにしたものです。


詳細は不明ですが、希少金属は、中国だけが必要なものではなく、国際的に必要とされているものです。


金融市場の混乱が生じる以前、原油、銅、アルミ及び鉄鉱石等の市場価格は、中国の需要動向が影響していたと思います。


景気後退下で、需要が低下している現状では、短期的な可能性は高くないと思われるものの、今後、各国の警戒感が強まり、希少金属の価格が上昇していくシナリオがありうると思います。



2009年1月11日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


14日
(国内) 工作機械受注 12月 速報
(海外) 米国 小売売上高 12月


15日
(国内) 機械受注 11月

(海外) EU  ECB政策金利発表
    米国 NY州製造業業況指数 1月
    米国 卸売物価指数 12月
    米国 フィラデルフィア地区連銀業況指数 1月
    EU  ユーロ圏消費者物価指数

16日
(海外)米国 対米証券投資 11月
    米国 鉱工業生産 12月
    米国 ミシガン大消費者信頼感指数 1月 速報


市場は、15日にはECB(欧州中央銀行)が追加利下げに踏み切る見通しとしています。

各種マクロ経済指標が公表の予定であり、先行きの景気動向を見る上での材料になると思います。



景気後退期の株価

今年の株式相場はどのように推移するのでしょうか。


景気後退期の日経平均(225)と、同期間における高値、安値は下表の通りです。


過日(1月9日、現地時間)、経済を担当するヘネシー米大統領補佐官は、オバマ次期大統領の就任後、米経済が早期に回復する可能性が高い、との認識を示したようです。

市場の中には、株価の上昇リスクを想定すべきとの見方もあるようですが、基本的には景気動向の行方が注目されるところかと思います。



90年代以降の景気後退期と日経平均(225)


景気の山景気の谷高値安値
平成景気後1991/21993/1027270 (1991/3)14194 (1992/8)
金融危機1997/51999/120911 (1997/6)12787.9 (1998/10)
ITバブル崩壊2000/112002/115602.39 (2000/11)9382.95 (2001/9)


(注)高値、安値は日次終値ベース。



2009年1月10日土曜日

英国民はユーロ導入に反対との世論調査の示唆するものは何か

英国BBCの世論調査によれば、英国民の71%はユーロ通貨の導入に反対とのことです。


昨年、英ポンドは、対ユーロで約2割下落しました。


下落は2年連続であり、この点にのみ着目すれば、英国民は、ポンドを保有するよりも、ユーロを保有した方が、経済的に有利と言えます。


それにもかかわらず、英国民がユーロ通貨導入に反対するのは、一つには、自国通貨に強いこだわりがあることもあるのでしょうが、単純にそのように解して良いでしょうか。


個人的には、今回の景気後退局面で、現状の仕組みの上では、ユーロ通貨圏の金融政策等に限界が出始めていることが影響しているようにも思えます。


従来、概ね順調に推移してきたユーロ通貨は、長引くと思われる景気後退下の中で、今後も順調に推移していくのでしょうか。


仮に、景気後退が大幅かつ長期に及べば、ユーロ通貨は試練にさらされるようにも思えます。


今回の世論調査の結果は、果たして、何を示唆しているのか、時間の経過と共にはっきりとしてくると思います。


ポンド為替 対ユーロ 推移

2000年 -0.6% (ポンド高)
2001年 -2.5% (ポンド高)
2002年 4.2% (ポンド安)
2003年 6.9% (ポンド安)
2004年 0.3% (ポンド安)
2005年 -2.7% (ポンド高)
2006年 -1.9% (ポンド高)
2007年 8.8% (ポンド安)
2008年 21.4% (ポンド安)


(注)暦年 (出所)筆者作成



悪化した米雇用統計

1月9日(現地時間)、米労働省が発表した12月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月比で52万4000人減少(季節調整済み)し、失業率は7.2%となりました。

雇用者数の減少は、年間ベースでは戦後最大の減少、失業率は1993年7月以来の水準になりました。


市場の大方の事前予想は、今回の雇用統計の悪化を予想していたので、悪化そのものに驚きは無いと言えます。


悪化幅としては、事前の大方の市場予想より、失業率は悪いものでした。


市場では、中期的に雇用者数が数百万人減少するとの見方や、失業率は第4四半期までに8%を超えるとの見方があるようです。


今回の雇用統計に関連し、オバマ次期米大統領は、記者会見で、大胆な景気対策を早急に成立させる必要性がある旨を話しました。


オバマ次期米大統領は、景気対策に積極的な姿勢ですが、現在協議されている景気対策は8千億ドル以上に達する見通しにある事などに対し、金額的な規模が膨らむことを懸念する見方も出されているようです。


多額の景気対策を講じたとしても、米国の失業率を短期的に目に見える形で改善することは困難と思われるところ、オバマ次期米大統領の指導力をいかに持続していけるかが重要と考えます。


オバマ次期政権が、景気対策だけでなく、金融市場へも適切な対策を講じることに期待を込めて、今後の推移を見守りたいと思います。



2009年1月9日金曜日

ガスプロムはウクライナ経由の欧州向けガス供給再開を決定した模様

海外メディアによれば、1月8日(現地時間)、ロシアのガスプロムとウクライナの代表がブリュッセルで話し合いをしていたところ、ガスプロムが、ウクライナ経由の欧州向けガス供給を再開することで合意したようです。


東欧などでガス供給停止の影響が拡大する中、EUが調停開始を表明していたところでした。


ひとまず安心といったところですが、今後、ガス供給再開の合意が実行されるのか、その推移が見守られるところかと思います。



英国政策金利は史上最低の水準に引下げ


1月8日(現地時間)、英国イングランド銀行は、政策金利を0.5%引き下げ、1.5%としました。


これで、英国の利下げは4カ月連続となりました。


英国の政策金利は英国史上最低の水準になりました。


市場では、英国が政策金利のさらなる引下げを予想する見方があるようです。


同日、英国ブラウン首相は、金融機関の資本増強から、企業プロジェクトや住宅保有などに必要とされる資金確保に重点を移したいと述べたことから、量的緩和政策に踏み込むのではないかとの観測が出ていますが、ダーリング財務相は、量的緩和政策導入を否定したようです。


昨年11月、G20が開催され国際協調利下げが注目された当時、市場の大方の見方は国際的な利下げが続くというものでしたが、当時想定されていたスピードに比べ、格段に早まっています。見方にもよると思いますが、およそ2~3倍のスピードと感じます。


海外メディアによれば、ダーリング英財務相は、G20財務相会合を、3月14日に英国で開催すると表明しました。

4月2日にロンドンで開くG20首脳会合の準備会合となります。


英国は金融機関に対する規制強化を主張しているようです。

今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月8日木曜日

FOMC議事録公開とオバマ記者会見

1月7日(現地時間)、昨年12月15、16日のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録が公表されました。


①従来の金融政策は、金利目標を活用したものでしたが、超低金利による経済活動支援の効果が副作用より大きいと判断した。


②多くのFOMC委員が景気の一段の落ち込みに対して強い危機感を抱いていた。


③量的金融緩和へ移行した後も、経済見通しは暫く弱い状態が続くだろうと警戒していた。


④物価は、多くの委員が下振れリスクへの警戒感を強めていた。


以上の見方に立つとすれば、米国のゼロ金利政策は、当分続く可能性が高いと言えます。


同日、オバマ新大統領は、記者会見で次のように話しました。


①ブッシュ政権から1兆ドル超の財政赤字を引き継ぐことになる。景気対策の実施で財政赤字拡大に踏み込む。


②経済が正常化した段階で財政支出削減を実施する。


米国の2009会計年度の財政赤字のGDP比は8%超と、過去最悪だった1980年代の6%台を上回ります。

オバマ新大統領の景気対策の実施により、財政赤字はGDP比で10%近くにまで拡大するとの見方も出てきているようです。


こうした点のみに着目すると、米国のドル安は当面続きそうですが、 NEC(国家経済会議)議長に就任するローレンス・サマーズ元財務長官はドル高を是とする考えの持ち主との見方もあり、今後の推移が見守られるところかと思います。



ガーナで新大統領就任

アフリカのガーナでジョン・ミルズ新大統領が就任します。


昨年(12月28日)に実施された大統領選で、元副大統領の野党・国民民主会議ジョン・ミルズ氏が勝利したものです。


欧米のメディアは、今回のガーナの民主的な選挙が行われたと報道していますが、大統領選に敗れた与党・新愛国党は、投票で野党の不正工作があったと指摘するなど両陣営で緊張が高まっている点が気にかかります。


日本からは、小泉純一郎元首相が、ガーナの大統領就任式に首相特使として出席。


ガーナは、アフリカ連合及び西アフリカ諸国経済共同体の主要メンバーとしてアフリカ地域全体の平和と安定にも積極的に関与しています。


今回の選挙が、中期的に、アフリカの安定に貢献していくことを期待するところです。



2009年1月7日水曜日

中東情勢の悪化などを背景に原油価格急騰

1月6日(現地時間)、原油価格が急騰し、米国産WTI原油の先物価格は一時50ドルを超える水準となりました。


イスラエル軍によるガザへの地上攻撃が続いていますが、現時点では停戦の見通しになく、中東情勢の悪化が原油相場を押し上げたようです。


ロシアがウクライナのパイプラインを通じた欧州へのガス供給削減を決定したことで、ギリシャなどへのガス供給が途絶するなど影響が深刻化していることも原油価格との関係では懸念材料と言えます。


1月4日(現地時間)、アメリカン・エコノミックス・アソシエーションの年次会合で複数のエコノミスト(※)が、米国の景気低迷の直接の原因は住宅市場の崩壊だったが、米経済の景気後退に決定打をもたらしたのは、昨年夏の原油価格の高騰だったとの見解を示しました。

※IMFのチーフエコノミスト オリビエ・ブランチャード氏、カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェームズ・ハミルトン教授


今後の景気動向にとって原油価格の動向は気になるところですが、イスラエル・パレスチナ停戦の見通しが立たず、ロシア・ウクライナのガス問題も深刻化しています。


何れも問題が長引く懸念が指摘されるところですが、なるべく早期の解決を願いつつ、今後の推移が見守られるところかと思います。



米ISM非製造業指数は前月より改善


1月6日(現地時間)、ISM(米供給管理協会)が発表した非製造業総合指数(12月、NMI)は40.6でした。


過去最低だった前月(11月)の37.3から改善しました。

これは、事前の大方の市場予想を上回る水準でした。


しかし、改善したとはいえ、過去2番目の低水準にあります。


昨年12月、ISMは、2009年の非製造業部門は2008年対比で小幅増収になるとの見方を示していました。


依然として50を下回る水準にある非製造業総合指数は、今後回復していくのかどうか、製造業の減収が確実視される中、その推移が見守られるところかと思います。


非製造業総合指数(NMI)

2008年


12月 40.6
11月 37.3
10月 44.4
9月 50.2
8月 50.6
7月 49.5
6月 48.2
5月 51.7
4月 52.0
3月 49.6
2月 49.3
1月 44.6


(出所)ISM



2009年1月6日火曜日

影響が拡大しているロシア・ウクライナのガス問題

EU域内に対するロシア産ガスの供給量が減少しているようです。


海外メディアは、1月5日、ギリシャやクロアチアでもロシア産ガスの供給量が減少したと伝えました。


ロシアのガスプロムは、ウクライナが違法にガスを抜き取っている旨を主張しています。

一方、ウクライナ側は、ロシアが欧州向け供給量を減らした旨を反論しています。


EUは実態解明に向けウクライナに調査団を派遣したようです。


同日、ロシアのプーチン首相は、ガスプロムに対し、ウクライナ経由のEU向けガス供給量を削減するよう命じました。

ガスプロムは欧州向けの輸出について、ウクライナ経由以外のルートにより供給を維持するとしています。


ロシアとウクライナのガス問題の影響は拡大しており、政治、経済への影響が懸念されるところ、早期の解決を期待したいところです。



有力中小企業の破綻と今後の中小企業倒産の行方

アンデス電気(本社:青森県八戸市)が、民事再生手続きの開始を申し立てたようです。


同社は、中小企業庁の"元気なモノ作り中小企業300社"に選ばれた企業で、1995年に液晶カラーフィルターの事業化に成功し、携帯電話の普及に伴って急成長しました。

グループ会社2社を含めた液晶カラーフィルターの年間生産能力は240万シート(携帯電話2億4,000万台分)を有し、世界の携帯電話の約30%のシェアを占有していました。


今回の破綻は、信用調査機関によれば、相次ぐ設備の先行投資に伴う借入負担や新工場立ち上げの遅れから、収益面は不安定な状況が続いていたことに加え、2008年9月期以降の受注が急減したことが背景にあるようです。


信用調査機関によれば、2008年1月~11月の倒産件数は前年同期比で15~16%程度の増加でした。
これはほぼ2003年の水準とみられます。


前回のわが国の金融危機当時の動きでは、2002年に企業倒産件数がピークを打ってから、株式相場は復調していきました。


今回の景気後退が少なくとも前回の金融危機以上の大きさとすれば、2002年の水準を上回る企業倒産件数を記録する可能性が高いと推察します。


今後の企業倒産の行方が気にかかるところですが、初めて景気後退を経験するバーゼルⅡの影響を踏まえると、中小企業に対する資金繰り支援が従来以上に重要になるのではないかと思います。


今後の政府の対応などの行方が注目されるところかと思います。



2009年1月5日月曜日

本日は大発会

2008年は、日本の株式市場の売買シェアで約6割を占める外国人投資家の日本株離れが進みました。


外国人投資家が売り越しに転じるのは、ITバブルが崩壊した2000年以来のことでした。


本日は、各証券取引所の大発会です。


今年の日本株はどのように推移するのでしょうか。


ファンダメンタルズの問題が重要ですが、現在は国際的な政治の指導力が重要な局面にあり、海外から日本をみると、日本の政治指導力の回復が、日本の株式相場にとって重要との見方があるようです。


1月4日、麻生首相は、年頭の記者会見を行い、衆院解散時期について、2009年度予算と関連法案の早期成立が重要であり、それまで解散は考えていない旨を話しました。

今後の推移が見守られるところかと思います。



NHK番組における日銀の白川総裁の話と金融政策への姿勢

1月4日、NHKの番組の中で、日銀の白川総裁は、ゼロ金利政策や量的金融緩和政策に関し、前回のゼロ金利、量的緩和の効果・副作用についての分析・総括を踏まえて考えていく旨を話しました。


白川総裁は、政策決定にあたって、幅広い意見やデータを踏まえた上で、一旦決定した後は、短期的な評価は気にしないように心がけている。外部の評価は、その時と時間が経過した後では異なるといったことがままある旨を話しました。


日本銀行金融研究所の発行する雑誌に掲載された、ある論文は、ゼロ金利政策と量的緩和について、次のように言及しています。


・将来の政策運営に対するコミットメントを伴ったゼロ金利が、経済活動が鈍化したときに、強力かつ自動的な緩和効果を発揮する。


(出所)「ゼロ金利下の金融政策:日本の経験」、山口泰、日本銀行金融研究所/ 金融研究/第19巻第4号



①ゼロ金利政策の効果は、金融市場やマクロ経済の環境に大きく依存している。
②ゼロ金利政策を超える強力な量的緩和策は、将来の財政負担を残すだけとなるかもしれない。


��出所)「ゼロ金利政策下における時間軸効果」白塚重典、藤木裕、日本銀行金融研究所/ 金融研究/ 2001.12


これらの意見は、各論文の筆者の個人的見解であって日本銀行ならびに金融研究所、金融市場局の公式見解を示すものではないものの、今回の発言を理解する上で参考になり、少なくとも、日銀は量的緩和策には慎重な姿勢を当面は継続する可能性が高いと思います。







2009年1月4日日曜日

週明けの主な予定

5日(月曜)

(国内) 各証券取引所 大発会


6日(火曜)
(海外) 米 ISM非製造業景況指数 12月


7日(水曜)
(海外) 米 FOMC議事録

8日(木曜)
(国内) 10年利付国債入札

(海外) 英 イングランド銀行政策委員会


9日(金曜)
(国内) 景気動向指数(速報) 11月

(海外) 米 雇用統計


米経済指標で景気がどの程度悪化しているのか、2008年11月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る減少と、34年ぶりに大幅な落ち込みを記録しましたが、1月9日に公表予定の2008年12月米雇用統計などが注目されるところかと思います。



ロシアのガス供給停止と原油価格の行方

ロシアの独占天然ガス会社ガスプロムがウクライナへのガス供給を停止しました。


ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場が続伸し、WTI期近2月物は昨年末終値比1.74ドル高の46.34ドル/バレルで取引を終えました。


これは、ロシアがウクライナ向けのガス供給を停止したことが影響したものとみられます。


EUは即時解決を求める声明を発表しましたが、今回のガス供給停止は、ロシアにはウクライナの親欧米政権に圧力を加える意図があるとみられ、欧米を巻き込んで対立が深まる可能性が指摘されています。


ロシアのガス供給停止は、長期化すればエネルギー価格の高騰などにつながりかねない動きと考えられます。


万一、長期化すれば、一時的にせよエネルギー価格高騰が、厳しい環境にある経済活動にさらにマイナスの影響を及ぼすと思います。


ロシアの政治的意図からすると、現状では容易ではないとみられるものの、早期の収拾を期待しつつ、今後の推移が見守られるところかと思います。



2009年1月3日土曜日

中国の温家宝首相は内需拡大に努めると表明

1月1日、中国の胡錦濤国家主席は、「中国は世界金融危機の克服と経済成長に力を尽くし、平和的な発展と開放政策を動揺せずに進めていく」と表明しました。


1月2日、中国の温家宝首相は、「厳しい冬」を乗り越えるため政府は内需の下支えに努めると表明しました。


報道によれば、山東省を訪問した温家宝首相は、農村部の市場向けに、家庭用電化製品購入のための補助金を拠出するなどの考えを示したようです。


中国の内需が順調に拡大していくのかどうか、国際的な景気回復に与える影響も併せ、中国の成長率の水準など今後の推移が見守られるところかと思います。



厳しい景況感を示したISM製造業景気指数

1月2日(現地時間)、ISM(米供給管理協会)が発表した2008年12月の製造業景気指数は32.4となりました。

これは、事前の大方の市場予想を下回る厳しいものでした。


同指数は、50が景気を見極めるうえでの分岐点となり、50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退を示唆しています。


今回公表された2008年12月の同指数は前月から一段と低下しており、企業の景況感は悪化傾向にあることを示しています。


今回の32.4は、1980年以来の低水準であることを併せて見ると、底の見えない厳しい景気情勢にあると言えます。


事前の大方の市場予想を下回る水準となった厳しい同指数の公表は、オバマ新政権の景気対策に期待する声が高まる可能性があると思います。


20日の新政権発足後の政策動向と今後の同指数の推移が注目されるところかと思います。



ISM製造業景気指数


2008年
12月32.4
11月36.2
10月38.9
9月43.5
8月49.9
7月50.0
6月50.2
5月49.6
4月48.6
3月48.6
2月48.3
1月50.7

(出所)ISM



2009年1月2日金曜日

スロバキアのユーロ通貨導入、チェコのEU議長国就任に思うこと

1月1日(現地時間)、EUに2004年に加盟したスロバキアは、単一通貨ユーロの流通を開始しました。


これで、EU加盟国27カ国のうちユーロ導入は16カ国目となります。


2007年、USドルは対ユーロで約11%安、対日本円で約7%安でした。


2008年、USドルは対ユーロで約9%高、対日本円で約15%安でした。


2008年、USドルは、主要通貨間では高く推移しました。


今年、為替はどう動くのでしょうか、米国の経済実態は厳しさを増しているとみられます。


ユーロ圏も経済実態は厳しい状況にあり、各国の協調が重要な局面にありますが、ユーロ通貨を導入していないチェコが、今年1月1日に今年上半期のEU議長国となりました。


チェコのクラウス大統領はEU懐疑派で、チェコは連立与党が議会の過半数を占めていない状況にあります。


今年上半期のEUは安定した運営が図られるのか、景気対策に関する考え方で必ずしも一枚岩と言えないEUの動向が見守られるところかと思います。


2007年

 対ユーロ対日本円
USドル-10.8%-6.7%


2008年

 対ユーロ対日本円
USドル9.3%-15.2%


(注)暦年、12月平均値/1月平均値。筆者作成。



リーマンショック後、主要先進国で最大の下げ幅となった日本の株式市場

昨年9月のリーマンショックは、国際的な金融市場の混乱として、その影響が連鎖していきました。


当初、リーマンショックに対しては、 日本の経済閣僚より「ハチが刺した程度」といった見方が提示されるなど楽観視されていましたが、その後、日本への影響は少なくありませんでした。


その後、日本も金融市場の混乱の影響はあったとしても、それでも日本は金融市場は世界的にみて相対的に混乱の度合いは少ないとの認識が拡がり、現在もそれは継続しているような気がします。


しかし、リーマンショック後の主要各国の株式市場の変化率を見ると、最も下落幅が大きいのは日本と言えます。


日本は、他の主要各国と同様、資本市場は大きく影響を受けており、時機を得た適切な対応の必要性・重要性は高いのだということを改めて確認したいと思います。


政府の役割が高い局面にあって、適切な対応を政府に期待したいと思います。



リーマンショック前→2008年末の変化率


指標変化率
米国NY dow-24.0%
英国FTSE100-21.3%
ドイツDAX-25.1%
フランスCAC40-28.2%
日本TOPIX-31.5%


(注)リーマンショック前:2008年8月終値



2009年1月1日木曜日

今年も宜しくお願い申し上げます

2009年の元旦を迎えました。


2008年の経済・社会環境は、9月のリーマンショックを大きな境にして、2008年の年初に大方の市場関係者が想定していなかった変化を辿っています。


今回の変化を、百年に一度の変化であり、想定しえなかった変化であると、元米国FRB議長をはじめ、名だたる指導者が言っています。


しかし、サブプライム問題は、市場関係者の間で、数年前から指摘されていた問題です。


確かに、大きな変化ですが、「百年に一度」イコール「予想が全くできなかった」として発言者が用いているとすれば、違和感を覚え、発言者にそういった意図が全く無かったとしても、あたかも発言者に責任は無かったとの意味で言っているのかと感じます。


「百年に一度」は、「適切な対処を採らなければ、20世紀以降最悪の事態となりうる」との意味と理解し、適切な政策が講じられるかを注視していくとともに、消費者、企業は、慎重ではあっても過度に恐れず、落ち着いた判断をしていくことが重要ではないかと思います。


また、金融工学をあたかも意味がなかったと言わんばかりの論調を目にすることがあります。


しかし、市場の予想を人それぞれの見地から、極論すれば占い師的な見通しに託すことが適当とは思えません。


確かに、今回の変化に金融工学が十分対処したと言えないかもしれませんが、金融工学という共通の言語があることが、市場を極端な動きにさせない大きな歯止めになっていると思います。


今後、市場心理を重視する行動ファイナンスの見地も併せ、金融工学を活用することが有効ではないかと思います。



最後に、日本の個人投資家は、2008年秋以降の大きな変化に翻弄され、あるいは、驚かれた方も少なくないのではないかと推察します。


現行の金融取引の仕組みは、各種金融商品を取り扱う金融機関が、適切な情報を個人投資家に提供することを基本としています。


今回の大きな変化は金融機関自身にとっても予想が十分できなかった面があったことは否めません。


そういった意味からすると、事故にあったようなものと捉えることも可能かと思います。


しかし、今回の大きな変化を、個人投資家が、自らの金融リテラシーを高め、自ら判断していく割合を高めていく良い契機になれば、今回の変化による痛みは大きかったとしても、個人投資家にとって前向きな意味があったと理解できるのではないかと思います。


時期未定ながら、こうした個人投資家へのサポートをビジネスとして立ち上げて行ければと思っています。



2009年は、2008年にも増して厳しい経済環境下になりそうです。


しかし、物事を冷静に捉え、将来に向けて前向きな検討を重ねることが、現状を打破し、明るい未来に繋がるのだと信じて行きたいと思っています。


今年もよろしくお願い申し上げます。



予想外に低水準だった米国の新規失業保険週間申請件数

12月31日(現地時間)、米労働省が発表した新規失業保険週間申請件数は49万2千件(12月27日終了週)となりました。


これは、11月1日終了週以来の低水準であり、前週比9万4千件減という大幅な減少幅は、1992年以来の大きさです。

大方の市場の事前予想を下回るものでした。


米国失業率の先行指標である新規失業保険週間申請件数が大方の市場予想を大きく下回る水準になったのでしょうか。


最近、失業率が急に改善するような動きは思いつかず、その要因は、季節的要因とする見方が有力なようです。


次回以降の新規失業保険週間申請件数の推移を確認するとともに、1月9日に公表予定の雇用統計が注目されるところかと思います。


また、1月20日に就任するオバマ次期米国大統領は、雇用創出を政策の大きな柱にしています。

諸統計と併せ、オバマ政権の打ち出す政策とが注目されるところかと思います。



新規失業保険週間申請件数
  (千件)


12/27 492
12/20 586
12/13 556
12/06 575
11/29 515
11/22 531
11/15 543
11/08 516
11/01 484

(出所)米労働省