最近、亀井静香 郵政・金融担当相の債務の返済猶予構想に注目が集まっています。
この債務の返済猶予構想とは、資金繰りに苦しむ中小・零細企業や個人などの債務を3年程度繰り延べるというもののようです。
商工中金の中小企業を対象にした調べによれば、8月の資金繰りDIはマイナス9.3(前月マイナス9.8)と、調査開始以来最大の「悪化」超幅となった2月のマイナス20.0から6ヵ月連続で「悪化」超幅が縮小傾向にあります。製造業(マイナス12.9)は「悪化」超幅が拡大した一方、非製造業(マイナス6.4)は「悪化」超幅が縮小しましたた。
改善傾向にあるとしても、確かに、中小企業は資金繰りに苦しむ企業の方が多いようです。
高水準で推移する失業率などからすると、個人のローン返済負担も全体として厳しさを増していると推察します。
TVで亀井静香 郵政・金融担当相へのインタビューを見ている限り、ご自身は、資金繰りに苦しむ中小・零細企業や個人を何とか助けたいという思いによるもののようであり、その気持ちは理解できる気がします。
ただ、方法論が適切かどうかは検討の余地が大きいのではないかとの印象です。
特に、政策実行の負担を黄門様の印籠をかざし、上位下達で民間に負担させているとの誤解を生むような方法は、長い目でみて国民的な理解を得ることが難しく、効率も悪いのではないかとの印象です。
国際的に金融機関の自己資本規制の強化が見込まれる中、仮に、3年程度の借入金の返済を猶予する措置をとった場合、日本の金融機関は、却って与信の審査基準を強化せざるを得ず、日銀の金融政策が期待した通りの成果をあげられなくなるなど、亀井 郵政・金融担当相の期待と逆行する結果を惹起する可能性があります。
また、日本の金融機関の自己資本は脆弱と国際的に評価され、日本企業の海外での資金調達コストを上昇させ、結果として日本企業の国際競争力を低下させていく要因になり得ると推察します。
基本的には、中小・零細企業への金融支援は、金融機関の貸し倒れリスクを軽減するような一時的な保証制度の強化を行うとともに、新規製品やサービスを促進するような公的融資や助成制度を整備するといった地味できめ細かい対応が有効で、政治としては、ではどういった産業分野に重点配分するか、地方の活性化をどのように果たしていくのかなど、日本のグランドデザインを描いていくことが期待されるのではないかと思います。
個人的には、民間活力を引き出すようなインセンティブを与えていくことで、財政負担も少なく政策効果を上げていくことが重要ではないかと思います。
モラトリアムまで踏み込む気概があるならば、さらに踏み込んで、期待される新規製品やサービスを促進するような企業の税負担を一定期間軽減したり、期待される新規製品やサービスを促進するための新たな雇用に必要な資金を一部負担したりといった措置を行っても良いのではないかとの印象です。
鳩山新政権への国民の期待は大きく、期待を大きく裏切らないで欲しいというのが自分の率直な気持ちです。
政策実行の負担を黄門様の印籠をかざし、上位下達で民間に負担させているとの誤解を生むような方法は、長い目でみて国民的な理解を得ることが難しいのではないかとの印象にあるのは、亀井 郵政・金融相のモラトリアム構想だけの問題ではなく、他の閣僚の方の政策の中にも同様の印象を受けるものが存在します。
全くの誤解にもとづく杞憂と思いますが、政権交代を経て民衆主体の新たな時代に向かうと思ったら、お上意識の江戸時代へ逆行したのではないかとの思いが一瞬かすめましたが、幅広い議論を経れば、そうした誤解も解消していくと信じています。
鳩山新政権の見ている目線、方向が正しくとも、方法論が適当でないと期待した成果が得られないばかりか、マイナスを生むことさえあるのではないか、そうならない為に、必要な議論を経て、適切な方向に向かって、適切な方法で取り組まれることを期待したいと思います。
今後の行方を見守りたいと思います。