公共マナーは、その国や地域の人々の文化的な洗練度を表しており、マナーの向上は大切なことと思います。
ただ、難しいのは国、性別、世代によってマナーの基準は違うような気がすることで、単に「マナー向上」を掲げるだけでは必ずしも期待通りマナーは向上しないのではないかと思います。
一例として、日本民営鉄道協会では、毎年、電車内の迷惑行為に関し、ホームページ上で定期的にアンケートを実施、集計・分析しています。
直近(2009年度)の結果では、「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」、「ヘッドホンからの音もれ」が昨年よりランクアップし、「携帯電話の着信音や通話」は昨年と同位で、音に関する迷惑行為が上位となる結果となりました。
[御参考]平成21(2009)年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング(上位10位までの結果を抜粋)
順位 迷惑行為項目 割合(%)
1位 騒々しい会話・はしゃぎまわり等 31.3%
2位 ヘッドホンからの音もれ 30.9%
3位 座席の座り方 30.2%
4位 携帯電話の着信音や通話 28.0%
5位 乗降時のマナー 24.6%
6位 車内での化粧 18.4%
7位 ゴミ・空き缶等の放置 17.0%
8位 電車の床に座る 17.0%
9位 酔っ払って乗車する 15.0%
10位 混雑した車内へのベビーカーを伴った乗車 14.7%
(注)重複回答可(最大3つまで選択可)
(出所)日本民営鉄道協会
このアンケートでは、男女別に集計しており、「携帯電話の着信音や通話」が男性の第2位に挙げられているのに対し、女性では7位となっております。「酔っ払って乗車する」については、女性が第5位に挙げているのに対し、男性では11位となり、男女で迷惑と感じる行為に差が見られたとのことです。
個人的には、男女差だけでなく、世代間、国によっても差が出るのではないかと感じています。
例えば、電車内で携帯電話で話しているのは、ビジネスマン、ご高齢の方、外国人が目立つように思います。
外見からビジネスマンと見える人が、大声で会話するのを見かけることが少なくありません。恐らくは、仕事中の会話であることを示し、だから仕方ないと周囲の人に理解を求めている様に見受けました。
外見からご高齢と見える方が、まっすぐ前を見て、時には座席に深く腰掛けながら会話しているのを見かけるのも珍しくありません。恐らくは、携帯での会話そのものをマナー違反とは考えていないように見受けました。
外見と話している言葉から、外国人と見える人が、電車内で携帯電話での会話を堂々としているのを何度もみかけます。来日人数の割合が影響しているのか、言葉から中国、韓国系の方が圧倒的に多いような気がします。
こうした方は、恐らく、自分の行為がマナー違反だと知識としてはあったとしても、価値基準として受け入れていないのだろうと想像します。
全体的なマナー向上をはかるとすれば、例えば、世代ごとに考えているマナーの基準を明らかにするなど世代間の相違を明確にしていき、世代間で対話を行っていくことが考えられます。
公共マナーは、その国や地域の人々の文化的な洗練度を表しており、マナーの向上は大切なことと思います。そして、全体的な公共マナーの向上は、容易ではないでしょうが、取り組む価値のあることと考えます。
何故なら、公共マナーはその国や地域で生活する人々の幸福度に繋がることであり、経済を大きく量的拡大することが容易ではない日本にとって、質的成長を図る切り口の一つになるのではないかと考えるからです。