2010年4月14日水曜日

作家井上ひさし氏の逝去を悼んで

4月9日、作家の井上ひさし氏が亡くなりました。満75歳でした。


井上ひさし氏の著作というと、個人的には「ブンとフン」、「ドン松五郎の生活」、「青葉繁れる」、「偽原始人」などが思い出されます。


子供の頃に夢中で見ていたNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」は、随分大きくなってから氏の脚本と知ったものでした。


自分が読んだ井上ひさし氏の著作から思っていたイメージは、昭和の戯作者というものでした。


例えば、学生生活を題材にした、優しく、明るい作品も面白かったですが、井上ひさし氏の真骨頂は、古典や著名な作品に対する井上ひさし氏の解釈や批判を作品を通じて発表していたものの中にあるというように感じていました。


井上ひさし氏の作風は、どこか北大路魯山人の作陶に似ていると思っていました。ただ、井上ひさし氏の方が批判精神がとても旺盛だったように感じます。


自分にとって、現在活躍されている作家で井上ひさし氏と同様のイメージにある方はいません。最も近いイメージだったのは、遠藤周作氏でしたが、既に遠藤氏も故人となってしまいました。


年齢的に大先輩な井上ひさし氏に対して失礼な表現かも知れませんが、とてもパワーのある、太い幹をもつ樹のような、それでいて繊細な、面白い作品を書く作家がまた一人いなくなったような気がします。


ご冥福をお祈りいたします。