先月、しなの鉄道の軽井沢駅から信越線の横川駅までバスに乗りました。
1997年9月末以前は、鉄道(JR)が通っていましたが、同年10月1日、長野新幹線の開業に伴い、横川・軽井沢駅間は廃止されました。
横川・軽井沢駅間は、碓氷峠があり、66.7‰という急な勾配で、当時は全ての列車が、自らの列車のパワーだけでは峠を登りきれず、また、峠を降りるには制動力が不足していたため、機関車の連結作業のため停車していました。
下り列車(横川から軽井沢へ向かう列車)は、機関車を後に連結して押し上げる必要があり、逆に上り列車(軽井沢から横川へ向かう列車)は、先頭に機関車を連結して、機関車のブレーキを借りて運行していました。
鉄道事業者にとって、横川・軽井沢駅間は手間と時間(コスト)のかかる区間であったと言えます。
横川駅前には釜飯で有名な「おぎのや」の店があります。また、近くにはレンガ造りの旧丸山変電所などがあります。
長野新幹線が開通した当時、こうした場所が見れなくなることにはあまり気にとめませんでした。
しかし、今にして思えば、遠い昔、軽井沢・横川間は、トンネルをいくつもくぐり、鬱蒼とした森をぬけていきました、横川駅では弁当が盛んに売られていました。そこには多くの活気がありました。
鉄道は単なる移動手段ではなく、驚きや思い出など鮮明な場面がいくつもありました。
経済成長期にあっては、鉄道は、経済の道具としての側面が強く、新幹線のように早く大量に人を運ぶことが重要と考えます。
経済が成熟期にある現在、鉄道の意味は何でしょうか。インターネットなど通信手段が発達した現在、大量に人を運ぶ意義は薄れ、移動の過程そのものに価値を見出すことが重要になってきているような気がします。
今も全国で新幹線整備が進行しています。
新幹線は便利な乗り物ですが、失うものも相当大きく、そして失ったものの大きさに気づいた時にはもう取り返すことは困難です。
新幹線整備だけでなく、地方空港問題なども含め、交通網のあり方に関する議論が適切に行われることを期待したいと思います。