2008年12月31日水曜日

米国消費マインドとGMACへの公的資金注入

12月30日(現地時間)、米国コンファレンスボードが発表した12月の米消費者信頼感指数は、過去最低の38.0となりました。


消費者信頼感指数


8月 58.5
9月 61.4
10月 38.8
11月 44.7
12月 38.0


同日、米自動車大手GM系の金融会社GMACへの公的資金注入が決まりました。


GMACは、自動車ローン、リースなどの金融事業を行う会社です。


報道によれば、会見で、GM側は、この公的資金注入で資金調達が改善され、販売の拡大につながるとの期待を示したようです。


確かに、自動車ローンの審査基準を緩和すれば、多少なりとも自動車販売にプラスになると思いますが、景気後退下で審査基準を甘くしたローンを拡大すれば、債権回収が困難な不良債権の割合を高めることになります。


今回発表された米消費者信頼感指数によれば、消費マインドは、現在、過去最低であり、自動車販売が好調になる外部環境にはないと思います。


個人的には、今回のGMACへの公的資金注入は、自動車販売増への効果は限定的と見ざるを得ないものの、好意的にみて、将来的に、GMの経営改革を進める上でのボトルネックにならないような手が打たれたと思います。



穏健・民主的なイスラム国と目されるバングラデシュの総選挙で野党が勝利

報道によれば、バングラデシュの総選挙で、野党のアワミ連盟が圧勝したとのことです。


バングラデシュでは、2006年10月に選挙管理内閣が発足し、2007年1月末に総選挙が行われる予定でしたが、選挙改革を巡る政党内対立による国内情勢悪化のため、非常事態宣言が出され、総選挙も延期となっていました。


今回の選挙では、前政権に対する汚職などの腐敗体質に強い批判が、今回の野党の勝利に結びついたようです。


アワミ連盟のハシナ氏が7年ぶりに首相に返り咲く見通しです。


バングラデシュの財政は慢性的な赤字となっており、これを外国援助と国内銀行借入等で補填する構造となっています。


また、経済的には、縫製品輸出や海外労働者の海外送金に依存するところが大きく、経済構造は脆弱と言わざるを得ません。


世界的な景気後退は、輸出・海外からの送金に大きく依存する同国経済へ悪影響を及ぼすことは確実な情勢であり、汚職取り締まりの強化は、同国経済を停滞させる可能性が高く、選挙で勝利したアワミ連盟ハシナ氏の政権運営は難しい舵取りを迫られそうです。


同国は、経済協力関係を中心に日本との友好関係が発展するなど、極めて親日的な国民性と言われています。

穏健・民主的なイスラム国と位置づけられる同国は、南アジア地域(インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルジブ、アフガニスタン、イラン)の安定化にとって重要性は増しており、課題は少なくないとみられるものの、今後の政治、経済の安定的発展が期待されるところです。



2008年12月30日火曜日

投資ファンドの日本株売却のニュースを見て

投資ファンドが、日本株の売却を進めているとの報道に接しました。


最近の国際的な金融市場の混乱から、投資ファンドの解約が相次いでいることからすれば、日本株の売却が進むのは当然のことと思います。


明言があったわけではなく、うがった見方かも知れませんが、今回のニュースは、投資ファンドの株式売却をネガティブというよりポジティブに受けとめているように感じました。


資本市場は、多様な投資主体によって構成されてこそ、円滑な流通が確保され、期待される機能が発揮されるものです。


確かに、現在の金融情勢等からすると、行き詰った投資ファンドが、一般に不合理と思われる極端な投資行動に走る懸念が無いとは言えないと思います。


また、今回の金融市場の混乱を契機に、投資ファンドに対する市場の規制のあり方が見直される方向にあるのも事実です。


しかし、長い目でみて、投資ファンドは、思い切った投資行動を行う主体として、流通市場の活性化に貢献しており、日本株市場の発展に必要なプレイヤーの一角ではないかと思います。





ソマリアの暫定大統領辞任の行方

報道によれば、12月29日(現地時間)、ソマリア暫定政府のアブドラヒ・ユスフ大統領が、辞任を表明したとのことです。


ソマリア民主共和国は、1991年に内戦が勃発し、現在も各地で武装勢力間の抗争が続いています。


2005年、暫定連邦政府が樹立したものの、全土を実効的に支配する統一政府は存在していません。


アズドゥラヒ・ユスフ氏は暫定連邦議会より選出され、暫定大統領として内政にあたる一方、国際的な対話の窓口を務めていました。


最近、ユスフ大統領は、イスラム武装勢力穏健派との対話に反対するなどの動きにありましたが、これに対し、内外から和平に消極的との批判が強まっていました。


また、今月に入り、首相解任に監視、議会と対立していました。


今回のユスフ大統領の辞任に関しては、大きく、


①和平に消極的だったユスフ大統領の辞任により、和平が進展するとの見方


②国際的な対話の窓口である大統領不在は、混乱を強めていくとの見方


の見方があるようです。


国際的に注目される同地域の今後の推移が見守られるところかと思います。



2008年12月29日月曜日

損害保険の統合から連想する損保以外の金融機関の統合・再編

報道によれば、三井住友海上グループHD、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の損保大手3社が経営統合に向けた最終調整に入ったとのことです。


背景として、金融危機の深刻化と国内景気の急速な悪化などとする見方にあるようです。


90年代の日本の金融危機において、銀行をはじめ多くの金融機関の統合が進みました。


今回の国際的な金融危機で、さらに金融機関の統合・再編が進むのでしょうか。


個人的には、損害保険だけでなく、経営危機に陥った米保険大手、AIG傘下のアリコなど、生保子会社の売却交渉が注目される生命保険業界や、経営効率化や収益基盤の強化が課題とみられる地方銀行業界などの動きが注目されるところかと思います。



懸念される鳥インフルエンザ

最近、ベトナム北部の養鶏場で、鳥インフルエンザウイルスに感染したアヒルとニワトリが死んでいたことが分かったようです。


振り返ってみると、


今年3月18日 ベトナム保健省は、H5N1鳥インフルエンザの新たなヒト感染症例を確認しました。

症例はHa Nam省Thanh Liem地区の11歳男性でした。


9月10日 インドネシア保健省は、H5N1鳥インフルエンザのヒト感染症例を2例、遡って発表しました。


第一例目は、Banten州Tangerang地区の38歳男性で、7月4日に発症、7月9日に入院、7月10日に死亡しました。

第二例目は、Banten州Tangerang地区の20歳男性で、7月20日に発症、7月29日に入院、7月31日に死亡しました。

12月12日 カンボジア保健省は、H5N1鳥インフルエンザウイルスの新たなヒト感染確定症例を発表しました。


症例は、Kandal州の19歳男性で、11月28日に発症しました。


最近の気象庁の1ヶ月予報(12/27~1/26)によれば、日本の広い地域で、2週目にかけて強い寒気が南下するため、気温の低い日が多くなるようです。


既に各種広報・報道で伝えられているところではありますが、この冬は日常生活で、インフルエンザに罹患しないよう注意が必要と思います。


鳥インフルエンザの拡大は、経済活動に影響を与え、国際的なモノやヒトの行き来の障害になると言えます。


その意味で、最近の鳥インフルエンザの死亡症例の多くが、日本と経済的に密接なアジアで発生していることは気にかかるところです。


さらに鳥インフルエンザが拡大しないよう願うところです。


WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)感染死亡症例数

    死亡症例数(2003年~2008年合計) 
インドネシア 113
ベトナム 52
エジプト 23
中 国 20
タ イ 17
カンボジア 7
アゼルバイジャン 5
トルコ 4
イラク 2
ラオス人民民主共和国 2
ナイジェリア 1
パキスタン 1
バングラデシュ 0
ジブチ 0
ミャンマー 0
合  計 247

(出所) WHO(2008年12月16日)





2008年12月28日日曜日

週明け後の主な予定

週明け後の主な予定は次の通りです。


30日

(国内) 各証券取引所 大納会


(海外) 米 S&Pケースシラー住宅価格指数

      米 消費者信頼感指数 12月

31日

(海外) 米 MBA住宅ローン申請件数

      米 失業保険申請件数


2日   米 ISM製造業景況指数 12月


日本は、年末年始の休みに、欧米取引所も元旦は休場の予定です。


景気後退の悪化がどの程度進んでいるか、S&Pケースシラー住宅価格指数、米消費者信頼感指数、ISM製造業景気指数などの米国マクロ指標が注目されるところかと思います。



イスラエルによるガザへの大規模空爆

12月27日(現地時間)、イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザに大規模な空爆を行い、報道により異なりますが、死者は200人を超えるようです。


空爆は、イスラム原理主義組織ハマスの軍事拠点などを狙ったもので、最近十数年で最大規模の攻撃となった模様です。


ハマスは直ちにロケット弾を発射し、イスラエル側でも死者が出たようです。


イスラエルのバラク国防相は「作戦は続き、必要であれば強化する」としており、当面は交戦状態が続きそうな情勢にあります。


アラブ連盟は、イスラエル軍による今回の大規模空爆を受け、緊急外相会議を開催する予定です。


今回のイスラエルの大規模空爆に対し、エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王、アラブ首長国連邦などは、イスラエルの攻撃を非難するなど、アラブ各国で懸念や反発が拡大しています。


今回のイスラエルの大規模空爆の背景には、来年2月に予定されるイスラエルの総選挙があるようです。

最近、現政権(中道右派カディマと左派の労働党)は、世論調査で対パレスチナ強硬路線を主張する野党にリードされています。


イスラエルの現政権が、次期総選挙で勝利するためには、パレスチナに断固たる姿勢を示す必要に迫られていました。


米国のオバマ次期米国大統領の外交政策は、対話路線を表明しており、今後、イスラエル・パレスチナ問題にどのように関わっていくのか、今後の推移が見守られるところです。



2008年12月27日土曜日

戦後最大の落ち込みに向かう鉱工業生産指数

12月26日、経済産業省が公表した11月の鉱工業生産指数(速報値)は、94.0(2005年=100)と2か月連続の下落となりました。


下落幅は、大方の事前の予想を上回りました。


景気後退期における鉱工業生産指数の変化率は、次の通りです。


 戦後平均 -6.1%

 

 90年代以降


 平成景気後 -12.5%
 金融危機 -10.2%
 ITバブル崩壊 -12.8%


昨年の12月以降、景気後退期に入ったとすると、今回の景気後退における鉱工業生産指数の変化率は、-13.8%となります。


今回公表された11月の鉱工業生産指数は、速報値であり、今後変更される可能性がありますが、90年代以降最大の生産の落ち込みになることは確実な情勢です。


戦後最大の鉱工業生産指数の変化率は、第1次石油ショックの-18.8%です。


大企業の生産見通しを示す12月の製造工業生産予測調査は、前月比8.0%下落すると予測しており、年明け以降も自動車や鉄鋼の減産が続く見込みにある中、戦後最大の鉱工業生産指数の下落幅を早い時期に突破する勢いにあります。


消費者・企業のマインドや在庫の動向なども併せ、その推移が見守られるところかと思います。



日本の金融4グループが国際的な共同監視体制下に

12月26日、わが国の金融庁は、金融安定化フォーラム(FSF)の要請にもとづき、三菱UFJFG、みずほFG、三井住友FG、野村HDの4グループに国際的な共同監視体制を設置したことを明らかにしました。


金融危機に伴う国際的な金融監視・監督強化の一環として、FSFは、世界の大手主要金融機関に対する国際的な共同監視体制を設置するよう求めたものです。


今後、4グループについては、米欧やアジアの海外監督当局と協調して監督にあたることになります。


各国の監督担当者による定例会合などが予定されているようです。


現在の世界的な金融システムの混乱は、国際的な協調が重要であることは共通の認識になっていますが、具体的にどのような監視・監督を行っていくのか、今後の推移が見守られるところかと思います。



2008年12月26日金曜日

ローマ法王のクリスマス礼拝と中東和平への期待

12月25日(現地時間)、ローマ法王ベネディクト16世は、クリスマスの礼拝で、中東和平とアフリカの安定を願う旨を表明しました。


イスラエル・パレスチナの紛争を懸念し、ジンバブエやソマリアなどの政情の安定を願ったものです。


同日(同)、エジプトのムバラク大統領とイスラエルのリブニ外相は、カイロで会談しました。


リブニ外相は、パレスチナとの停戦の扉は開かれているとの考えを示したものの、ハマスの攻撃を止める必要を指摘しました。


報道によれば、12月23日から24日にかけて、ガザのハマスは、イスラエル領内に向けロケット弾60発以上(70発以上との報道もあり)を発射しました。パレスチナの戦闘員3人がイスラエル軍に射殺されたことを受けたものでした。


ハマスは強硬姿勢を崩しておらず、イスラエルもガザの封鎖を続け、援助団体などによる人道支援物資の輸送も行えない状況にあります。


ローマ法王は来年5月にエルサレムなどを訪問する見通しです。


来年、中東和平が進展することを期待したいと思います。



ムガベ政権の転覆を図ったとして人権活動家が罪に問われているようです

12月24日(現地時間)、ジンバブエのムガベ政権の転覆を図ったとして、人権活動家のムココ氏が罪に問われているようです。


ムココ氏は、最近、行方不明になっていました。


これは、何者かに自宅から拉致されたもので、ジンバブエの治安当局が関わり、拷問を受けていたとの情報もあるようです。


ムココ氏は、今回問われている自らの罪に関する公判のため今月29日に入院先から治安裁判所に出廷する予定で、海外メディアによれば、死刑を言い渡される可能性もある模様です。

欧米からの辞任要求が強まっているジンバブエのムガベ大統領ですが、ムガベ大統領は、これを拒否しています。


現在、米国は、ジンバブエの複数の個人と企業について米国内の資産を凍結しています。


当面は、こうした制裁がを英国やアフリカ諸国間で行うことかどうかが焦点となりそうです。


新たな動きにつながるかどうか解りませんが、最近、南アフリカの平和運動家で1984年にノーベル平和賞を受賞したツツ司教は、力づくでもムガベ氏を退陣させるべきと表明しました。


国際的に憂慮されるジンバブエ情勢の推移が見守られるところかと思います。





2008年12月25日木曜日

厳しい情勢が続く米国住宅市場と好ましい動き

12月23日(現地時間)、米国の全米リアルター協会(NAR)が発表した11月の中古住宅販売戸数は8.6%減と、過去最大の減少となりました。


また、住宅価格の中央値は年率ベースで13.2%下落と、こちらも過去最大の下落となりました。


価格が下落しても需要が盛り上がらない状況にあるという意味で、米国の住宅市場は依然として厳しい状況と思います。


米国住宅市場が回復するまでには、今後さらなる相当の価格下落が必要との見方があります。



一方、12月24日(現地時間)、米国の抵当銀行協会が発表した住宅ローン申請指数(12/19までの週、季調後、新規購入・借換含む)は、前週比48.0%上昇しました。

ほぼ5年ぶり(2003年7月18日までの週以来)の高水準でした。


この住宅ローン申請件数増加は好ましい動きと思います。


今回の住宅ローン申請件数増加は、借り換えによって増えただけとの見方もあるようですが、厳しい雇用情勢の中、従来、ローン返済が行き詰った層が、住宅ローン継続に向かっているのかもしれないという意味で、将来の米国住宅市場の回復に繋がる動きとなる可能性があると思えるからです。


全体としてみれば、依然厳しい状況が続くと言わざるを得ない米国住宅市場の今後の推移が見守られるところかと思います。



インドのカシミールで選挙に関する武力衝突が発生

12月24日(現地時間)、インドのカシミールで行われていた選挙で複数の武力衝突が発生したようです。


カシミールでは、インドから分離独立を求める勢力が、選挙に参加しないよう訴えるなどの動きにあり、活発な講義活動が行われる中、厳戒体制が敷かれていました。



同日、インド国境に近いパキスタン東部ラホールで、小型トラックに仕掛けられた爆弾が爆発し、1人が死亡、4人が負傷しました。


インド西部ムンバイの同時テロ後、インド・パキスタン両国の緊張関係は高まっています。


ラホールの爆発はイスラム過激派による犯行の可能性もあるようです。



インドの治安を巡る動きは、依然、落ち着かない状況が続いているようです。


日本とインドは、現在、各々アジア第1位と第3位の経済規模を持っているものの、インドにとって日本は、10番目の貿易相手国であり、日本にとってインドは、27番目の貿易相手国にすぎず、極めて限定的な貿易となっています。


このため、今後の日印関係を、両国の経済規模に見合ったものとすべく、関係強化に努めているところです。


一般に、インドは宗教、言語、文化、風習で多様性を持つという特色を有し、また、民主主義が確立した国家と理解されています。


最近のインドの治安を巡る動きは、好ましいものではありませんが、ある程度こうした動きを所与のものとして日印関係をどのように構築していくのか今後の推移が見守られるところかと思います。



2008年12月24日水曜日

資源大国のギニアでクーデター

12月23日(現地時間)、アフリカ西部の国、ギニアで、軍部によるとみられるクーデターが起きました。

軍部は、国営放送で「憲法を停止し、政府機関を解散する」と宣言しました。

12月23日(現地時間)に政府によって22日にランサナ・コンテ大統領の死去が発表されたばかりでした。


現首相は、現在も政府は機能しているとしてクーデターに反対を表明しています。


1984年のクーデターにより樹立されたコンテ政権は、従来の政治路線を大きく改め、IMFや世界銀行などの国際機関からの支援を得ながら、旧社会主義体制から自由主義体制への移行を推進してきました。

しかし、最近では、政府の腐敗が指摘されるなどの動きにありました。


ギニアは、西アフリカの水瓶と言われる豊かな雨量を有し、肥沃な土壌を背景に高い開発潜在力を持っています。

また、ボーキサイト、金、ダイアモンド等を産出する鉱物資源大国であり、特にアルミニウムの原料であるボーキサイトは全世界の3分の1の埋蔵量を誇っています。


ギニアは、こうした開発潜在力や資源埋蔵量をもつものの、未だ十分な開発は行われていない状況です。


従来、同国の外交は、東側寄りから西側寄りへのゆるやかな軌道修正が行われて来ました。


今後、同国の外交はどのような方向に向かうのでしょうか、クーデターを行った軍部とこれに反対する首相などのメンバーの対立の行方が注目されるところかと思います。



ロシアのプーチン首相は、安い天然ガスの時代は終わろうとしていると表明

12月23日(現地時間)、ロシアのプーチン首相は、モスクワで開かれているガス輸出国会議の冒頭、コスト増加を背景に安い天然ガスの時代は終わろうとしていると表明しました。


ガス輸出国会議は、ロシアの他、イラン、ベネズエラ、リビアなどが参加する非公式のフォーラムです。


世界最大の天然ガス輸出国であるロシアは、天然ガスの埋蔵量の26.6%、今回の会議に参加したイランは14.9%、ベネズエラは2.4%、リビアは0.8%を有するなどの状況にあります。


今後、同会議は、OPECのような組織を目指すとみられています。


ロシアの天然ガスを輸入しているヨーロッパは、同会議の行方に神経を尖らしているようです。


従来、天然ガスと原油は同様の動きを示しており、短期的には、天然ガスの価格は急騰する事態は考え難いところです。


中期的には、同会議の組織が本当にOPECのような組織となっていくのか、生産調整が行われるのか、サハリン開発に関わる日本にとっても他人事ではなく、その行方が見守られるところかと思います。



2008年12月23日火曜日

トヨタ会社予想の下方修正にみる米国自動車メーカー再建の厳しさ

12月22日、トヨタ自動車は、今期(2009年3月期)の連結決算の会社予想を下方修正しました。


売上高を前期比18.2%減の21兆5千億円(従来会社予想比-1.5兆円)、営業損益は赤字転落の-1500億円(従来会社予想は6000億円の黒字)としました。


2008年12月以降の前提為替レートは次の通りです。


  USドル=90円
  ユーロ=120円


連結販売台数は次の通りです。


  前期実績  891万台
  前回見通し 824万台
  今回見通し 754万台


また、今回、トヨタは販売台数700万台でも利益の出る体質を目指すと表明しました。これは前期実績に比べ、マイナス21%となります


トヨタは現時点で来期の経費削減を次の様に想定します。


 来期の設備投資:1兆円以下のレベルに抑制。
 来期の償却費:今年(1.1兆円)より若干減るレベルを想定。

 試験研究費(※)、販売費、およびその他の経費:1割~2割程度は減らす予定。
  ※ 研究開発費から労務費などを除いた費用


直近の為替は、USドルで90円前後となっていますが、米国の金融政策やマクロ経済指標の見通しからすると、ドル安に向かう可能性は少なくないと思います。


仮に、円高が進めば、トヨタ自動車の営業赤字はさらに拡大します。


現在、米国自動車メーカーの救済が大きな問題になっていますが、米国自動車メーカーに比べ、経営効率化が進んでいるトヨタが営業赤字に陥りました。


また、今回、トヨタは、販売台数は2割程度の減少に耐える体質を目指すとしています。


ということは、トヨタよりも経営効率性の劣るとみられる米国自動車メーカーの収益化には、相当の経営効率化を迫られるものとならざるをえず、トヨタを上回る経営効率化策を必要とし、米国自動車メーカー再建の道のりは相当厳しいと改めて認識した次第です。




エチオピアが年内にソマリアから撤兵の見通し

海外メディアによれば、エチオピアがソマリアに派兵している3000人を年内に撤兵すると表明したようです。


現在、アフリカ連合は、エチオピアの首都アディスアベバで、関係各国の外相により平和と安全保障委員会を開催しています。


ソマリアは1991年に内戦が勃発して、北部ソマリランドが独立国家の様相を呈するなど、現在も各地の武装勢力間の抗争が続いています。


2005年に暫定連邦政府が樹立したものの、全土を実効的に支配する統一政府は存在せず、無政府状態にあると言えます。


エチオピアがソマリアから撤退した後を担う国は今のところ見当たりません。


先週、国連のパン・ギムン事務総長は、ソマリアへの国連の増軍を、危険すぎるとして拒否したようです。


ソマリア沖では海賊行為が横行しており、国際社会は憂慮していますが、陸上の治安低下は、海上に連鎖する可能性があるのではないかと思います。


ソマリア情勢の行方が見守られるところかと思います。



2008年12月22日月曜日

オバマ次期政権の通商代表の決定-保護主義か自由貿易か-

12月19日(現地時間)、オバマ次期米国大統領は、次期米通商代表部(USTR)代表に黒人で弁護士のロン・カーク元ダラス市長を指名すると発表しました。


オバマ次期米国大統領は、大統領選挙中のコメントから、


①NAFTA修正交渉を開始する

②事業拠点を海外に移す企業には減税措置を廃止する

③米国内の雇用創出のため、地域経済に公的資金投入する 等々


が、通商政策の主要な柱であったと思います。


オバマ次期米大統領の経済政策は、国内経済問題の延長に国際問題があると、広く理解されていると思います。


景気の大幅後退下で米国内の失業率が上昇していることなどからすると、保護主義に向かいやすく、WTOにも慎重な姿勢をとるのではないかとの見方が自然な流れと思います。


次期米通商代表部代表に内定したカーク氏は自由貿易擁護派とされています。


カーク氏は、今年、大枠合意が見送られたWTOのドーハラウンドにあたることとなります。


WTOドーハラウンドを巡る交渉は、主として中国、インド、米国の間で農業部門の貿易自由化についての溝が埋まらなかったことにあるとされています。


オバマ次期政権は、保護主義化するのかどうか、自動車メーカー救済策をはじめ、WTOへの対応が注目されるところかと思います。



景気回復に向けたIMFの見方と各国の足並み

最近、IMFは、世界経済の成長が従来予想に比べ深刻な状況にあり、各国は大規模な財政刺激策を講じる必要があるとの見方を示しています。


12月17日(現地時間)、IMFのリプスキー副専務理事は、世界経済の成長率予測を来年1月に下方修正する見通しを示しました。


今年11月時点で2009年の予測を2.2%に引き下げたばかりでしたが、金融危機の深刻化を受け、再修正する模様です。


海外メディアによれば、IMFのストロスカーン専務理事は、各国はGDPの2%程度(1.2兆USドル相当)の大規模な財政刺激策を講じることが景気回復に向け必要との見方を示しました。


米国オバマ次期大統領は、大胆な財政刺激策の必要性を表明していますが、ドイツのメルケル首相は、景気刺激策として財政出動なしに出来ることは多いと表明しています。


現状では、景気回復に向けた処方箋で各国の足並みは必ずしも揃っていない状況にあると思います。


今後、世界の景気刺激に対する各国の取組みの足並みはそろえるのかどうか、注目されるところかと思います。