最近、報道で「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件が取り上げられています。
しかし、記者会見における事業者の姿勢、当該事件に関するマスコミの取り上げ方は必ずしも適当ではないと感じます。
[報道されている事実関係]
・富山、福井の焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で食事した男児2人が腸管出血性大腸菌O111に感染して死亡した。
・神奈川県横浜市、藤沢市の同チェーン2店舗でも食事をした横浜市在住の男女計6人が下痢などの症状を訴え、このうち横浜市の店では19歳の女性が入院し重症。
・フーズフォーラス社の記者会見における実務担当者の説明によれば、過去、同社は自社で細菌検査を一切行ってこなかった。
・フーズ・フォーラス社は、石川県金沢市に本社を置き、北陸3県に16店舗、神奈川県に4店舗を展開している。
・今回問題になったフーズ・フォーラス社の「焼肉酒家えびす」を、テレビで、とても激安店とは思えない高級店並みの接客をしていると絶賛する内容の放送を行っていた。
(出所)FNNニュース http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00198713.html
サーチナニュース http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0501&f=national_0501_179.shtml 他
[フーズフォーラス社による記者会見]
(出所) TBS-NEWSi http://www.youtube.com/watch?v=YuTHc16Uwtc 他
[疑問に感じる点]
①食中毒による死亡は、原因となった食事を提供した事業者に第一義的な責任があるのが当然です。
食中毒の原因となる食事を提供するに至った経緯、事業者の責任や今後の対策について説明すべき謝罪会見で、食中毒の原因となったメニューに関する国の規制を批判するのは不自然で、この事業者が自社に対する批判を緩和するため、意図的に問題をすりかえているとしか見えません。
②神奈川でもフーズフォーラス社の店舗で食中毒を引き起こしているとの疑念が出されています。これに対し、同社は、反論など適当と思われる説明を行っていないようです。
チェーン展開をする事業者で、一つの店で問題が起こったのであれば、当該店舗の特殊事情などがあるかもしれないとは思います。しかし、同時期に複数の店舗で問題が起こったということであれば、そもそもチェーン展開するだけのノウハウや管理能力がなかったと考えざるを得ません。
マスコミの中には、原因となった肉の生食について規制強化を問題提起していますが、正鵠を得たものとは思えません。
第一に問題とされるべきは、フーズフォーラス社の経営管理体制であって、マスコミが第一に主張すべきは、事業者のコンプライアンス遵守の意識向上と考えます。
③今回問題になったフーズ・フォーラス社の「焼肉酒家えびす」を、取り上げたテレビ番組(日本テレビ、人生が変わる1分間の深イイ話)は、公式サイトで、次のように記されています。
・たった1分の話であなたの人生が変わる!
・元気が出る「イイ話」、思わずうなる「深い話」そんな「深い話」を1分で次々と紹介します!
・さらに!スタジオでは人生経験豊かな「生き方のソムリエ」たちが話の解釈をめぐって大激論!
(出所) 日本テレビHP「人生が変わる1分間の深イイ話」 http://www.ntv.co.jp/fukaii/
放送したテレビ会社は、問題となった企業の広告宣伝の一環だったと言うかも知れませんが、上記の番組説明からすると、通常の放送より、厳しいチェックを行っていると視聴者が受けとめるものであり、その分、テレビ会社の責任は思いと考えます。
すなわち、今回問題になった事業者の経営管理体制が不適当だったとすれば、当該テレビ会社は、単に表面だけをなぞって放送した懸念があります。経営管理の充実には相応のコストがかかりますので、表面だけをなぞって安さを売りにした事業者を絶賛したとすれば、真面目に管理をしている事業者の営業展開を実質的に抑制したことになり、罪は深いと考えます。
(参考)人生が変わる1分間の深イイ話における「焼肉酒家えびす」の放送 http://www.youtube.com/watch?v=nnSbLoZ4Dgk
しかし、知りうる限り、件のテレビ会社は、この件についてコメントしていません。
マスコミの自浄能力はあるのか、報道は適正に行われているのか、懸念を感じます。